とあるわが家の王女さま!   作:華凜

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第17話 魔王、墜落する!

 

「10もおれば十分か?」

 

魔王が庭から数体の使い魔を連れて帰ってきた。

 

ちなみに、使い魔の正体は、アリ。

 

アリは自分の数十倍から数百倍の重さの物を持ち上げ、さらにはそこで捕食せずに一旦巣に持って帰るという素晴らしい本能を兼ね揃えている。

つまり姫ちゃんを引っ張り出してきてくれるかもしれないのだ。

 

家の中にアリを放出するというのはいささか気に喰わないが、この際はやむを得ない。

わずかな可能性に賭ける。

 

「康介、我らも探すぞ!」

「うん!」

 

共にカプセルを3つ取り出し、その場で服用。

 

 

ヒュルルルル……

 

 

(こ、これが我が家)

 

小さくなってから、改めて我が家の大きさを実感する。

昔から小さい家だなとは思っていたものの、いざミニマムサイズになってみると巨大に思える。

 

 僕らは姫ちゃんが消えた場所、つまりは薬が置かれていた場所で服用したわけだけど、場所が悪かったのか、着地したのはなんと流し台の上。

 

右手に見えるシンクの深さは、元が20センチくらいだから100分の1現在は約20メートル。

前方の流し台から床までの高さと言ったら、それはもう高層ビルの屋上から見下ろしている気分だ。

 

 

―――さて、どうやって下に降りようか……。

 

 

遥か遠くの地上を見下ろしながら身を凍らせる。

ふと横を見ると魔王も同じことを思っていたらしく、偶然視線が合った。

 

「すまぬ」

 

いきなり謝り出す魔王。

一体何について謝ってい―――

 

「わ、我は高所恐怖症なのだ」

「ええー!? 異世界いる時苦労しなかったの!? 魔王が住んでた闇の城とか」

「我が牙城は一階建てだった」

「ちっちゃ!!」

 

スーパーマ○オに出てくる某ボスキャラの城でさえ数階建てだ。

魔王が発言する一つ一つのスケールは大きいのに、実際はもっとチンマリしている現実が暴露された。

 

「とにかく急がないと! 僕はどうにかして降りるからね!」

「お、おい、見捨てるでない!! 仮にも我は闇の帝王ぞ!」

「“仮”なんでしょ?」

「やっぱり“真”で」

 

などと御託を並べている間にも貴重な時間は過ぎていく。

シンクの横は切り立った崖になっていて、谷を挟んで聳え立つ冷蔵庫までは僕から見て数メートルある。

 

と、その時、僕は買い物に行った際に放置していたレシートに気付いた。

 

「魔王!! これだよ!!」

「レシートがどうした」

「これを持って飛んだら、パラシュートみたいになるんじゃないかな」

「なるほど! その手があったか!」

 

ポンッと手を打ち、早速僕らは作業に取り掛かる。

二手に分かれ、それぞれのちょうど真ん中を持ち、できる限りの助走距離を確保する。

 

「いい、魔王? 僕が『せーのっ』て言うから、ちゃんと怖がらずに飛んでね」

「う、うむ」

 

やや心もとない返事だ。

 

とはいえ、ここは彼を信じるしかない。

 

「行くよ!! せーのっ」

 

ダッ!!

 

二人同時にダッシュして、グランドキャニオンさながらの高さを持つ標高から飛び降りる。

 

「やった!」

 

それぞれがレシートの両端に掴まり、パラシュートを開いた気分で空を舞う。

恐らく傍から見ると、小虫がレシートにしがみついて飛んでいるようにしか見えないのだろうが、100分の1の僕らからすると大きな一歩だ。

 

だがここで大きな問題が発生。

 

……体重比を忘れていた。

 

「ちょっ、コントロールが利かないんだけど!!?」

「そんなこと我に言われても困る!!」

「回転する!!」

 

僕の身長は1.7センチ現在に対し、魔王は1.3センチ。

体重比も、計算上は1:0.76の割合。つまりは僕の体重が100%とすると彼の体重は76%となる。

 

必然的に僕の側が重くなるため、パラシュート代わりのレシートは、僕の左方向へ傾き始めた。

 

「「いやあああああ!!!!」」

 

空中で激しい左回転を強めるレシ―――いやいや、パラシュート。

しかしながら地上まではまだまだ距離があり、手放すわけにはいかない。

 

「し、食器棚にぶつかるぅ!!!!」

 

クルクルクル、ベシッ!

 

「ぐひゃぁ」

 

 

――魔王、墜落。

 

 

 

「魔王ぉぉお!!!!」

 

 

彼は、志半ばにして顔面からの名誉な墜落をした。

 

 

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