とあるわが家の王女さま!   作:華凜

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第16話 魔王、使い魔を出す!

 

 数分後、元の大きさに戻った僕はすぐに台所に急行した。

 

「姫ちゃん!?」

 

薬を誤って飲んでいないよね、と信じながらも、まさかの事態を危惧する。

風呂場、洗面所、個室、和室、全ての部屋を探しても見つけることはできず、皿に盛った朝食の横にカプセルが入った小瓶を確認した。

 

(薬が減ってる!)

 

魔王が持ってきた小瓶のカプセルは、ざっと50粒。

しかしその3分の1が瓶の中から消えており、蓋は開けっ放し。

明らかに中身を取り出した後だ。

 

「どうしよう魔王! 姫ちゃんが消えちゃった!!」

 

後ろを向いたが彼はいない。

 

あ、そうか。 僕より後に薬を飲んだからまだ効果が切れてない――――

 

―――ん?

 

足元でピィピィ鳴いている豆粒を発見。

危うく“プチッ”てやっちゃうとこだった。

 

(……たか? …が……だろう)

 

下手したら柿ピーのピーナッツより小さい誰かさんが、僕を見上げて何か言っている。

悪いが全く聞き取れない。

 

「そんなところにいたんだね、魔王」

(うむ。 やっとここまで辿りつい―――)

 

ポンッ、ヒュルルル……

 

魔王、原状復帰。

 

「危うくおぬしに踏み潰されるところであった。 足元をよく見て行動致せ」

「ごめんごめん。 魔王が小っちゃくなってたことをすっかり忘れて……」

 

……小っちゃくなった?

 

ってことは、この薬を飲んだかもしれない姫ちゃんを僕が踏みつぶした可能性が……

じ、冗談抜きでヤバい。

 

「大変だ魔王!! 姫ちゃんを踏んじゃったかも!!」

「その心配はない。 我はおぬしの後を付いて行ったが、あのバカ怪力王女はおらんだ」

「なんだ、よかったぁ~」

 

ホッと胸を撫で下ろす。

魔王も、姫ちゃんがいないところではすっかり罵倒口調である。

やはり返り討ちに遭わされたことを根に持っているらしい。

 

「事情は大体察した。 姫が台所で消えたのなら、踏みつぶさぬよう不用意に動かぬことだ」

「そうだよね。 でも姫ちゃん、結構飲んじゃったみたいだけど」

「なにっ!?」

 

魔王は薬がゴッソリ減った小瓶に飛びついた。

 

「なんということか!!」

「どうかしたの?」

「この薬は一度に3粒が限度だ。 それ以上飲めば、いずれ薬が体内に回って意識を失うぞ!!」

「ええ!?」

 

えらいこっちゃ!

ということは、こうしている間にも姫ちゃんは我が家のどこかで倒れている可能性がある。

どれだけ耳を澄ませても返事が聞こえないのにも納得できる。

 

またもや放置プレイにされたと思って拗ねて隠れている間に、薬のせいで気を失ったりでもしたんだろう。

 

「康介よ、これは一刻を争う事態ぞ。 30分以内に見つけ出さぬと手遅れになる場合がある」

「え!? マジでヤバい感じじゃん!! てか飲みすぎても酔っぱらうだけじゃないの!?」

「阿呆。 泥酔して意識を失うのだ」

「じゃあ最初からそう言ってくれる!?」

 

魔王と押し問答していても仕方がない。

タイムリミットはあと25分。時間が無くなる前に彼女を探し出さなければならない!

 

「行くよ、魔王!」

「待て」

 

小瓶のカプセルを飲もうとする僕を魔王が制止する。

 

「我らが小さくなったところで、姫を見つけられる確証はない。 だが、我に案がある」

「案?」

「さよう。 使い魔を使役し、姫を見つけ出させるというのはどうか」

「使い魔なんて持ってるの?」

「うむ」

 

魔王は再びマントのポケットに手を突っ込み、またもや小瓶を取り出して、

 

「これが我が使い魔だ」

「みぎゃあああああ!!!!!」

 

ヒントを与えよう。

8本の美脚を持つ猛毒生物とでも言っておこうか。

ちなみに、カプッと噛まれるだけで致命傷になる、南米のスパイダー様だ。

 

「ど、どどどど、どこでそんなゲテモノ見つけたの!?」

「昨日、こやつらが我が闇の宮殿を徘徊しておったでな。 瓶の中に閉じ込めてやったまでよ」

「複数のタランチュラが家の中にいるって問題だからね!?」

 

ああ、ビックリした。

というか、僕は猛毒生物が普通に住まう彼の家で家事を手伝っていたというのか……。

 

「チェンジ!!! 早く使い魔チェンジして!!!」

「むぅ、こやつなら上手くいくと思っていたのだがな」

「クモって肉食だよ? 姫ちゃん食べられちゃうからね?」

 

姫ちゃんを助けに行くつもりが、天敵を派遣してしまったのでは本末転倒。

ミイラ取りがミイラを喰って帰ってくる可能性が高い。

 

ふう、危ない危ない。

 

「ではこちらの使い魔はどうか」

 

トカゲの入った小瓶が登場。

 

「あのさ、魔王」

「うむ?」

「姫ちゃん、一瞬で食べられちゃうから。 あの怪力でも多分トカゲには勝てないと思うんだ」

「むぅ……」

 

議論の結果、トカゲ及びその他ゲテモノ系を含む爬虫類は却下となった。

そして男同士の腰を据えた論議を経て、

 

1、適度に小さいこと。

2、姫ちゃんを見つけても食べず、かつ彼女を連れて戻って来る見込みのある生物。

3、クモ・害虫・爬虫類以外。

4、身近であること。

 

以上の条件を満たす生物を探した結果、唯一それを満たす生物が身近にいた。

 

 

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