立てば石楠花、座れば牡丹、戦う姿はゴリってる!!! 作:九十九夜
「はっ」
ガキン
「せいっ」
ギャンッ
「ぜりゃああッ」
ガッ ・・・カラカラ
「・・・参りました。」
ハローみんな、俺は今絶賛剣の稽古中です。
相手は何を隠そう叔母・・・ンンッ叔父のモードレッド卿に稽古をつけてもらっています。
「よし!今日はこれくらいにしとくか。」
「ありがとうございました。」
言って、丁度正午だからと母さんに渡された弁当をモードレッド卿に手渡し、自身の分に手を付ける。
「お、サンキュー。今日のもうまそうだな。」
箸を付けて暫し咀嚼した後「そういえば・・・。」とモードレッド姐さんが漏らす様に言った。
「お前、なんで大振りな技出さねーんだ?小手先が器用なのは知ってっけど、それじゃ決定打何て打てねーぜ?」
いつ来るかと思っていた質問だった。
俺が普段から使っているのは細身の長剣で、確かに小手先の自由は聞くが決定打には欠けると言われると頷ける。
西洋の刃は日本刀の様に引いて斬るのではなく自重により押し切る。または刺し貫く事に重きを置く構造になっている。そこからすればやはりというか、心配してくれているのであろう。
しかしだ、俺にも譲れないモノがある。
「・・・だって、大振りにしたら似るんですよ。動きが、
「はあ?・・・あ。」
命のやり取りで何言ってんだとか言われるかもしれない。
だが!俺は!奴みたいには!なりたくない!!
という訳で、頑なに奴とは別の方向に鍛えていくつもりである。
・・・というか俺も顔がばれるにしろばれないにしろ奴に倣って将来的に「ゴリラ2号」とか呼ばれるのが嫌なのもあったりする。
俺はゴリラやない!!人間や!!
なんか知らんが向こうは俺との戯れは楽しいらしいが俺としては早く離れたい対象でしかない。
ギャラハッド卿はそんな俺たちから何故か自分と傍迷惑卿を投影したらしく、最近前にも増して優しくなった。
というか気にかけてくれる頻度が増えた。さすが、確かな目をお持ちである。
・・・ある種要注意人物でもあるという事でもあるが・・・。
そんなことを考えていると草陰からビュンっと何かが投擲される。
掴んだそれは投げナイフだった。
それを見たモードレッド卿は雄叫びとともにその草陰に突っ込み、見事暗殺者を伸してしまった。
かっけえ!流石姐さん!!どこぞのゴリティーン卿とは大違いだ!!
暗殺者の身ぐるみを引っぺがして、これまた暗殺者の持っていた縄でぐるぐる巻きにして転がす。
あれ?これ俺らの方が追剥みたいじゃね?
「あーっと・・・これは、たぶん毒だな。で、こっちがきっと仕込み針で・・・と。」
「ん?なんでしょう、これ。」
よく見れば髪の毛の束らしいものが入っていた。
マジもんの人毛である。少し気味が悪い。
「うえっ、なんつーもん持ってんだコイツ・・・。」
日の光に当たってきらりと光る髪の毛。
恐らく魔術用か、はたまたは現場攪乱のためのものか・・・。
どちらでも良かったが、俺はその時輝きによって見えずらくなった髪を見てふと、魔が差した。
というか、思いついた。
これ、暗殺道具に使えんじゃね?・・・と。
「いいこと思いついちゃいました。」
疑問符を浮かべるモードレッド卿をそのままに俺は手順やら耐久性やらを考えていた。
***
ひうん ひうん
クンッ スパン
「・・・やっぱり音がなあ・・・。」
あれから俺は暇なときはもっぱらこの糸の訓練に時間を使っていた。
一応糸そのものは幾度かの試行錯誤の末に何とか実用までは持って行けたのだがいかんせん音が鳴ることが目下の課題である。
いや、確かに糸遣いとしては曲絃師とか憧れるよ?でもどちらかと言えば某吸血鬼漫画の執事さんの鋼線術の方が音もそんなに出ないし好都合なんだよね・・・。
え?お前騎士じゃねえのかって?
いやうん騎士だよ?表向きはね?
だけどいざとなったら、というかそのうちこういった技能は必要になってくると思うんだよね。
それ以前に俺別に騎士じゃなくてもいいし。
これ言ったら他の連中にぶん殴られるかもしれないけど・・・俺は成り行きで騎士になったんであって、憧れて騎士になったわけじゃないから。
暗殺者兼騎士。略して暗殺騎士。あれ?そんな略されてなくね?
という訳でまあ俺は現在暗殺技能を磨いている訳である。
・・・あの身体でも使える技の一つや二つも欲しいからね。
さて、今日も楽しく外道チャレンジ!
今日はどれくらい精度上げられるかなっと。
小さな音の後にスパンスパンと木が切れた。
「そこで見てるの、だーれだ?」