恐らく今年最後の投稿になりそうです。
入院は一週間で終わり、迫ってきている雄英体育祭に備えて残りの一週間は訓練だらけとなった。雄英体育祭とは学年別の総当たりで戦う“個性”ありの運動会。予選である障害物競争に騎馬戦に勝ち抜いた生徒が本戦で戦うというもの。バンバン“個性”を使うことになるので体力と持久力の強化と雷と氷の制御練習をしていたのだ。場合によればキリン化状態で戦うかもしれない。もし、そうなったら加減をしなければ周りにとんでもない被害が出てしまう。後訓練をしたお陰なのか擬人化状態に及ばないが、人間状態でも龍脈を操れるようになった。
「皆、準備は出来ているか!? もうじき入場だ!?」
「コスチューム着たかったな~」
「公平を期す為着用不可なんだよ」
飯田の呼びかけに三者三様の反応をする皆を見つつ、少しだけ身体を解す。“個性”を満遍なく使えるようにしとかなければ。
「緑谷」
「轟くん……なに?」
「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」
「へっ!? う、うん」
「お前オールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこを詮索するつもりはねぇが…お前には勝つぞ」
「おお!? クラス最強が宣戦布告!?」
「僕も本気で獲りに行くよ!」
「……おお」
出久は完全に“個性”を使いこなしていない。自身を傷つけたとしてもオールマイトから受け継いだ“個性”は強力。だが、尤も恐ろしいのが出久の観察力にある。相手の“個性”の特徴を理解し、対策を練る。今まで戦ったことはないが、敵となるなら油断できない。轟もそう思ったのだろう。
「雷、お前もだ」
「なにが……?」
「訓練の時みてぇに簡単にはやられねぇ。お前にも俺は勝つぞ」
「勝てるといいわね」
「ビリビリ女に勝つのは俺だ! 半分野郎!」
「おう、爆豪。お前にも勝つ」
「ああ!?」
「皆、静粛に!」
────────────
《雄英体育祭! ヒーローの卵達が、我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル! どうせてめーらアレだろこいつらだろ!?
私達の入場になり、私達は廊下を歩いて会場へと出る。騒音にも似た声援。それに包まれながら私は笑う。宣戦布告、それを受け取ったのなら本気でやろう。少なくとも出久、勝己、轟は必ず本戦に行く。キリンと鍛え、更に強力となった私の力を見せつけてやる。
「選手宣誓!」
皆がソワソワしている中、18禁ヒーローミッドナイトが鞭でピシャンと音を鳴らしながら主審をする。今年はミッドナイトかなどの話を聞く限り去年は違うのだろう。去年の雄英体育祭は見てないので私には分からない。
「18禁なのに高校にいてもいいものか」
「いい!」
「静かにしなさい! 選手代表!」
ミッドナイトはピシャンとまた鞭を鳴らす。しかし峰田が五月蝿い。
「1-A雷麒麟!」
「あら、私なの?」
私にニコニコと笑いながら朝礼台に乗る。ヒーロー科入試の一位だからとか、なんでビリビリ女なんだとか言っているが無視だ。
「宣誓。私達一年はこれから行う種目全てに全身全霊で挑み、相手に敬意を持って戦う事を誓います。最後に」
勝己だったらなんて言うだろうか? 多分きっと──
「私が一位なるわ」
「ええ!? 雷!?」
切島の叫びの後に大ブーイングが起こる。ふざけんなA組とか自信過剰とか潰すとかビリビリ女ざっけんな! とか。私は笑顔になりながら皆を見た後、少しだけ古龍の風格を出してマイクを持つ。
「怒って吠えるだけなら犬でも出来るわ。そうしたいだけなら止めてくれないかしら? 目障りだから」
会場はシンっと静まる。やはり古龍の風格はいい、キリンと訓練をしているときに会得したものだけどクマぐらいなら余裕で怯えさせることが出来る。
「さ、さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!」
「雄英ってなんでも早速だよね」
「いわゆる予選よ! 毎年多くの者が
ドゥルルという音がなりながらルーレットが回る。少し経ってからルーレットが止まる。
「コレ!」
「障害物競…!」
「計11クラスでの総当たりレースよ! コースはこのスタジアムの外周約4km! 我が校は自由が売り文句! コースさえ守れば
ミッドナイトの言葉通りに皆がぞろぞろとランプが付いたゲートの前に集まる。というかゲート狭すぎだと思う。前で小競り合いをしていたのでそれを回避すべく私は一番後ろに居る。選手宣誓で一位になると言ったからなのか凄い見られてる。
「スタート!」
ゲート目掛けて走り出す皆を見届ける。その瞬間に足元からパキパキという音が聞こえ、私は下を見た。
「あら……轟の仕業ね」
足元が氷で覆われており、身動きがとれない。周りの皆も私と同じように身動きがとれないでギャーギャー騒いでいる。
「えい!」
蒼角を生やして雷を纏い、氷を殴って砕く。蒼角と言っても半分から上はキリン亜種の角の色である淡い紫色をしている。氷が扱えるようになった所為だ。
「いきなり妨害だなんて。本当に勝つ気まんまんなのね」
抜け出せない人達を歩いて追い抜かし、第一関門ロボ・インフェルノの前で私は止まった。放送を聞く限りでは轟が戦闘で突破したらしい。氷像とかした入試の時の0ポイント
「こんにちは。とってもいい天気ね」
「……」
何の反応もせず、0ポイント
「ええ、本当に。落雷をするにはいい天気だわ」
私の指ぱっちんで0ポイント
《ロボ・インフェルノの方で落雷があったが大丈夫かよ!?》
《あれは雷の落雷だな。仮想
《おいおい二つの巨大ロボを壊すとかお前のクラスはどうなってんだよイレイザーヘッド!》
《知らん》
少し早く走りながら前方を見る。先に行った人達が立ち止まっている。第二関門だろう。一体どんな仕掛けなのだろうか。
《オイオイ第一関門チョロいってよ! んじゃ第二はでうさ!? 落ちればアウト! それが嫌なら這いずりな! ザ・フォール!》
綱渡りといったところだろう。ただ、かなり長い綱を何回も渡らなければならないし、高所に作られているのもあって恐怖心を植え付けられる。まぁ、私には関係ない。訓練中に仙人が通るような道を高速で走っていたりしたのだから。
「凄い高さね」
「わっ! 麒麟ちゃん!」
「どうしたのお茶子? 梅雨ちゃんも行ってるし、サポート科の人も行ってるわよ?」
「そ、そうなんやけどちょっと怖いなぁって」
「まぁ、そう思うのも仕方が無いわね」
綱が固定されてある器具まで歩き、下を見る。完全に暗闇。これ落ちたら大丈夫なんだろうか?
「轟達も通過した事だし、私も行くわね。ゴールで会いましょ?」
「う、うん」
「よっ!」
大きく跳躍した私は目の前にあった足場に着地。そのまま勢いを殺さずに走り、何度も飛んで足場を渡っていく。
《1-A雷ジャンプだけででザ・フォール突破! こいつはシヴィー!》
「嘘やろ!?」
途中から軽く飛んでみたけど意外といけた。やっぱり角から出る雷と龍脈から出る雷では威力が高い。流石は龍脈。使えるようになるとこれほど頼もしいなんて。
《先頭が一足抜けて下は団子状態! 上位何名が通過するかは公表してねぇから安心せずに突き進め! そして早くも最終関門! かくしてその実態は一面地雷原! 怒りのアフガンだぁ!》
一同立ち止まり周りを見る。よく見れば地雷の位置はなんとなく分かる。放送を聞く限りでは地雷の威力は大した事はないらしい。派手なのは音と見た目だけらしい。
「へぇ……」
「ま、直に慣れるわ」
爆発を受けながら走る。目の前が流石に見えづらくなってきた頃、後ろから大爆発が起きた。
「出久!?」
緑色の板、0ポイント
「デクぁ! 俺の前を行くんじゃねぇ!」
減速した出久は宙に投げ出されるような形で飛んでいる。幾ら爆発を利用して飛んだとしても永遠に飛ぶ事は出来ない。出久は勝己と轟に抜かされる。通常ならそこで終わり。でも、出久は違う。
「流石ね出久!」
前方で再度大爆発が起きる。気弱で泣き虫でそれでも夢を諦めない出久は掴んだチャンスは必ず逃さない。今回もそうだ。仮想
《さァさァ序盤の展開から誰が予想できた!? 今一番にスタジアムへ還ってきたその男! 緑谷──》
通常なら誰も追い抜かす事など出来ない。出久とゴールの距離は2m。出久の一番乗りは確定していたことだろう。そう、通常なら確定していた。だが、残念ながら私というイレギュラーが存在している。
「ごめんね出久」
「えっ?」
本気の速度。車やバイクなど非にならないような速度で地雷原から駆けた私は出久を追い抜きゴールした。止まるのに若干手間取るあたりこのスピードにまだ慣れてない。
《緑谷出久じゃなくて雷麒麟!? あの距離から大逆転とかありかよ!?》
「はぁ、はぁ、麒麟…さん?」
「一位奪ってごめんね? こう見えて私負けず嫌いなのよ。それにやってみたかったのよね──」
唖然とする出久を見ながら私は再度口を開く。
「大逆転っていうシチュエーション」
歓声を聞きながら私は不敵に笑った。