「おおクリスティーヌ!クリスティーヌ!
君こそ私の求めた彼女に他なゲボラッ!?」
「やかましい、とっとと消えろ。」
決まったあ〜っ!
魔王様怒りの右ストレートがなんか突然現れた仮面男の顔面に突き刺さり、光の粒子になって消えていく。あいつサーヴァントだったのか…
「ふーん、私は虫の居所が悪いんだ。生皮剥いで食わせるぞばーか。」
台詞がいちいち猟奇的なのは最早常套句なので気にしないで頂きたい、挨拶みたいなもんよ(感覚麻痺)。
さて、狂える凄女マルタの最期の言葉に従ってやって来ましたリヨンの街。さっきのクリスティーヌクリスティーヌ煩い仮面野郎をさくっとボコして、手分けして悪ヌの連れる〝化物〟に対抗する手段を探さないと…
■■■■■■■■ッ!!
その時、アヴェンジャーが建物の一角で吠えた。どうやら生存者を見つけたようだ。
善ヌとマシュちゃんが探索に入り、中から見つけ出されたのは、大きな剣を担いだ瀕死の男が1人。かなりの重傷だった。
彼を連れてリヨンを出ようとしたその時、空を覆い尽くすような轟音が街を震わせる。
いや、鳴き声か。まともな生物の出せる音量じゃないが…
空を見あげれば巨大な黒い影、今まで襲ってきたワイバーンとは骨格から違う、某狩りゲーに出てきそうな真の竜種、巨大なドラゴンが俺たちの前に舞い降りた。
「こいつは…まさか…!?」
瀕死のお兄さん、血を吐きながらも目の前の竜を睨みつける。ドラゴンの方もまた、一瞬だけお兄さんに怯えていたが、直ぐに彼を睨み返した。
「苦労して見つけたのが死にかけのサーヴァント一匹とは、苦労するわね。私。」
「竜の…魔女…!!」
『嘘…あの魔女が連れてるのは幻想種?聖杯であんな物まで召喚したっていうの!?』
所長が通信越しに驚いてる。
巨大なドラゴンの背に乗るのは、案の定竜の魔女ジャンヌ・ダルクこと悪ヌさん。魔王様の顔見るなり嫌そうにした。
「うっ…やっぱいるわよね…クソっ!
ファヴニール、奴ら諸共焼き尽くしなさい!」
「やはりお前だったのか、ファヴニールッ!!」
お兄さんが血を吐く勢いで台詞を吐き出した。何?知り合い?
ガバッと邪龍の口が開かれ、そこから火炎放射器の様に炎が迸った。俗に言う
あっ、やばいかもこれ
「!?…ちっ!」
慌ててマシュちゃんと善ヌさんが宝具で守ろうとするが間に合わない、すると魔王様がその黒く染まった右手を前に出し。
『Xバリアー×5』
そう呟いたのもつかの間、俺たちの目の前に現れた大きな透明の壁が5枚重なって、ファフニールのブレスとぶち当たった。
絶え間なく襲い掛かる灼熱のブレスに魔王様のバリアーが一枚、また一枚と砕けて割れていくのが見える。やっとブレスが吐き終わった頃にはバリアーは残り二枚まで削れていた。
「ま、魔王さん…ありがとうございます。」
「勘違いするな、お前等の不手際で下僕が傷付けられるのが嫌なだけだ。
それでも英雄か、聖処女様。」
「くっ…不甲斐ないばかりです…」
あんまりいじめてあげなさんな魔王さんや。ありがとね、助けてくれて。
「ふーん、一生恩に着ろ。」
ていうか何気に全滅しかけたよね、危ねー…
「なっ…邪龍のブレスも防ぎ切るの!?
アイツの方がよっぽど化け物じゃない!」
(下僕、あの竜は嫌な感じがする。
奴は幾らか怪獣寄りの化物だ、私の無敵結界も抜かれる可能性がある。
全盛期の私ならこんな奴2秒で消し炭だが、5%しか力の使えない今となっては、このまま戦うのは少々分が悪いぞ。)
俺にだけ聞こえる声でそう言った魔王様の腕は少し焦げてた。元々黒いからあんまり分かんないが珍しい、魔王様が弱音を吐くとは。それだけ向こうが規格外の化物って事か。
幸い向こうの大将はブレスを防ぎ切った魔王様に動揺してるし、何とかリヨンを脱出したい所。
「槍一さん、ここは…」
藤丸君も同じ事を考えていたようだ。そういえば、あの死にかけのお兄さんはあの竜を「ファヴニール」と呼び、随分と見知っていたみたいだし、何か情報を聞けるかもしれない。
「奴の名は邪龍ファヴニール、嘗て俺が滅ぼした厄災の竜の名だ。」
『ファヴニールを倒した英雄…貴方、まさか竜殺しの大英雄ジークフリート!?』
所長が驚き告げるその名前は俺もよくゲームとかで見かけた事がある。超有名人だ。
「大英雄などではないよ、今は死にかけのただのサーヴァントだ…ごほっ!?」
ああもう無理して喋るから血吐いちゃったよ
「すまない…約立たずですまない…」
『藤丸、有栖宮。どうにか彼を連れてリヨンを脱出しなさい!万全の状態のジークフリートなら、ファヴニールに対抗出来る筈よ!』
所長曰く、サーヴァントは元になったお伽噺や史実の影響を強く受ける。ジークフリートもまた、物語の中で邪龍ファヴニールを殺した事から、その影響を強く受けるそうだ。
悪役は正義の味方に倒される運命であるように、ファヴニールという
「逃がすか!バーサーカー、バーサーク・セイバー、追いなさい!
死にかけの竜殺しと…あの水色パジャマは確実に消すのよ!絶対だからね!」
ワーオ竜の魔女様私怨激しーい大人気ないぞー
「も…もう足が…」
「情けないぞ藤丸君!といってもサーヴァントと生身の人間じゃいくら何でも無理があるよね…」
「そう言ってる槍一さんはなんでバック走のまま息一つ乱れてないんですか…ゼェゼェ…」
「これくらい体力ないと魔王様の相手できんからねー!」
「魔王さんの…相手…あわわわ…」
へいそこのデミサーヴァント、察して俯かない!やっぱり君むっつりスケベだな!?
「ちっ、違いますぅ〜!!」
引き際に瀕死のジークフリートが力を振り絞って放った一撃により、竜の魔女を乗せたファフニールは追ってこなくなったんだけど、代わりに敵方のサーヴァントが2騎こちらを追いかけてきている。
1人は全身黒鎧の仮面ライダーみたいな騎士、もう1人は…どうやらマリーさんの知り合いらしい。
凄い鬱陶しそうにモーツァルトが口を開いた。
「マジかよ最悪だ。
奴の名はシャルル。シャルル・アンリ・サンソン。
フランス革命時、マリアの処刑を執行した処刑人さ。」
「貴方のお顔は忘れたことが無いわ、気だるい職人さん。」
サーヴァントは史実に大きく影響を受ける、と所長がさっき言っていた。殺される側と殺す側がハッキリしている史実なら、尚更マリーさんがそのサンソンとかいうサーヴァントに殺されてしまう可能性が高い。
マリーさんの首が知らない間に落ちてましたとかそんなスプラッタな光景見たくないわ。
「お久しぶりです、白いうなじの君。
マリー・アントワネット。こうして会えるなんて夢にも思わなかった。
余計なのもくっついているようだが、まあそんな事はどうでもいい。また君に出会えるなんてね、やはり僕と貴女は特別な縁で結ばれているようだ。」
おふたりはそういう関係?史実に残らない裏事情ってやつ?
……モーツァルトが凄い勢いで否定した、どうやら違うみたい。というかサンソンとモーツァルトはお互い火花を散らしてる、相当いがみ合ってるようだ。
イケメンに狙われて大変ですねマリーさん
「うふふ、困っちゃう♪」
一方藤丸君前に現れたのは黒い全身鎧のサーヴァント、身体から黒い煙を放ってて、ステータスとかがよく分からない、奴の能力かな。
「マスター、下がってください…彼は私が。」
霊体化を解いて現れたのはセイバーだった。何やら神妙な面持ちでバーサーカーを見てる、そのバーサーカー、セイバーが現れた途端叫び出して問答無用で襲いかかってきた。
Arrrrrrrrrrrr!!
右手に持った重そうな剣を軽々と振り回し、音を超える速度でセイバーと剣戟を繰り広げる。その技量、とても狂化が付与されてるとは思えない。
「ソウイチ!こちらは私とマスターが引き受けた、貴方達はそちらのサーヴァントを頼みます!」
「だそうです槍一さん、こっちは任せて!」
おっけおっけ、じゃあ俺たちはこっちの…えーと…名前なんだったっけ…
「腐れ首狩りマニア(ボソッ)」
バーサーク・腐れ首狩りマニア?を食い止めようか。
「おいモーツァルト、変な渾名を僕に付けるな。そこの君も乗っかるんじゃない!」
「何か一つに拘るのは素晴らしい事だと思うけれど?」
「君は相変わらずだな…
だがその首、もう一度刎ねさせてもらうよ。」
バーサーク・セイバーが構える。相手は狂った処刑人、人殺しに特価したサーヴァント、更に史実補正でマリーさんがウィークポイントになるだろう、苦戦は必至だけど…
人じゃないあいつならなんとかなりそう。
速攻で決めよう、アヴェンジャー
■■■■■■■■■■■■■ッッ!!
「!?なんだコイツは!くっ…!?」
草陰から飛び出したアヴェンジャーの鎌刀がサンソンの首を狙う、かろうじて防ぐ事に成功したが大きく飛ばされ後ろへ下がった。
「ほぅら僕、初めての遊び相手だ。
踊って踊って狩り殺せ、疾走って疾走って食い尽くせ。その憎悪のままに、首刎ね処刑人に首を落とされる恐怖をくれてやれ。
宝具を解放しろ、我が僕。」
魔王様がそんなことを背中で呟いて、魔力が身体から抜けていくのを感じた。魔王様を通してアヴェンジャーへ魔力が流れていってるんだろう。
■■■■……■■■■■■■■■■■■■ッッッッ!!
一際大きくアヴェンジャーが吼えると一瞬だけ風が吹き荒れ、しん…と俺達の周りが静まり返った。
風は止み、音は消え、まるで時の止まった世界、それはまるでこれから行う
首なしの両腕がちぎれ飛ぶ、飛んだ腕はそのまま歪に枝分かれして、まるで幾重もの鎌のように再構成されていく。巨狼は取り落とした鎌刀を一本咥え、眼前の獲物を見据えた。その瞬間、首なしの両腕が高速でサンソンへと襲い掛かる。
歪な両腕は抵抗するサンソンをあっという間に絡めとり、彼はもう腕一本動かせない状態まで陥ってしまった。
「こ…これは…まさかっ!?」
驚愕するサンソン、ああなるほど。
彼は首なしの両腕に絡め取られてもう指一本動かせない、たった一部分、首から上を除いては。
それはまるで断頭台に掛けられた罪人のようだった。
「これは奴等の復讐心の結晶、『確実に首を狩る』事を目的とした絶殺宝具。
あの男、処刑人なんだろ?いつも殺る側だったから、殺られる側の景色は見た事ないだろうになあ。くっくっく…」
ニヤニヤ魔王様が笑ってる、本当に意地悪な魔王様だ。処刑人を断頭台に立たせるなんて。
鎌刀を咥えたまま疾駆するアヴェンジャー。狙いは勿論、サンソンの首だ。最早一切の抵抗を許されない彼は眼前に迫る死をただ受け入れるしかなかった。
『
アヴェンジャーの遠吠えと共に、ぽーん、とボールみたいにサンソンの首が飛び、その辺に転がった。それから、光の粒子になって身体と切り離された頭が消えていく。死体が残らない英霊だから良かったね。
魔王様、アヴェンジャーの働きに御満悦である。
これでこっちの追っ手はおしまいっと
「…さようならサンソン。唐突な出会いに唐突な別れだったけど、2度目があるなら3度目もある筈よね。
今度は味方同士でお会いしたいわ。」
「僕はもう二度と奴に会うのは御免こうむるけどね。少しは刎ねられる側の気持ちが分かったかってんだ。」
こんな時でもマリーさんは優しい、そういう人だもんな。善ヌさんと方針は違うけど向いてるベクトルは同じというか…なんというか…
文句垂れるモーツァルトだが、少し残念そうにしているのを見逃さなかったよ俺は。ツンデレ音楽家め。
「僕にどんどん変な属性乗っけるの止めてもらえるかな!?」
『有栖宮、無事!?…て、もう終わってるじゃない。
目を離した隙にジャンヌ・ダルクがワイバーンの群れにに襲われてる集団を発見したみたいよ、彼女を追いかけて援護してあげなさい!
バーサーカーは引き続き藤丸のセイバーが相手してくれてるわ。』
善ヌさん?これ撤退戦だって言いましたよね?お人好しもここまで来るといっそ清々しいよ?
それに襲われてる人達は竜の魔女知ってるんだろうか、見た目がそっくりなんだから…嫌な予感がするよ。
案の定、善ヌさんは襲われてる人達に竜の魔女と間違えられて逆に攻撃された。そんでワイバーンに対抗すると「どっちもくたばれ」だってよ。命救われといてこの言いよう、連中口だけは達者な只の案山子ですな。
「私なら瞬きする間に(指パチンッ)皆殺しにできる。」
魔王様ならほんとに出来るだろうけどやらないでね?あと当突に耳舐めるの止めて、そういうのは夜になってからね。
向こうにも向こうの事情があるのだ、主観だけで判断してはいけない。だがこっちにはこっちの事情があるからね、取り敢えず善ヌさんを援護援護。
バサランテが矢を射掛け、アヴェンジャーが渋々ワイバーンを切り落としていく。
襲っていたワイバーン達の首魁は、さっき見たバーサーク・アサシン、血の吸血婦人カーミラだった。
相変わらず危ない格好して変なマスクだ。危ない女め。
「背中にパジャマの女担いでる貴方に言われたくはないわね。」
ははは、実はパジャマじゃない。全裸なのだよウチの魔王様は!そう言って一瞬だけ幻術を省エネモードまで落としてあげた。
二本の光に大事な所を隠された一般向け全裸魔王が顕になった。
「貴女の方が充分危ない奴じゃない!」
「裸で何が悪いッ!!」
「流石の私でも公衆の面前で裸はダメだと思うけど!?」
ギャーギャー言い争う全裸魔王とマスクボンテージ婦人。
だんだんオルレアンのモラルがハザードしてきたぞ、これも人理焼却の影響か…おのれレフ教授!一刻も早く特異点を修復して皆の羞恥心を取り戻さなければ…
「フランスを変態の巣窟みたいに言うのは止めて下さい!」
結局カーミラは魔王様が居るので分が悪いと判断したのか退却していった。
途中、フランス正規軍と鉢合わせそうになったけど、善ヌさんわざと避けて違う道を迂回した。理由聞いたら知り合いに会うのが気まずいんだって。
救国の聖女も人間関係には苦労してるのね。
その後、無事藤丸君と合流、バーサーカーは撃退したらしい。セイバーさんの知り合いだったみたいだよ。なんか凄いセイバーさん凹んでるんだけど…何かあったの?
「英霊だって過去を悔やむ時くらいある、今は彼女をそっとしておいてやってくれ。」
台所のアーチャーに諭されたのでこれ以上追求はすまい、英雄にも色々あるのだ。
因みにランサー兄貴にも?
「ん?俺ァ…そうだな、師匠との修行の日々とか、割とトラウマだったりする。
いやあ分単位で命の危機を感じられる場所だったぜ、影の国。」
なにそれケルト怖い、聞き齧ったウワサじゃチーズぶつけられて人が死ぬ世界だもんな…魔境過ぎるだろ。
平和な現代っ子に生まれて良かった…
藤丸君とマシュちゃんがセイバーさんのメンタルケアを終えて、なんとか彼女が持ち直したので傷付いたジークフリートの傷を診ることになった。が、どうやら只の傷ではなく、御大層な呪いが掛かっているようだ。善ヌさん曰く自分ともう1人『聖人』のサーヴァントが解呪に必要とのこと。
そのサーヴァントを探しにここから離れた2箇所の街へ行く必要があるので、所長の提案で二手に別れて聖人のサーヴァントを探す事になった。くじ引きの結果藤丸君はジークフリートとモーツァルトを連れて、俺は善ヌさんとマリーさんを連れて行く事になった。夜が明けたら出発だ。
俺のクジ運の悪さに絶望した魔王様は不貞腐れて影に潜っていった
第一再臨の水着ネロちゃまをT〇NGA水着って言った奴、後で体育館裏な。