とあるわが家の王女さま!   作:華凜

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一度でいいからこんなお願いされてみたい。




第3話 姫ちゃん、お風呂に入る! ☆挿絵アリ☆

 普段僕が風呂に入るのはおよそ午後7時半。

なので大体この時間にはすでに湯船に湯が張っていて、風呂は現在保温状態だ。

 

姫ちゃんのせいで悲惨な夕食となった後片付けをしている間、彼女はテレビの前に寝転がっていた。

 

当初は「人が壁の中で動いてるわ!」などと抜かしていた王女さまだったけど、だんだん要領を得てくると何も言わず画面に釘付けとなった。

異世界から来た割に意外と順応が早い。

 

そんなことを思いながら洗った皿を食器棚に戻している時、突然姫ちゃんが台所にやってきた。

 

「お風呂はまだかしら」

「あー、もういつでも入れるけど」

 

と言っても風呂の場所は知らないよね。

 

「こっち」と姫ちゃんを引き連れて風呂場に案内する。

どうせ「狭い」だとか何とか言われるだろうと覚悟していたけど、意外なことに不平の文句は出なかった。

 

「じゃあ僕はこれで」

あとはごゆっくり、と風呂場のドアを閉めようとする。

でも、

 

「どこに行きますの?」

姫ちゃんがドアノブを内側から掴んだ。

 

「どこって、リビング」

「下僕ならわたくしの服を脱がしなさいよ」

 

 

はい?

 

 

「……ごめんね、僕ちょっと耳が悪くて聞こえなかったんだ」

「じゃあ耳をほじくってお聞きなさい」

「そうする」

 

とりあえず小指で両耳をかっぽじってみる。

最近欲求不満なのかな。

だから勝手に脳内変換して変な言葉が聞こえてしまったんだろう。

深呼吸して用意はオーケー。さあドンと来い!

 

「服を脱がせなさい」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

鼻血が止まりません。

 

「ま、待つんだ姫ちゃん! 正気か!」

「わたくしはいつでも正気ですわ。 下僕ならわたくしの服を脱がせてから外でバスタオルを持って待っているものですのよ?」

 

正直、異世界の下僕として生まれたかった。

 

「ここは異世界じゃないから! 着ることができるなら服くらい自分で脱げるでしょ!」

「面倒ですもの。 さ、早くして頂戴な」

「うっ……」

さあ、と言って万歳のポーズを取る。

言っても言うことを聞きそうにない。

 

仕方ない、と僕も彼女のドレスに指をかけると同時に、辛うじて残されて理性を駆使して股間のスカイツリーを収めようと試みる。

もしこれが僕以外の男だったらきっと今頃襲われていたに違いない。

 

腰細ぇ……。

肉付き良すぎだろこれ。

 

白い素肌を見て思わず息を呑む。

女性らしい丸みを帯びた体つきとくびれのある腰。プンプン漂う女性ホルモンが僕の理性を崩壊させようとする。

ダメだダメだ!紳士(ジェントルマン)になるんだ僕よ!!

 

「何ジロジロみていらっしゃるのかしら」

「うぐっ」

バレた。

 

ちょっとくらいいいかな、と調子に乗って紫色のブラに視線を釘付けにしてしまっていた。これはビンタものか、と思って身構えたが、姫ちゃんは平然とした顔をして何の躊躇いも無く告げる。

 

「お母様が言っておられたのですけど、男というのは胸に興味がおありなのでしょう?」

チラッ。

ブバッ。

おっと、鼻血が1リットルを超えたぞ。そろそろ病院に行って輸血用の血を貰って来るか。

 

「ひ、姫ちゃん……」

鼻と股間を押さえながら、今にも消えそうな声で彼女を呼ぶ。

 

「頼むから“ソレ”を隠して」

「面白いわ」

「僕の反応で面白がるな! 誘うような行動は慎んで!」

「誘う?」

 

ポカンとした顔をして首を傾げる。

どうやら意味を理解していないらしい。このお年頃になって来ると女子でも分かるはずなんだが。

 

「わたくしが何か誘いました?」

「……男と女の行為に」

 

ますます分から無さそうな顔をする。

 

「わたくし、あなたが初めてよ?」

「はい?」

「男はあなたがはじめてなの」

「へ? どゆこと?」

「今までお城から出たことが無かったんですもの。 男は城兵かお父様だけでしたから、男と女の行為と言われても分かりませんわ」

 

なるほど。

つまりはトンデモナイ箱入り娘だったということか。ということは、彼女は自分が色気を誘っているという事実に気づいていないのか。

これだから世間知らずは。

 

「と、とにかくこれで終わりだからね!!」

おさらばしようとするも服の袖を掴まれた。

 

「ちゃんと後で背中を流して頂戴」

「お願いします。 それだけはもう勘弁してください」

 

土下座しました。

もう理性を抑えられそうにありません。これ以上誘惑されたら枷が外れちゃうよ?

 

「仕方ないですわね。 ……トランクに下着類が入っているから、適当に見繕って持ってきて」

「へい」

 

それくらいならお安い御用だ。

 

姫ちゃんは「バスタオルも持って待ってなさい」と命令してから風呂に入った。

 

中からシャワーの音が聞こえてくると僕はリビングに移動し、言われた通り彼女のトランクを開ける。

金具を外して開いてみると、中身は下着やらドレスやらの衣類ばかり。

どれも高級感漂うものばかりで、特に純白のドレスの手触りといったらもう口にすることはできない。

モフモフし、かつそれでいて硬い。うーむ、この世にかようなる感触があるとは。

 

感触に現(うつつ)を抜かしている場合ではない。

早くしなければまた「遅い! この下僕がッ」とかお説教を喰らいかねないぞ。

とりあえず姫ちゃんのパンツやらブラやらをケース内で捜索する。

なにぶんドレスの体積が大きすぎて下着類が下に敷かれているため、取り出すのは実に困難を極めた。

 

 やっとのことで黒いパンツと赤いブラを救出し、今度は肌着を捜索する。

が、

 

「ドレス以外見当たらないだと!?」

 

大変だ。

辛うじて花柄のガーターベルトとニーソらしきものはいくつか見つかったが、シャツとかその類が見当たらない!!

あの女、まさか下着類の上に直にドレス着る気だったの!?

夏で薄着にしたくなる気持ちは察するがそれは駄目だろうよ!

うむむ、ドレスを着たこともないから甲乙つけがたいが、この内容(トランク)は相当ヤバい。

 

完全に残りは現地調達する気でいやがる!!

 

「何でこんな時にジュエリーとか香水が出てくるんだ!」

ドレスに挟まれていたのはネックレスやらダイヤらしき指輪の数々に加え、20を超える本数の香水やら口紅。

 

こんなのを入れる暇があったら服を入れんかい!

 

やや自暴自棄になってトランクをひっくり返した時、カシャンという金属音が鳴った。

それは金属音にして硬貨同士が擦れ合う音のような。

 

「カシャン?」

トランクケースの奥に手を伸ばす。

すると巾着らしき布が手に当たった。

 

「うわぁ……」

出てきたのは予想通り大量の金貨。

これだけでトランクの重量の半分あるといわんばかりの量が黄色い巾着に押し込まれている。

 

試しに一枚取ってみると、それは表に10000ルピスと彫られた金貨で、裏にはトランクの家紋と同じ模様が彫られているではないか。

明らかにこの世で流通していない硬貨であることは間違いないものの、どうも姫ちゃんは本当に異世界の王女だったらしい。

 

とはいっても人様のものなので、一枚くらいバレないよね、などと言って盗むような真似はしない。

下着とバスタオルを用意し、寝間着用にと善意で僕のTシャツとズボンを風呂場にセット。

 

あとは彼女が出てくるのを待つだけだ。

 

 

バスタオルを構えて待っていると、全裸の姫ちゃんが何の恥じらいも無く出てきた。

 

……ただし湯を出しっぱなしで。

 

「ちょ、姫ちゃん! お湯!」

なるべく白い肌を視界にいれないよう、極力横を向きながらお湯の出しっぱなしに気付かせる。

 

しかし彼女は真顔で首を傾げるだけ。いくら僕が「お湯!」と連呼しても同じ数だけ「お湯?」と疑問形で返されるエンドレスな状態。

 

ったく世話の焼ける王女さまだよ。

 

王女さまの代わりにお湯を止め、突き放すようにバスタオルを手渡す。

「はい」

 

でも何の反応も無い。

チラッと姫ちゃんの方を向くと、彼女は受け取る動作も恥ずかしがる動作も見せず、ただ万歳して待っているではないか。

 

「なに……してるの?」

「それはこっちの台詞だわ。 なんで体を拭いてくれないのかしら」

「え、そこまで僕なの!?」

「当たり前ですわ。 ちゃんと髪も拭いて頂戴」

「髪は構いませんけど、お胸から下は勘弁してくれませんかね」

理性が崩壊してしまいますから。

 

「じゃあ下はわたくしが特別に。 特に髪は女の命なんですから、ちゃんと乾かしてくださいな」

「へい」

 

なんかおかしいぞ、この受け応え。

まるで僕が使用人と化しているじゃないか。

 

などと思いながら口にはせず、文句を噛み殺しながら彼女の長い髪を毛先までキッチリ拭いていく。

姫ちゃんは髪が長いせいで毛先がお尻の近くまであったから視線を逸らすのに苦労した。

 

胸から下は彼女のセルフとしたので放置だが、背中から見ていて思ったことがある。

 

 

「姫ちゃんってさ、胸小さいんだね」

 

 

それはほぼ無意識的に出た言葉だと解釈していただきたい。

金髪美女で王女となると巨乳が定番だが、彼女はAカップと言えずBカップと言えない、応援したくなる発展途上のお胸。

どうやらさっきのブラは“寄せて上げる”ものだったらしい。

 

「…………ッ」

「姫ちゃん?」

 

おや、全裸を見られても平然としている彼女がプルプルと震えている。

しかも今頃になって胸を両手で隠しながら。

 

「ばかぁ!!」

「ぶほぁッ」

力士顔負けの強烈ビンタ炸裂中。

 

「ご、ごめん! 悪気はなかぶはぁ! ちょ、許しぎゃぁあああ!!!」

「わたくしが最も気にしていることをよくもぉ!!!」

「ええ!? がふッ! む、胸ならまだ努力すれば……」

 

今後に期待したらどうか、と提案するつもりだったが、彼女は泣きながら元も子もないことを口にした。

 

「14の時から毎日牛乳飲んでいましたのに、ずっとこのままですわ!」

 

 

……すみません、手に負えません。

 

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