とあるわが家の王女さま!   作:華凜

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第24話 姫ちゃん、お着替えする!

 

 家から歩いて10分ほどのところに比較的大きな私鉄の駅がある。

その駅から特急列車に2時間ほど乗り、各駅停車に乗り継いでしばらく。

 

「こーすけっ」

「げふぁ!!」

 

電車でうとうとしていると、窓の外をじぃっと見つめる姫ちゃんからビンタが飛んできた。

しかも強烈な一発が。

 

「いきなり何すんのさ!!」

「ご覧になって! 海よ!」

「海?」

 

さっきまでの山ばかりの景色が一変し、長いトンネルを抜けるとそこは一面の大海原だった。

海岸線に沿うようにレールが敷かれていて、内側にカーブを描いているので窓から先頭車両が見える。

 

今日は魔王、フィアさん、姫ちゃんと一緒に親睦旅行に来ている。

朝から泳いだりして一日を過ごし、夜には家に帰る日帰り旅行。

 

――なのだが。

 

「ポポ君? 水着のお姉さん撮るためのカメラとか持ってきてへんよな?」

「う、うむ……」

「ホンマ? 嘘ついてたら針1万本飲ますで」

「待て! 一桁多い!!」

 

魔王はすでにフィアさんから銃を突き付けられており、日帰りのはずが日帰りできるか分からぬ状況。

彼の受け応えから察するに、どうやら彼の命は午前中までのようだ。

 

ちなみにフィアさんが言う『ポポ君』とは魔王のことで、アレクサンポポス大王の『ポポ』から来ているらしい。

 

「こーすけ! 早く泳ぎたいわ!」

「はいはい、泳ぐのは海の家に着いてから――」

 

泳ぎたくてウズウズする姫ちゃんのお胸に視線を落とす。

 

今日の王女さまは大人っぽく黒のチュニックに赤のショートパンツ。

一見普通そうに見えるが、いくつか問題点を指摘しておきたい。

 

「姫ちゃん、水着が透け透けだけど」

 

泳ぐ前からブラの代わりに水着を着用し、やる気満々な姫ちゃん。

男としてビキニを着ていただけるのは大変嬉しいことだが、柄が透け透け。

サービス精神満載でよろしいが周りの視線(特に男)が痛い。

 

姫ちゃんは少し恥ずかしそうに、腕で胸を押さえながら言う。

 

「見ないでくださる? 変態さん」

「見せないでくれる? おバカさん」

「あーっ! またわたくしのことを『バカ』って言った!」

「今日が初めてだよ!!」

 

ったく。

あえて日頃からバカって言わないであげてたんだよ!

 

「それと姫ちゃん。 ちゃんと前を向いて座ろうね」

 

思いっきりパンチラしてるから。

 

窓の方を向いて座るため、どうしてもお尻の方からピンク色のアレが見え隠れ。

上を向けばビキニ、下を向けば下着という男性受けがヤバそうな姫ちゃん。

 

「いいじゃない。 別に減るものじゃないでしょ」

「電車の中ではちゃんと前を向いて座るものなの! お行儀よくしないと、後でアイス買ってあげないからね!」

「ぷぅーっ!」

 

ぷくっと頬を膨らましながら渋々前を向く王女さま。

 

 

こうしている間に電車は小さな駅に着いた。

 

無人の駅で看板はボロボロ。

辛うじて木造の駅舎がぽつんと建っているだけで、これといって目を引くものもない田舎駅である。

しかし一旦海側に出ると広いビーチには海水浴を目当てに集まる客でにぎわっていた。

 

「早く行きましょう、こーすけ!」

「はいはい。 ちゃんと着替えてからだよ」

 

海に向かって駆け出す王女さま。

しかしダイレクトに大海原にダッシュするので、慌てて海の家に強制連行。

 

ちゃんとお着替えさせてからであります。

 

「じゃ、また後でね」

 

海の家で姫ちゃんとフィアさんに別れを告げ、魔王と僕は男子更衣室に行く。

 

「姫ちゃん大丈夫かな」

「何がだ?」

「いや、あの王女さまって一人で着替えできないからさ。 上はともかく、下半身露出しながら『パンツ穿かせなさい』とか言って男子更衣室に来そうだし」

「こーすけがいるから大丈夫ですわよ?」

「だよねー! はははは」

 

 

―――え?

 

 

「なんで姫ちゃんが男子更衣室(こっち)にいるわけ!?」

 

ちょうど更衣室で着替えている男性の方々はもう大慌て。

幼女ならともかく、明らかに10代後半の金髪美女がやってきたから、どえらいことになっている。

 

「わたくしの服を脱がせるのは、こーすけのお役目でしてよ?」

「姫ちゃんは女子更衣室! 何でフィアさんは向こうに行ったのに姫ちゃんはこっちなのさ!!」

「ぐすっ……。 いつもならわたくしの裸を見て喜んでいらしたのに……」

「頼む姫ちゃん!! 公衆の面前でそんな事実を赤裸々に語らないで!」

 

僕を遠くからそっと見守るオジサン達の視線が痛いから。

 

「とにかく―――」

「まあ、待て康介」

 

姫ちゃんを女子更衣室に連行しようとすると、魔王が僕の腕をガシッと掴んだ。

 

「康介よ、姫がそう申しておるのだ。 姫の下僕ならその願いを叶えてやるものぞ」

「僕は下僕じゃないからね!? つか何でカメラを用意して―――って、盗撮する気満々じゃねえか!!」

「本人公認なら盗撮とは言わぬ! 『盗』ではなく、むしろ『公』ッ!!。 公撮と言うべきであろう!!」

 

『ポポ君~? ちょっと外に出てきてくれる~?』

 

壁一枚を隔てて女子更衣室からおぞましい空気が。

 

おっと、これはヤバいな。

核シェルターにでも入らないと、ここら一帯が吹き飛ぶ恐れがある。

避難避難。

 

「まだ我は着替え中ぞ! 辛抱致せ」

『でもな~、ポポ君に伝えたいことがあるねん』

 

壁の向こうから、フィアさんの怨嗟に満ち溢れた声が流れてくる。

 

僕なら何としてでも籠城戦に持ち込むが、魔王はかなり鈍感らしく、「全く、あの小娘は」などと抜かして外に出て行こうとする。

 

「あ、今は出て行かない方が……」

「む?」

 

バキッ、ゴキッ、ドドドッ、グシャア!!

 

『何あたし以外の女の裸見ようとしてんねん!!』

「ぐぶっ、いや、これは立派な身体検査――☆○×◆+♪ッ!!」

 

只今、大変残虐な刑が行われております。

終了するまでの間、のどかな牧場の風景をお楽しみください。

 

 

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