また、内容が今まで以上にごちゃごちゃしているので、理解出来ない所があると思います。ご了承下さい。
黒い霧が晴れた先。私の目の前には森林が広がっていた。
「ここは……?」
雷を纏った状態のまま警戒を続ける。黒い霧の
「取り敢えず、ここが何処か把握して戻れるようなら直ぐに戻らないと」
「いや、その必要はないよ」
「っ!?」
場所の把握の為に移動しようとしたと同時に背後から声が聞こえ振り向く。その直後、巨大な黄色い拳が襲ってきたのを間一髪で避け距離をとる。
「初めまして雷麒麟ちゃん。僕のことは“魔王”と呼んで欲しいかな」
「そう……」
目の前に居る黄色い肌に脳がむき出しとなっている大きな怪物……確か名前は“脳無”だった筈。その脳無の胸ににラジカセのようなものが埋め込まれてあり、そこから声が聞こえていた。恐らくカメラ付きの通信機。一体なんの為に。
「そう警戒しないで欲しい。僕は君にある取り引きをしようと思ったんだ」
「取り引き……?」
「ああ、そうだよ。雷麒麟ちゃん…僕達と…いや、死柄木弔の仲間になってもらいたくてね」
何を言っているのか理解に苦しむ。私が
「残念だけど、私は貴方達の仲間になるつもりはないわ。私はヒーローになる為にヒーロー科に居る訳じゃないけど、
「だろうね。だからこそ、さ。僕は知っているよ。君の心の中にある未だに満たされない欲望を。僕なら君に相応しい居場所を、力を、欲するもの全てを与えることができる」
こいつは本当に頭大丈夫なのだろうか? 私は断ったのだ。なんともまぁ、諦めが悪いというかなんというか。取り敢えず今分かるのは目の前に居るのは敵。此処は撤退が吉か戦闘が吉か……。
「あら素敵ね。でも丁重にお断りしとくわ。私はヒーローにも
「それは残念だよ。もう一度聞いておくよ。本当に僕と共に来ることはないんだね?」
「ええ、勿論。だからさっさと帰って欲しいところね」
「仕方がないね。脳無捕まえろ」
私の返事を聞いた魔王は脳無に指示を出す。脳無は大きい口を開け、私に向かって走り出してきた。
「帰ってと言ったのだけど?」
「さぁ? 僕はそのように聞こえなかったけどね」
「そう。ま、いいわ」
雷を一点に集中。狙いは襲って来る脳無。魔王よ選ぶ相手を間違えたことを後悔するといい。脳無は確かに怪物だ。だが、それは私も同じ事。いや、私はモンスターなのだ。
「落雷」
ドォン! という轟音と巨大な雷が脳無を襲う。オールマイトを襲っていた脳無の“個性“はショック吸収と超再生。全く同じとは思えないけど多分類似の“個性“。なら巨大な落雷には耐えることはできないだろう。
「雷を操る“個性“。やはり恐ろしいものだよ。だけど、思った程じゃない」
「嘘……でしょ?」
宙に舞う砂煙の中から脳無は何事も無く歩いてくる。それはまるで雷を受けていなかったように。
「この脳無にはね、雷と衝撃に対する耐性がある“個性“を持たせているんだ。もし君が僕の勧誘に断ったら力づくで連れて行くために作ったのさ」
「滅茶苦茶ね……」
滅茶苦茶だが突破口はある。耐性があるだけで無効ではない。雷と衝撃の耐性であの落雷を余裕で耐えているなら、本気を出せばなんとかなるだろう。そのためにも距離をとらなければ。
「
足に雷を集中。周りは森林なのだから速く動けば多少の目くらましにはなるだろう。
「じゃあ、また会いましょ?」
高速で木々の間を縫って走る。キリン化状態になるには限界まで雷を出さなければならない。誤ってキリン化状態にならない為の所謂リミッターというもので、多少時間がかかるのだ。
「逃がさないよ」
「嘘!?」
木々の間を縫うのもあって多少遅くなっているとはいえ、かなり全力を出して走る私を併走する脳無。急ブレーキし、バックステップしながら身を潜めようとしても、異常な腕力で木々をなぎ倒しながら追ってくる。これは……マズい。
「捕まえた」
「くっ!」
木を投げられ、それを避けている隙に腕を掴まれる。振り解こうにも相手の力に勝てる筈もなく、持ち上げられた。
「かっ…は!」
持ち上げられられた私はそのまま地面に叩きつけられ、背中を強打する。息が出来ない。苦しい、痛い、マズい、死ぬかもしれない。逃げようともがくが、踏みつけられて私の身体はピクリとも動かない。
「大人しくしないともっと苦しむことになる。君もそれは嫌だろう?」
「お生憎様……私は貴方達に興味はないわ!」
雷を大量に発生させ、脳無に浴びせる。幾ら耐性を持つ“個性”であろうと、雨だれ石を打つ戦法で当て続ければ隙が出来る筈である。身体が拘束されようが関係などあるものか。私は生きて出久達の元に帰るのだ。
「脳無痛い目に合わせてやってくれ」
脳無が口を開け、空いている右手を振り上げる。私は自身を守る為に
「ああああ───っ!?」
雷が使えない──マズい。
反撃なんて出来ない──殺される。
私はまだ──死にたくない。
「もうこれ以上傷つけられるのは嫌だろう? もう君は──」
魔王の声が遠のいていく。薄れゆく意識のなか私は出久と勝己の顔を思い浮かべていた。二人は大丈夫だろうか? 原作通りにいってないとするなら負けてる可能性だってある。脳無を倒して幼なじみを助けないと、守らないと。全員でヒーローになると約束したのだ。
『その心意気は良し。だが覚悟が足りん』
ハッと目を覚ますと、不思議な場所に私は居た。所々地面に氷が張っている白い世界。その白い世界でゆっくりと私に近づくモンスターが居た。
「キリン……?」
『うむ、我はキリン。お主の魂に宿る者だ』
「え……? 言っている意味が分からないわ。此処はどこ? 脳無は? 私は死んだの? 魂に宿るって?」
出てきた疑問を全部吐き出す。キリンの顔は困ったような表情をしたように見えた。
『質問は一つずつにして欲しいものだ。まぁ、いいだろう。此処はお主の精神世界。現実のお主は気絶して脳無に捕まっておる。死んではないが、このままでは連れ去られるのう』
「一刻も争う事態じゃない。なら早く戻らないと」
『一方的にやられていたのにか? 戻った所で結果は変わらんよ』
「それでも! 行かないことには何も変わらないじゃない!」
私の叫びにキリンはため息をつく。前足で何度か地面を軽く蹴った後、私を見た。
『分かっておる。そこで我の出番という訳だ。我はお主に死が迫った際にそれを防ぐためにお主の魂に宿っている。お主を間違えて殺してしまった神のご厚意というものだ』
「それじゃあ、協力してくれるって事?」
『うむ。だが、その前に聞くことがある。お主はヒーローになりたいのか?』
「いいえ、私はキリン娘になりたいわ」
『それならもうなっているだろう? その格好で我と同じ力を持つ。それ以上なにを望む?』
「それは……」
『お主は意識が遠のくなかこう思っていたはずだ。全員でヒーローになると約束したと』
「……」
確かにどうしてそう思ったのだろうか。私の目標はキリン娘になることでヒーローになることじゃない。ヒーローはキリン娘になるための通過点。じゃあ、私が目指したキリン娘とは一体なんなのだろうか?
『無意識に思っていたのではないか? キリン娘ではなく、ヒーローになりたいと。コスチュームを手にするだけならわざわざ雄英に行く必要もあるまい』
「そう…ね。未だにはっきりしないけど多分そうなのかもしれない。もしキッカケがあるとすれば……」
幼い頃三人で見たオールマイトがデビューした時のあの映像だろうか? ただひたすらにヒーローに憧れてヒーローを目指す二人を見て私はそれに影響されたのだろう。私が立てた目標が幼い頃に塗り変わっているだなんて……少し笑ってしまう。
「認める。私はヒーローになりたいのよ。でも、キリン娘にもなりたい。目指したキリン娘がどんなものかは分からない。でも必ず見つけるわ」
『それでよい。では、お主の絶望的な状況を打開するとしよう』
「どうすればいいの?」
私の質問にキリンは笑うように鳴いてから。私とすれ違うように歩く。
『お主の身体を我に貸せ。“個性”としてのキリンの力ではなく、モンスターとしてのキリンの力お主に見せてやろう』
キリンは心底楽しそうに私にそう言った。
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「……」
気絶した麒麟を担ぎ、無言で歩く脳無。魔王と名乗った男の命令に従い、森林の奥を目指す。脳無という名前の通り考える知能がなくなっているとはいえ、麒麟には充分脅威となる存在ではあった。あくまでも麒麟にはだが。
「さて、狩りの時間とするかの」
脳無の周りに迸る雷光。担がれていた麒麟は抜け出し、脳無を蹴り飛ばした。
「ふむ。角は折れてはしまったが、この程度なら支障はない。しかし、人間の姿で狩りをするのは久しいな。加減を間違えなければいいが……まぁ、どうとでもなる」
雷を纏う麒麟は薄く笑う。何時もの笑みとは違う獲物を見つけたと言いたげな笑み。魔王は興味を持ったように話し出す。
「君は誰かな? 雷麒麟じゃないね」
「はて、どうであろうな。少なくとも我はキリンだと思っておるよ」
雷鳴が轟き、麒麟の纏う雷の勢いが増す。立っているだけであるのに全く隙を見せない。麒麟から放たれる気迫はつい先程まで脳無にやられていたとは思えないものであった。
「まぁ、それをお主に伝えたところで意味はない。我の役目はお主の撃退。この状況を逆転するところにある」
一歩。麒麟が踏み出した瞬間に、地面が割れると共にドンッという音が辺りに響く。
「シッ!」
殴られた脳無は吹き飛び、麒麟は追撃と言わんばかりに三本の雷を地面と平行に飛ばす。木々を破壊しながら雷は脳無を襲い、僅かに脳無を傷つけた。
「おかしいな? 君の“個性”の限界に耐えれるように作ったのに。これじゃあ意味がないじゃないか」
「それは麒麟の限界であろう? 我にはその程度の耐性どうということはない。そもそもが角から発生する雷だけで戦うということこそ無謀というもの。あくまでこの角は媒体であり、我の雷の本質は別にある」
瞬間移動とも言える速度で移動した麒麟は、未だに吹き飛ぶ脳無に踵落としをして無理矢理地面に沈める。
「この世界にはお主等では到底理解出来ぬ力が存在しておる。それを利用することで我は雷を自由に操ることが出来るのだ」
「まるで化け物のようじゃないか」
「ふむ。あながち間違えでもない。訂正があるとすれば我らはモンスターであり誇り高き“古龍”である」
麒麟の言葉に共鳴するかのように、麒麟が立つ地面が青白く発光していく。ビリビリと周りを伝う雷が激しさを増し、耐性を持っている筈の脳無の筋肉を硬直させ始めた。
「努々忘れるな。我に喧嘩を売るという事は己の死を呼び寄せていることと同じ。お主など井戸の中の蛙である事を肝に命じておくのだな」
馬のような鳴き声が響いた後、超巨大な落雷が脳無と麒麟を襲う。落雷で舞い上がってしまった砂煙が消え、地面に埋まっていた脳無が全身が焦げて絶命しているのを確認した後、麒麟は乱れた髪の毛を整える。
「ふむ……少し強すぎたか?」
周りを見れば焼け焦げたような跡が幾つも残っており、麒麟は苦笑いを浮かべる。麒麟は脳無を仰向けにし、胸に埋め込まれた機械が壊れているのか確認した。最初の落雷にも耐えていた機械も流石にキリンの落雷には耐えられなかったのか幾つもの亀裂が入り、火花を散らしていた。それでも、原型を留めているのだから物凄い堅さである。
「少し無理をしたか……」
麒麟は近くの木に寄りかかり、満足げな笑みを浮かべながらゆっくりと目を閉じた。
麒麟が自分のなりたいものとそう思ったキッカケを書いてみました。キリン娘になるという目標で埋もれていたのを掘り起こす為に書いたのですが、書くにつれてだんだんごちゃごちゃに……。とても読みにくくなってしまい大変申し訳ありませんでした。
話題は変わりますが、今回出てきたモンスターとしてのキリン。計画としてはまだまだ活躍は残っています。また、麒麟が成長するキッカケにもなりますのでキリンの活躍にご期待下さい!