立てば石楠花、座れば牡丹、戦う姿はゴリってる!!! 作:九十九夜
ガッシャガッシャガッシャ サッ
「・・・・。」
ガシャガシャガシャ サッ
「・・・・・・。」
・・・さっきから俺の後をつけてくる野郎が一匹。
その名はランスロット!!
・・・え?なんでわかるのか?
HAHAHAだってさっきから物陰から髪やらマントやらがちらちら見えてるし、何よりいつにも増してお嬢さん方がきゃあきゃあ言って俺の後方に駆けて行ってるから。
というかさっきから女の子たち振りきる度に髪やら服装やらがごちゃごちゃになっていく様が面白すぎて気付かないふりしてるんだ。
もうごちゃごちゃっていうか髪に至ってはもちゃもちゃなんだけどwww
装備もいくつか剥ぎ取られてるしwww女の子いいぞwwwもっとやれwww
・・・と、暴走するのはここら辺までとして。
「何用ですか。ランスロット卿。」
「・・・。」
返事は返ってこない。
「どうしたんですか。こないだ娼館に行くのを白い目で見られていたランスロット卿。
具合でも悪いんですか?娼館で騒ぎを起こして出禁になったランスロット卿。
大丈夫ですか?酒場で毎夜の様に町娘を口説こうと思ったら既婚者で修羅場になったランスロット卿。」
「出てこないんですか?連れ込んだ女性が実は男で」と言った辺りでまるでペガサスか何かのような速さで俺を近場の茂みに押し込んだ。いや、本物見たことないんだけどね。
「き、貴殿はいったいどこからそう言った情報をっ・・・。」というランスロット卿は息を切らしながらだらだらと冷や汗をかいて、俺の鎧をしっかと掴んでいた。
おいおい大丈夫か?必死過ぎだろ。いったい何があったんだ、女装ホモっ子と。
「はあ、まあ。噂が回ってきましたから。円卓内では既に周知の事実かと・・・。」
そういうと俯いて暗いオーラを放つランスロット卿。忙しい人だなこの人も。
「・・・まあいい。それは置いておいて、君はギャラハッド卿とはどういった・・・。」
言い終わらないうちにバシュッと何か。否、矢が俺とランスロット卿の横にあった木に突き刺さった。
めっちゃ食い込んでいる。これ、人がくらったら頭吹き飛ぶんじゃね?
馬の嘶きとともに「コンラッドおぉぉぉッ」という友の声が聞こえてきた。
あ、詰んだわコレ(ランスロット卿が)。
だってほら、この状況からすると・・・。
「紫髪の騎士みたいなおっさんが君を無理矢理草陰に連れ込んで襲ってるって聞いたんだがっ大丈夫か!?」
そう言った彼の手にはいつもの剣ではなく、医者とかが使う様な小ぶりの刃物が握られていましたとさ。
いやそれでお前何すんの?え?そいつを去勢する!?やめて!ランスロット卿のアロンダイトが失敗作()になっちゃう!!
この後必死に誤解を解こうとするランスロット卿と養豚場の豚を見るような目でランスロット卿を見るギャラハッドの姿がありましたとさ。
***
「そうか、私の息・・・いや、ギャラハッド卿を頼んだ。コンラッド卿」
君には彼も信頼をおいているようだし。と何処か安堵の笑みを浮かべたランスロット卿は言った。
いや、あんただけだよあいつに塩対応されてんの。
「あ、はい。」
それではと手を振って別れる。
そのとき、俺はどう返したんだったか
照れ臭そうに兜を弄ったんだろうか
はたまた、丁寧に礼を取ったのだったか
あまりにも遠く、穏やかな、脳裏を掠める記憶に眼の前で動揺と悲嘆の声をあげる誰かなぞ、気にならなくなっていく。
「・・・ど、やら・・・約束はっ・・・守れ、な・・・も、訳あ・・・せ、ん。ら・すろ・・・。」
済まないが、俺は貴方よりも、貴方の息子よりも、早く逝ってしまうらしい。
父上。アグラヴェイン父上。
「申し訳・・・あり、ま、せ・・・。」
後は頼みましたよ。ランスロット卿。
と、まあ、不穏な終わり方()してみる。
さて、これから先どうなるんでしょうね。