トリック・オア・トリート!お菓子くれなきゃ雷落とすぞ♪
「トリック・オア・トリート!」
10月31日、月明かりが強い夜。私の部屋の前でミイラの代表であるマミーの格好をした私の弟雄馬が、両手を上げて笑顔でハロウィンのお決まりのセリフを言う。
「ふふ、アメちゃんどうぞ」
「やったー!」
飴を貰って喜ぶ雄馬を見ながら私は笑顔になる。今日はハロウィン。他の場所からも子供の声が聞こえる。近くの街ではハロウィンのイベントを行っているらしく、私と出久と勝己はそこに行くことになっている。せっかく行くので仮装もしている。仮装は狼。私の髪の毛に合う白い狼の耳のカチューシャがあったから狼の仮装をする事にした。服は自作で、本当はキリンの装備を作りたかったのだが、先ずこの世界にはキリン装備が存在しない為作るのを止めた。雄英に入ったらコスチュームとして作ってもらおう。
「じゃあ、お姉ちゃん行ってくるね」
「うん!」
「行ってらっしゃい麒麟」
「行ってきます」
お母さんと雄馬に見送られながら家を出る。私の家の前では既に来ていた出久と勝己がなにやら言い合いをしているようだ。と言っても、勝己が一方的に文句を言っているだけなのだが。
「だからなんでテメェと同じ衣装なんだデクゥ! 少しは断るとかしろや!」
「いや、だってお母さんも光己さんも凄いノリノリだったから……」
「んなことは関係ねぇ!」
「家の前で喧嘩しないでくれない?」
「ああ?」
「あ、麒麟さん。ご、ごめんね」
出久と勝己の衣装はお揃いで吸血鬼。多少違うところがあるとすれば蝶ネクタイが緑と赤ぐらいである。
「……あら? 出久と勝己は衣装お揃いなのね」
「う、うん。お母さんにかっちゃんと麒麟さんとハロウィンのイベントに行くって言ったら衣装作るってはりきっちゃって。それでお母さんが光己さんに衣装の事を話したら光己さんもノリノリで……」
「それで一緒になったのね。良いんじゃない? 出久と勝己が同じ服着るなんて滅多にないし」
「それが嫌なんだっつてんだろうが!」
と、いつもの如く叫ぶ勝己と困った顔をする出久を連れてハロウィンイベントをやっている街へとやってきた。街はイルミネーションや飾り物でハロウィンのイベントをやっているのがすぐに分かる。色々な人が仮装していて、小さい子がマミーの仮装をしているのを見つけて雄馬を思い出し笑みが零れる。
「麒麟さんは僕達と来て良かったの? 友達と行かなくて」
「ええ。皆と行く予定だったんだけど、皆が皆仮装にお金使いすぎたらしくて電車賃無くなったのよ。だから今回は中止になったのよ」
「そ、そうなんだ」
この話事実である。衣装なら作ろうかと友達に言ったところ、どうやら皆は気に入った衣装がそれぞれあったらしく既に衣装を買っていたのだ。その時にお金を使いすぎたらしく、電車賃がないから行けないと謝ってきた。計画性が無さ過ぎるとあの時ばかりは思ってしまった。
「けっ、計画性がねぇ奴らだな」
「それは私も思っちゃったわ」
私は苦笑し、勝己は周りを見る。しかしまぁ、出久と勝己が同じ服を来て並んで歩くのを見るのはいつぶりだろうか。昔はよく見ていたのだが……なんだが弄る事が少なくなって面白くない。
「へい! そこのお嬢さんちょっといいかい?」
「えっと……私?」
「そうそう! 君以外に誰が居るのさ!」
街を色々周り、小腹が空いてきた頃。紳士服を身に纏い、ジャックオランタンの被り物をした人が私に声を掛けてきた。頭重くないのだろうか?
「ここの近くで仮装コンテストをやるんだけどお嬢さんもどうだい? お嬢さんなら優勝間違いなしさ!」
「そ、そうかしら? 出久、ここの近くで仮装コンテストなんてやってた?」
「うん、いろんなところにコンテストの張り紙があるから多分それだと思う。優勝した人には最近できたケーキ屋さんのお食事券が貰えるんだって!」
「お嬢さんコンテスト参加してみないかい?」
「そうね……じゃあ、参加しようかしら。全員で」
「ええ!?」
「ああ!?」
私の言葉に出久と勝己が驚いた声を上げる。私だけ出場するのはつまらない。全員で出たら面白いと思うのだ。
「いいじゃない。吸血鬼兄弟とかそんなんで参加すれば。衣装もお揃いなんだし、ね?」
「ひ、人前に出るのは…恥ずかしいというか…」
「なんで俺がデクと一緒に出なきゃなんねぇんだ!」
否定のオンパレードである。どうすれば乗ってくれるだろうか? 勝己を動かせば出久はそれに引っ張られる事になるはずだ。よし、よ勝己を動かそう。
「勝己」
「あ? んだよ」
「私とどっちがコンテストで優勝するか勝負しましょう? 勝った方は負けた方に何でも命令できるわ」
私と勝己はよく勝負をする。今まで私の全勝だが、私から勝負を仕掛けたことはない。今回は“個性”は使わないし、勝てば何でも命令できるという特権付き。これで勝己が動かない訳がない。
「面白ぇ…今度こそテメェを泣かす!」
勝己は獰猛な笑みを浮かべて小さな爆発を起こす。勝己は意外とチョロい。勝負を持ちかければ案外上手く動かせるのだ。
「出来たら良いわね」
「…けっ、行くぞデク!」
「え? 僕も!?」
「テメェは俺の指示通り動いてりゃあいいんだ! クソ女に勝つためにテメェを利用すんだよ!」
「いや、僕は──!」
勝己は出久を引きずりながら人混みの中に消えていく。出久とのお揃いとか協力をとことん嫌がるのに、私に勝つためとなると出久と協力するなんて…あのボンバーマンどんだけ私に勝ちたいのか……。
「えっと、お嬢さん。俺達も会場に行こっか?」
「ええ、案内宜しくお願いします。ジャックオランタンさん?」
「お任せあれ!」
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場所は変わってコンテスト会場の控え室。結構参加している人が多く、マスコミなども来ていた。先に出久と勝己は会場にでており、色々話していた。勝己が優勝宣言をしたときは苦笑いしてしまった。
「雷麒麟さ~ん。出番ですよ~」
「は~い」
私の順番になり、私はコンテスト会場に出る。色んな人が観客として来ている。私は最高の笑顔でステージを歩く。それはさながらランウェイのようではあるがまぁ、全体を見るためには必要ではある。
「雷麒麟さん、素晴らしいランウェイをありがとうございます! 最後に何か一つお言葉を!」
「そ、そうね…ええと、じゃあ……トリック・オア・トリート! お菓子をくれなきゃ
「「「わああああ!」」」
聞け勝己。これが私の容姿の効果である。確かにお前も容姿はカッコいい部類に入るだろう。だが、キリン娘という美少女に敵うわけがないのだ。
その後コンテストの結果が発表され、当然ながら一位であった私は黒い笑顔で勝己の財布を全力で空っぽにすべく焼き肉に出久と勝己を連行した。とても良い思い出になったのは言うまでもない。