「居た」
オールマイトを追いかけ、階段を下ろうとするがオールマイトは誰かと話をしている。出久だろうか? なら隠れた方が良いだろう。
「これだけ覚えておけアレは…いずれは貴様をも超えるヒーローにする。そうするべく……つくった仔だ」
「…何を……」
「今は下らん反抗期だが、必ず、越えるぞ……超えさせる…!」
今の話は何のことだろうか? 少なくとも出久……ワン・フォー・オールについての話ではない。オールマイトを超える為につくった? くだらない話である。少なくとも出久に害があるように思えないし放置しても問題ない。動いてお腹も空いたし、お茶子達と合流しよう。
『麒麟、我は昨日の晩にでていた牛丼とやらを食したい。お主は美味そうに食していた、美味なのだろう?』
……あったらね。あったら私の身体を使って食べてもいいわ。というかお腹空いてるのは私なのよ? 確かに私の身体使って動いてたけど、キリンはお腹空いてないでしょ。
『そのような些細なことなど気にすることはない。我は今腹がヘった。何の問題もなかろう?』
頭の中でニヤリと笑うキリンを想像し少しの苛立ちを覚えながらお茶子達と合流する。結局牛丼があったからキリンが私の身体を使って食べたし、キリンは牛丼を食べると満足して私の身体を解放したけど食べた感覚は残っておらず、お腹に食べたのがあるという不思議な感覚を覚える。気分はあまり良いものではない。
「雷さん、少しよろしいですか?」
「なに?」
「峰田さんと上鳴さんに相澤先生からの言伝で私達は午後に応援合戦をしなければならないらしいんです。衣装は私がお作り致しますので採寸させて貰えませんか?」
「……ええ、構わないわ」
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体育祭、午後の部。チアリーダーの衣装を全員で来てポンポンを持ちながら周囲を見る。……薄々思っていたが、やはりそうだったのか。これは──
《最終種目発表の前に予選落ちの皆へ朗報だ! あくまで体育祭! ちゃんとレクリエーション種目も用意してんのさ! 本番アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ……ん? アリャ?》
──峰田と上鳴の罠だ。
《どーしたA組!?》
「峰田さん、上鳴さん! 騙しましたわね!?」
八百万が声を荒げながらバカな二人を見るが向こうはサムズアップしている。
「何故そうも峰田さんの策略にハマってしまうの私…」
「アホだろアイツら…」
「まぁ、本戦まで時間空くし張りつめてもしんどいしさ…いいんじゃない!? やったろ!」
「透ちゃん、好きね」
三者三様の反応。ため息が出てくるが今更これをグチグチ言うのも仕方がないだろう。
「そうね。せっかくだからやりましょ? 少し騒いだほうが緊張も解せるだろうし」
八百万を慰めていたら話が進んでいたみたいで尾白とB組の庄田の棄権が決まり、B組の鉄哲と塩崎が替わりに入っていた。しかもクジで組を決めたのだが初戦がさっきまで慰めていた八百万……何故か辛く感じる。
「雷さん、よろしくお願い致しますわ」
「え、ええ…よろしくね。手加減はしないから全力で来てね」
「はい、勿論全力でお相手致しますわ!」
誰にも負ける気なんてさらさらないが、出久とあたったらなんか申し訳ない気がしてならない。と言っても出久は轟と戦うことになるだろうし、結果はわからない。それよりも──
「勝己、早かったわね。決勝で戦うつもりだったのだけれど」
──このボンバーマンと戦うのが決勝じゃないのは少し驚きだ。私と勝己、どっちのクジ運が低かったのだろうか?
「あぁ? んだその格好」
「峰田と上鳴に嵌められたのよ。格好は置いといて、勝己と戦うのは決勝じゃないのね」
「んなこたぁどうでも良い。テメェも決勝に来た奴もブッ殺して一位だ。やられんじゃねぇぞビリビリ女」
「ええ、やられる訳ないじゃない。そっちこそくたばらないように頑張ってね?」
「……」
何時もなら「くたばるわけねぇだろ!」とか言いながらキレてくる筈なのに勝己は黙って去っていく。集中しているのかなんなのか。予想外の行動で少しビックリしたけど、キレて言い返してこない勝己は新鮮だ。成長したような気がして笑みが零れる。
「さて、応援しましょうか」
大玉転がし、借り物競争、懐かしく思える競技を応援しながら次の種目について考える。次の種目をトーナメント戦のガチバトル。初戦は八百万の戦闘。私の雷を防ぐシートが作れるのは痛手だ。シートが焼き切れるぐらいの力で牽制、体制が崩れた所を仕留めにいく感じで良いだろう。氷はまだ使わない。初めての御披露目は勝己にするのも良いかもしれない。
「ファイトー!」
色々な