とあるわが家の王女さま!   作:華凜

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3章の最終話です。


第21話 姫ちゃん、戻ってくる!

 

 「うおおおお!!!」

 

魔王がその命を懸けてフェラーリと激突しようとした、その瞬間、

 

ベチーンッ!!!!!

 

 

へ?

 

突然、魔王とフェラーリの頭上から新聞紙が降ってきたのだ。

 

横を見ると、アリのバリケードは何者かの巨大スリッパによって破壊されており、魔王と台所の帝王は新聞紙の下敷きに。

 

ふと上を見上げると、真っ先に僕の視界に飛び込んできたのは、水玉模様のパンツだった。

 

「んもう! この家にも“黒い悪魔”が潜んでいらしただなんて。 後でこーすけを叱らなくてはいけませんわね!」

 

姫ちゃん!?

 

なんと魔王とフェラーリを叩きのめしたのは、行方不明になっていたはずの姫ちゃんだった!

 

彼女なら「きゃあ! 虫よ!!」などと言って叫びそうなのに、迷うことなく新聞叩きとは、手慣れたものである。

 

姫ちゃん、強し。

 

まあ彼女が見つかったことは大変喜ばしいことだが、姫ちゃんは新聞紙の裏を見ようとはせず、そのままゴミ袋にポイ。

魔王がフェラーリと仲良く焼却処分場行の特急列車に乗せられた。

 

王女さまがキュッキュッと袋を縛っていると、『赤とんぼ』の歌が流れて来て、

 

「あぁ、お待ちになってぇ! 愛しのゴミ収集車様ぁ~」

 

などと言って、姫ちゃんはゴミを出しに行ってしまったのだ。

 

 

って、ヤバい!

早く魔王を助けないと!!

 

ぽん、ヒュルルルル……

 

姫ちゃんの後を追おうとした時、丁度30分経って体が元に戻った。

 

急いで玄関に駆け出し、魔王を一刻でも早く救出しようとするも―――

 

ガチャッ

 

「あ」

「え?」

 

ドアを開けた時、僕と姫ちゃんの目が合った。

ふと彼女の手元に視線を落とすも、ゴミ袋は無い。

 

「こ、こーすけ! またまたわたくしを放置プレイしましたわね!!」

「してないよ!! むしろ探してたんだよ!!」

 

姫ちゃんを探してフェラーリに追いかけられる羽目になったのである。

人が折角心配してやったんだから、礼の一つくらい言ってほしいくらいだ。

 

「ずっとどこにいたの!?」

「どこって、わたくしはずっとリビングにいましたわよ?」

「嘘だ! いなかったじゃん!」

「いましたわ! ピンク色のラムネを一つ食べたら体が小っちゃくなってしまい、ずっとテーブルの上でこーすけの助けを待っていたのですわ!!」

「テーブル!?」

 

そうか!

ウチのテーブルは新聞やら雑誌やらが散乱してて、姫ちゃんが小さくなっていたことも相まって、気付けなかったんだ!

 

「じゃああのピンク色のカプセルの残りは?」

「いつも頑張るわたくしへのご褒美に、と、冷蔵庫にしまってありますの」

 

その後、僕は姫ちゃんの経験した一部始終を聞き、自らの経験と照らし合わせてみた。

 

まとめてみると以下のようになる。

 

1、姫ちゃんは瓶の中の薬をラムネと勘違いし、中身をゴッソリ抜き取って冷蔵庫にインした。

 

2、彼女はそのまま瓶を台所に忘れてしまい、朝食を食べようとテーブルに来た時、ラムネを一粒食べ、小さくなった。

 

3、姫ちゃんがテーブルにいるとも知らず、僕らは薬が置かれていた場所、つまりは台所で服用したと早合点し、台所のどこかに彼女がいると信じ切ってしまっていた。

 

ちょうど姫ちゃんと僕らが服用した時間が、どうも入れ違いになったらしい。

 

なんだ、そういうことだったのか。

よかったよかった。

 

 

……ん?

 

なんか大切なことを忘れてるような。

 

「あ、魔王!!」

「きゃっ」

 

突然叫んでしまい、姫ちゃんはビクッと肩を震わせる。

でもそんなことお構いなしに彼女の肩を両手でつかみ、

 

「姫ちゃん!! さっきのゴミ袋どうしたの!?」

「ご、ゴミ袋なら、作業服を纏ったダンディーな御方が運ばれていきましたわ」

 

「…………。」

 

ごめんよ、魔王。

君のことは一生忘れないからね。

 

 

――☆――☆――

 

 

 

 後日、近所のホームセンターでゴ○ジェットスプレーが消えるという噂を耳にした。

 

なんでも、黒馬に跨った鎧のチビが『在庫のすべてをよこせ』と言って買い占めていくという話だ。

 

 

 

―――それからというもの、魔王はしばらく僕の家に遊びに来なかった。

 

 

 

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