クリスマスネタが無かったので書くことが出来ませんでした。いくら考えても雷を落としまくるトナカイ(キリン)とサンタクロース(麒麟)しか出てこなかったんです。
話は変わりますが、気づけばお気に入りが1000件越えていました! こんな拙作を見ていただいている方々には感謝感謝です!
『麒麟……お主は亜種という存在を知っているか?』
「え?」
硬直する私にキリンは楽しそうに笑う。少し腹立った私はキリンを持ち上げて上下に振った。
『こ、こらお主! やめんか!』
「何を言ってるか分からないわ」
少し経ってからキリンを私の太もも辺りに降ろす。キリンは少しふらついたが直ぐに戻る。前足で私の太ももを何度か踏んだ。
「痛いのだけれど」
『痛いのなら自慢の
「自慢ではないわ。使えば良いと言われればそうなんだけど雷が操りにくいのよ。なんて言うのかしら……そう、今まで角から出した雷を操ってたのに別のとこから出てきた雷を操る感じ。いきなり出てくるから扱えないのよ」
『それが龍脈を使った雷だ。お主から発生するのではなく天、地、宙から発生しておる。身体に発生しないからこそ龍脈の強大なエネルギーを存分に扱えるのだ。いくら古龍である我らであってもエネルギーを身体から発生させれば只ではすまんからな』
どこか残念そうなトーンでキリンは話す。キリンが何を思ったのかは知らないが、古龍が龍脈を身体から発するなんてことしたらモンハンの世界が崩壊してしまう。龍脈が強すぎるということは逆に良かった。
「そうなの? 龍脈のエネルギーは凄いのね」
『うむ。それはそうとして無意識ではあるが龍脈を扱えるのなら話は早い。本題に戻るがお主は亜種という存在を知っているか?』
「ええ…色違いの個体でしょ? 属性とか行動とか全くもって違う特徴をとるものも居るけど」
『解釈は間違えておらん。だが、我と我の亜種はその性質が違う。我の角は雷を発生させ、操ることができるがあくまでも準備運動。本質は龍脈を使用し発生させた雷を角で操作するのだ。だが、我の亜種の角は氷を操作しておる。一本の角には一つの役割しか持たせることが出来ぬが例外が存在する』
「例外……?」
『そうだ。お主の角は今折れている。つまり使える雷の量が減ったということだ。このまま再生まで待つのも一つの策ではあるが、今の状態で我の亜種の力を得ると面白い現象が起きる』
「もしかしてどっちの力も扱えるの?」
『うむ。雷と氷…両方の力が半減するが、扱えるようになる。過去に我が向こうの世界に居たときに両方の力を扱う同胞がいてな。詳細を聞けば角が折れた際に外敵の少ない雪山で休息をとっていたら氷を扱えるようになったと言っていたのだ。あくまでも仮説だが、雪山のような環境化に置かれた場合に龍脈の力が変化するかもしれん』
「それじゃあ……」
私の顔を見たキリンはフッと笑うと、雷を纏いだす。
『少し、雪山に行くとしよう』
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周りは純白の雪に覆われ、太陽の光が反射していてキラキラと輝く。はぁ、と息を吐けば白い息となって宙を少し漂う。雲一つ無い晴天、冷たくなる身体を少しでも暖めてくれる太陽には感謝である。雄馬も連れてきたらとても楽しい遠足気分になれたのだろう。というよりも──
「寒いわ。というか、ヒマラヤ山脈まで来る必要あったの? 一応私入院中なんだけど……サンダルだから足も冷たいし」
『我が向こうの世界に居たときに似た雪山が此処しかなくてな。久しぶりに駆け回るのも悪くはない』
一時的に自身の雷によって普通の大きさに戻ったキリンは私を乗せて海を横断した。はっきりいって意味が分からなかったけど渡れる理由を聞いてみたら古龍だからという返事が返ってきた。何故かなる程と思ってしまった。
『ふむ。此処ではちと暖かいな』
「え……?」
『此処よりも寒いところはあるか?』
「此処より寒いところって……北極?」
『乗れ。其処へ行くぞ』
「え、ええ……」
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「グルルル」
「ねぇ、キリン。ここ危ないと思う」
『そうか? 相手はただの獣であろう?』
北極に移動し、少し歩いていたらホッキョクグマが私達の前に立ちふさがった。凄い威嚇している。弱体化した状態で勝てるのだろうか?
『龍脈をはっきりと感じるには丁度良い相手だゆっくりと倒してみろ。なに、心配するな。何かあれば助けに入る』
「分かったわ」
キリンの言葉を信じて私は雷を纏う。角から発生した雷ではなく龍脈から発生した雷。まだ若干扱いにくいが、少しずつ慣れてきた。
『む? 龍脈に慣れたか。そのままの状態を維持しながら龍脈自体を感じ取って見ろ』
「ええ」
ゆっくりと目を閉じて雷が発生しているところに意識を集中させる。本当なら敵の前でこんなことしちゃいけないのだが、キリンが居るから大丈夫だろう。
「ん?」
雷が発生しているところから少し穴が空いているように感じた。穴が空いてると言っても1mmぐらいの穴だ。穴に意識を集中させると、それは穴ではなく、地面と繋がっている管ということが分かった。管を通る感覚で地面のなかへと入っていく。
「うっ……!」
地面もとい地球の中に入った瞬間に強力なエネルギーの奔流に襲われる。このエネルギーが龍脈なのだろろう。
「はぁ、はぁ、はぁ」
龍脈に飲まれただけで疲れる。龍脈というエネルギーがどれだけ強力なのかが分かった。古龍達が理不尽な災害をポンポン生み出せるのが理解できた。これは恐ろしい。確実に“個性”よりも遥かに勝っている。
「グルゥ……」
私が龍脈を感じ取れるようになってきたと同時にホッキョクグマが少し後退りした。
『龍脈自体を感じ取ったな? それがお主が本来使うはずの力だ』
「凄いわね。原理としては地面から出てきた龍脈を雷に変るって感じかしら。雷の操り方は角を使ってた時と同じだから……」
管から出る一歩手前で雷になるイメージ。簡単に言えば管から糸を出しているようなもの。此処にいれば勝手に雷が氷になる訳じゃないし、雷を氷にする場合に糸じゃなくて固いものに変えれば良いのだろうか?
「じゃあ……鉄?」
管から出る龍脈を鉄になるイメージをしながら轟の真似をするように右手を振り上げる。すると、ホッキョクグマの足元から巨大な氷が現れ、ホッキョクグマを吹き飛ばした。
『ほう……。直ぐに習得したか』
「いや、私もこんなに早く出来るとは思わなかったわ」
1~2mほど飛んだホッキョクグマを見ながら私は苦笑いをする。こんな簡単に亜種の力が使えて良いのだろうか?
『環境によって力が変わるのなら我も力が変わるはずなのだが……何も変化が無いな』
「出せるのは雷だけ?」
『うむ。何か他の原因があるのだろう』
「私はイメージで氷が出せたわ」
『そうか。我ら古龍はイメージなどしないからな。どれ、やってみるか』
キリンの鳴き声と共に雷が落ちる。キリンは不機嫌そうに前足で氷を蹴る。
『無理だったか。よく分からんな』
「そう……。取り敢えず、帰りましょう?」
『む? まだ帰らせんぞ。もっと龍脈に慣れさせなければならんのでな』
「え?」
この後一時間みっちりと鍛え上げられ、帰るのは深夜になってしまった。一時間も北極に居た所為か風邪も引いてしまうし、最悪である。まぁ、凍死しなかったのが少し不思議だったりする。