とあるわが家の王女さま!   作:華凜

15 / 30
第15話 魔王、ちっちゃくなる!

 

 ぴんぽーん、ぴんぴんぽーぴんぴんぽーん。

 

 

うーむ。

このメンドクサイ音は間違いなく奴だな。

 

「はーい」

 

わざとらしい「ひひーん」という鳴き声を聞き、すぐに相手が魔王と判明。

こんな朝早くから人の家を訪れるとは、彼も中々非常識なやつだ。

 

ガチャ。

 

「朝から何を騒いでおるのか」

 

玄関先に現れた魔王が、開口一番に発した言葉がそれだった。

相変わらず130センチほどしかない身長で僕の顔を不思議そうに見上げる。

 

「我が愛馬とゴミ捨てに参った帰り、おぬしの奇妙な叫び声を聞いてな」

「えっとね、姫ちゃんがまた事件を起こしちゃったんだよね……」

「事件?」

 

僕は魔王に事件の一部始終を話した。

朝起きたら姫ちゃんが僕のケータイを本棚の裏に投げ入れたことを、包み隠さず。

 

すると彼は僕の説明に何度か頷いた後、マントのポケットから小瓶を取り出し、

 

「ついにこれの出番が来たようだな」

「なにそれ」

 

小瓶の中に入っていたのは、ピンク色のカプセル。

一見、風邪薬とか鼻炎薬に見えないこともないが、小瓶の表面にドクロマークがある時点でお引き取り願いたい代物だ。

 

「ふははは。 聞いて驚くが良い。 これは我が闇の帝国が開発した薬、名付けて『小っちゃくなるゾウ君』だ!」

 

異世界の人間はネーミングセンスに欠けるらしい。

まあ、そんなつまらないことを指摘して魔王が怒っても困るので、あえてスルー。

 

「それ飲んだら小っちゃくなれるの?」

 

魔王は自信を以って頷く。

 

「うむ。 100分の1の大きさになることができる。 一粒で10分の効き目だが、飲み過ぎには注意だ」

「の、飲みすぎたらどうなるの!?」

「酔っぱらう」

「酒か!」

 

命に危険が及ぶのかと思いきや、単に酔っぱらうだけで済むらしい。

なんだよ、脅かしやがって。

 

「何はともあれ、おぬしにはこの薬が必要であろう」

「うん、まあ。 とにかく入って」

 

こうして、魔王が再上陸。

再び家の中でガッシャガッシャと鎧を引きずりながらリビングへ。

 

「姫ちゃん?」

 

リビングには彼女の姿はなかった。

まだ細くて長い物を探しているらしく、二階の方でガサゴソと音がしている。

 

「ところでさ、この薬ってもらっていいの?」

「うむ。 おぬしには一飯の恩がある。 今回ばかりは無料で授けよう」

 

やった!と喜ぶのも束の間。

 

「本当にこの薬で小さくなれる? 突然発作が起こったりしない?」

「効果と安全面では保証しよう。 なにせ我はこれを愛用しておるからな」

「愛用?」

「うむ。 自動販売機とやらの下に落ちている硬貨を集めたり、三丁目にある『超ゴクラク温泉』の女風呂を覗く際に使用しておる」

 

魔王のくせにやることがコスい。

 

普通の魔王なら、落ちている金を集めずとも領民から搾取し、女は奪い取ってハーレムを作っているイメージが……。

 

「ってことは、これがあれば僕も学校の女子更衣室を覗けるわけ?」

「うむ。 おぬしも一度使用してみるがよい」

「うおおお!! サンキュ、魔王!!」

「ふはは。 平和の為に作られた物を悪用するとは、おぬしも中々のワルよのう」

「いえいえ~、魔王さまほどでは」

 

「「ふははははははっ」」

 

 

――閑話休題――

 

 

 悪徳代官ごっこをやっていてもスマホは取れないので、思い切って一粒飲んでみることに。

 

すると、

 

ヒュルルルル……

 

わずか数秒で体がみるみる縮み、ついには僕が魔王を見上げるほどになった。

ちなみに僕の身長は約170センチだから、今は1.7センチというミニマムサイズだ。

 

「どうだ、感度は良好か?」

 

上から降ってくる巨人(まおう)の声がビリビリ響く。

一応返事はしたものの、何せ声も今までの100分の1。 魔王には聞こえないらしく、僕は両手で丸を作ってから、わずかな隙間に入った。

 

(うへえ、ホコリだらけだ)

 

魔王がライトで照らす先を突き進む。

フローリングの床には普段掃除しない場所とあってか、ホコリが山積。足元はゴミの海で、泥沼に入っている気分なんだよね。これが。

 

わずか1メートルほどの距離を2分かかって到着。

なんとかスマホの墜落現場に辿り着いたものの、到着してから気付いたことがある。

 

僕、非力マッスルだったんだっけ……。

 

よく考えていただきたい。

僕のスマホは何のアクセサリーも付いていないシンプルなものだが、筋肉量も100分の1なのをすっかり忘れていた。

 

そう、押しても引いてもビクともしないのである。

 

「我も助太刀致そうぞ」

 

と、見るに見かねた魔王がライトを床に置き、ミニマム化してやって来る。

「せーのっ」の掛け声で押し、やっとスマホが動き出す。

 

一旦通常の大きさに戻り、再度ミニマム化して押せば取り出せそうな勢いだ。

これで問題も解決か、と思いきや、

 

ドタドタドタっ、ダダダダ。

 

ん? 何の音だ?

 

「細くて長いモノをお持ちしましたわ―――って、こーすけ?」

 

いかん、姫ちゃんだ!!

事情を話すのをすっかり忘れてた!!

 

「こーすけ!?」

 

突っ張り棒を両手で抱えたまま、オロオロする姫ちゃん。

 

「僕はここだよ!!」

 

と、エールを送るも、王女さまがわずか5センチの隙間に気付くはずもなく、僕らの側からは彼女のスカートの中身が見えるだけ。

 

「時に康介よ」

 

魔王が、姫ちゃんのパンツを見ながら腕組みをして言う。

 

「はい、なんでしょう」

「おぬしは尻派か? あるいは胸派か? はたまたコアな腰のクビレ派か?」

「何でイキナリ会話を18禁にしようとしてるの!? 姫ちゃんに気付かれたマジで殺されるよ!?」

「我は尻だな」

「無視しないで!!」

 

鼻血をダラダラ垂らしながら魔王がご感想をお述べになる。

今はとにかく姫ちゃんに気付いてもらうことが最優先事項だが、あえて言っておこう。

 

 

胸派であると。

 

 

「姫ちゃん! ここだよ!! 気付いて!!」

「あら、何かしら」

 

ヤバい!!

姫ちゃんが本棚の横に置いた薬に気付いてしまった!!

 

「ラムネ……かしら?」

 

どうやったらカプセルがラムネに見えるんじゃい!!!

 

叫んでも聞こえそうにないので、アホ王女に我がテレパシーを送る。

 

「んもう! またわたくしを放置プレイにする気ですのね! 許せませんわ!」

 

これは没収ですわ、などと抜かして姫ちゃんは台所に消えてしまった。

そう、薬を持って。

 





アルファポリスさまでも、全く同じ小説で活動しています。
そちらでも応援頂ければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。