ヒーロー側に“モンスター”が居るなら
この世は理不尽である。これはこの世界、僕のヒーローアカデミアで僅か3歳にして理解せざるおえない事であり、希望を絶望に塗り替える事でもある。俺もその例外ではない。決して“無個性”だった訳じゃない、寧ろ“強個性”といっても過言ではない。だが、あまりにも神は俺に非情なのだろう。
「ちっ……」
路地裏にひっそりと構えるカラオケ店。その中はそこら中に付着した血によって漂う鉄の臭いと目を逸らしたくなるような光景が広がっている。まぁ、目を逸らしたくなると言ってもこれを作りだしたのは他でもない俺なのだが。
「ヤクザは健康じゃねぇから美味くねぇ。ヤクやってんじゃねぇだろうなこの屑共」
カラオケ店というのは表向き。あくまでも此処はヤクザ達の拠点である。何故俺がこんな所に来てこんな惨状を作り出したのか。答えはいたって単純。
俺の“個性”は“黒蝕竜ゴア・マガラ”になることが出来るというもの。擬人化、竜化、何でもござれ。擬人化しなくとも狂竜ウイルス撒き散らしたい放題、身体能力はそこらの異形型じゃあ比にならない。別に擬人化、竜化しても目が見えなくなるって訳じゃない。なら、何が不満なのか。それはこの体が肉を求めているからである。スーパーで売っているような肉じゃない。何故かは分からないが人間の肉ではないと満足しないのだ。馬鹿げている。
「まぁ、腹の足しにはなったな」
自分自身が転生者であるのは理解している。この世界の漫画は読んでいたし、勿論MHはやっていたさ。ゴア系モンスターの厨二心を擽られる名前である武器をコンプさせるぐらいにはやり込んだ者である。実際、ゴア・マガラの力を手に入れて歓喜しなかった訳じゃない。なのに人間の肉を喰わねば生きていけないという縛りを付けられ、躍っていた心は沈み、目は絶望しか映さなくなった。
前世の死因も分からず、転生したと思ったら生きる為に人を喰わないと生きていけない呪いをかけられ、それでも尚、生きたいと願ってしまう俺は果たして悪と言えるのか? いや、言えるのだろう。だってこの世界は理不尽なのだから。
「さて、探すか」
カラオケ店にあるはずのない拳銃を二丁程回収し、持てるだけの弾を持ち、ヤクザ同士の抗争事件に見せる為何十発か撃ってから店を出る。口に付いた血を拭き取ってからフードを深く被り、路地裏から出れば雑踏が耳に響き、ビルからの光の反射で目を細める。
────この光は俺には眩しすぎる。
俺の“個性”は表の世界には似合わない。暗く淀み歪んだ裏の世界にしか潜むことしか出来ないのだ。
《緑谷出久じゃなくて雷麒麟!? あの距離から大逆転とかありかよ!?》
テレビショップに置かれているテレビからヒーローの声が聞こえる。ああ、そういえば今日は雄英高校が体育祭をしているんだっけか。
「……は?」
チラッと見たテレビを見て驚愕した。雷麒麟と呼ばれた彼女の額からは蒼き一本の角が生えていたからだ。彼女は雷を身に纏い、笑顔で一人の男の子を見ている。いや、そんなのはどうでもいい。問題はあの蒼い一本の角と雷だ。あれはどう見ても“幻獣キリン”じゃないか。俺以外にも転生者が居ることには驚いたが、それよりも怒りがこみ上げてきた。こんなにも自分の力で“個性”で苦労しているのに、なんであの雷麒麟という奴はキリンの“個性”で彼処まで晴れ晴れしく居られるのか。
────ああ、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、ニクイ、ニクイ、ニクイ。
同じモンスターなのに、同じ古龍なのに! 俺と彼奴の何が違う、性質は違えど何もかも同じじゃないか!
「……殺してやる」
未来すら見ることを諦めてしまう程の絶望を与えて、自身の鼓膜が破れるぐらい叫び声を上げさせて、喉が潰れるくらい鳴かせて、それでも目に光が灯るなら目を切り裂いて、無残に残酷に醜く、殺してやる。それから喰ってやる、どこも残さず、存在していたことさえ思わせないくらいまで喰らいつくしてくれる。良い肉付きしてんだ……きっときっと喰ったら美味いんだろうなぁ。
それから数週間後、俺はオール・フォー・ワンと名乗る男と出会った。どうやらそいつも雷麒麟を狙っているらしい。目的が一致しているなら此奴を利用して雷麒麟を探し出してやる。
そして数ヶ月後、俺は開闢行動隊として
──さぁ……殺して喰ってやる。
3/2 17:44現在、自分のミスでこのお話が最新の話として投稿されなかったので投稿し直しました申し訳ありません。