『モンスターとしてのキリンの力よく理解できたか?』
キリンは雷光を纏いながら私の目の前に現れ、ゆっくりと歩いてきた。
「ええ、まぁ……規格外っていうのは理解したわ」
まるで映画のスクリーンを見るかのように私の身体を使ったキリンと脳無の戦いを眺めた。今まで私が使っていた力の何十倍も強いそれはこれまでの次元を遙かに超えたものだった。後、勝己がめっちゃ肩揺らしまくっていたので次あったら文句言おう。
『ふむ。それもそうかもしれんな。今まで我の力の源を根本的に間違って捉えていたのだからな』
「そ、それは……」
『仕方のないことではある。我ら古龍が扱う力の源である“龍脈”は人間には感じることのない力だ』
『だが、お主ならば直に分かるようになる』と言いながらキリンは笑いながら言う。私の目の前で止まったキリンは角を私の折れている角に当てた。
『今は折れてはいるが再生する。なに心配するまでもない。お主は我らと同じ古龍の一体なのだ。生命力も身に秘める力も我らとなんら大差ない』
「あら、私も古龍なの?」
『無論。人間が勝手に古龍と認めているが、我らが古龍と認めれば古龍である。人間の常識など我らにとってみればままごとだからのう』
確かに古龍にとっての常識は人間からすれば非常識なのだろう。それにしても私も古龍とは……なんだか言葉に表せない気分である。そもそも私がなりたかったキリン娘ってこんなんじゃなかったような……。
「そう……。それで私は何時になったら戻れるの? あの時は焦って戻ろうとしたけど戻り方なんて分からない」
戻れと念じれば戻れるって訳でもなさそうだし。私を此処に呼んだキリンならなにか知っていても不思議じゃない。
『その点については心配することはない。我が直ぐに戻すことができる』
「それじゃあ戻して欲しいのだけど」
『その前に我の頼みを聞いてはくれぬか?』
「別に良いけど。なに?」
『戻ったら一点に雷を集中してから我を呼んでくれ。流石にここに十何年も居るのも飽きがきた。それに、爆豪勝己と約束したからのう』
「約束……? それに貴方此処からでれるの?」
『我は古龍なのでな』
無駄に説得力がある言葉を聞いて私はなる程と納得してしまった。流石は古龍。
「分かった。言われたことをすれば良いんでしょ?」
『うむ。頼んだぞ』
キリンの言葉を聞くと共に私の目の前は真っ暗になった。
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「ん、んぅ……」
目を開けば窓から射し込む光が眩しく、つい目を細めてしまう。少し経てば目は慣れ、周りを見ることが出来るようになった。
「此処は……」
起き上がると、知らない天井に知らない景色。身体の所々に包帯が巻かれ、凄くフカフカのベットに寝ていたことは直ぐに分かった。恐らく此処は病院なのだろう。
「角は……折れてる。身体は痛いけど別に動けないほどじゃないってところかしら」
私の身体がどれぐらいの調子なのか分かった所で数回ノックが聞こえ病室のドアが開く。ぞろぞろとクラスの皆が私が居る病室に入ってきた。
「麒麟さん! 良かった目が覚めたんだね!」
「麒麟ちゃん! 目が覚めてよかった~!」
私を見て出久とお茶子が笑顔で私に寄ってきた。他の皆も良かったと喜んでくれた。一人を除いてだが。
「おい、ビリビリ女」
「勝己……」
何時ものように顔は不機嫌な顔をしている。でも、少しだけ今日の勝己の目は優しく見える。
「あのバケモンはテメェが倒したのか」
「いいえ、私じゃない。見た目は私なんだけどなんて言えばいいのか分からない」
「あん時のテメェは二つ目の人格とか雷の権化とかぬかしやがった。あれは…俺の知ってるテメェはそんなに遠くねぇ」
勝己は両手を握り締める。私の耳に聞こえる程歯軋りをして悔しそうな顔をする。今まで見た悔しそうな顔の中でダントツだった。
「俺は、昔っからテメェに一度も勝ててねぇ…何をしても、何時も俺をテメェが先に進みやがる! いいか麒麟! 最初にテメェに勝つのは俺だ!」
「知ってるかオールマイトって絶対負けないんだぜ!」なんて昔勝己が言っていたことを思い出した。勝己にとってのヒーローは絶対勝つヒーローなんだろう。だからオールマイトに憧れたのだろう。だからどうした? 私はもう負ける気はない。
「……いいわ。次に戦うとき全力で来て。私も全力で行くから」
「それ言う前に怪我治せや。治さなかったらブッ殺す!」
勝己はそう言うと乱雑に持っていたバックを私に投げつけ、病室を出て行く。えっ、なんか痛いし重いんだけど。あのボンバーマン怪我人になんて事するんだ。
「果物?」
バックを覗けばリンゴやミカンなどの私が好きな果物がいっぱい入っていた。勝己も素直じゃないだけで優しい所もあるのだ。
「あはは、かっちゃんらしいね」
「ええ、勝己らしいわ」
出久と笑いあう。昔もこんな事があったなと思い出に浸る。お茶子に引き戻されてからは勝己が持ってきた果物を皆と食べながら色々話をした。“脳無”のこと、あの時戦っていたのは誰なのか、キリンという存在。到底信じれる話ではなかった筈なのに私の話をちゃんと聞いてくれた皆には感謝だ。途中からお母さん達が来たり、騒ぎまくる峰田がうるさかったけど良い思い出になった。
「それじゃあ、また来るねっ!」
皆が思い思いの言葉を口にし、病室を出て行く。時刻は夕方。お母さん達はまだ残ってて雄馬はすっかり寝てしまった。
「皆、いい子達ね。新しい学校になってからお母さん心配だったけど安心したわ」
「大丈夫に決まっているだろう? 俺達の娘なんだからな!」
お母さんの安堵のため息にお父さんが豪快に笑う。お父さんの名前は
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
苦笑いを浮かべる私にお母さんとお父さんは微笑む。少ししてからお父さんは私の頭を撫でた。雑な撫で方だからか若干痛い。
「お前は本当によく頑張った。最初はお父さんもお母さんも心配だったんだ。でも、今回の件でお前は成長してたんだなって実感したよ」
「お父さん……」
「これからも嫌なこと、辛いことがあるかもしれない。泣きたくなったら泣きなさい。叫びたかったら叫びなさい。お父さんとお母さんが側にいて支えてやる」
「……うん」
なんだか胸がいっぱいになった感じがした。
「おっと、もうこんな時間か。面会の時間も残ってないし帰るとするかな」
「明日も来るわ。ちゃんと寝るのよ」
「ええ」
お父さんは雄馬をおぶりお母さん一緒に病室を出て行く。窓から外を見れば真っ暗になっていた。なんだか時間の流れが早かったような気がする。
「あ、そうだ」
私は右手に雷を集中させる。キリンに頼まれたれたことをしなければ。
「キリン」
私がそう言うと、右手に集中した雷が形を変え、キリンの形へと変化していく。
『ふむ。思ったよりも少しサイズが小さいな』
私の上に立ったキリンは大きめの人形サイズ。ちゃんと表すならトイプードルぐらいだろうか?
「随分、ちっちゃくなったのね」
『我の大きさはお主の雷の量に比例する。お主は今相当な弱体化をしているのだ』
「それはまぁ、今まで通りの“個性”の使い方だと角だよりだからでしょ?」
『うむ。お主はまだ龍脈を感じるのことが出来ぬのでな存分に力を振るえんのだ。故に我はある策を思いついた』
「ある策?」
『そうだ。麒麟……お主は亜種という存在を知っているか?』
「え?」
キリンの言葉に私は硬直した。