立てば石楠花、座れば牡丹、戦う姿はゴリってる!!! 作:九十九夜
これ続くかわかんないじゃん。無理やん。
消そ。ブツン。
さてやってきた召喚の夜。
しかしここで衝撃()の事実が―――!?。
たらり、と儀式を見守っていた遠坂時臣のこめかみに冷や汗が流れ落ちる。
まさか、本当にうまくいってしまうとは焚き付けた彼自身思っていなかった。
彼はあくまでも傀儡としての協力者を得るために彼女を無理矢理唆したのであって、本当にマスターになるなどとは考えていなかったのである。
もちろん普段の自分ならばそれこそ下策としてそんな案は端から却下していたのだが、今回の聖杯戦争は、これだけは何としても勝たなければと、御三家の誇りを賭けての参加だ、失敗は許されない。
しかし、此処で、あるたしかな伝手からの情報で彼は開始を目前まで控えたこの時期に知ってしまったのだ。
―――アインツベルンは純潔の誇りを捨て、魔術師殺しという
―――間桐はこの日のためにわざわざ凡俗に堕ちた落伍者を連れ戻した。
どいつもこいつも、と時臣は内心腸が煮えくり返る思いだった。
が、裏を探せば探すだけ謎が深まる。
もしや、彼らではなく、自分こそがこの戦いを軽く見ていたのではないか?と。
間桐はともかく、魔術師殺しはその名の如く相対した魔術師のそのこと如くを葬っている。
例外は無い。
ようはそうまでしてアインツベルンには聖杯を完成させなくてはならないほど必死にならなくてはならない何かがあるという事だ。
・・・もしや、もうこの聖杯戦争という儀式に限界が来ているという事ではないのだろうか。
はたまたは、既にもう技術自体が枯れていて何としてでも此度の聖杯を持ち帰り、次の趣向に使うためなのかもしれない。
そこまでの推察がそのままであったのだとしたら、確かに魔術師殺しというジョーカーに手を出したのもわからなくはない。
だからこそ、自分もなりふり構わないと決めたのだ。
そうして、彼が初めに行ったのは海外にいる愛人と連絡を取ることだった。
仕事先で出会った彼女はやはりというか優秀な魔術師の血筋の人間で、割と強気に口説き落とした記憶がある。
あれから数年。子供が出来たことを人伝に聞いてそのままだったが、人手は多いほうがいいと早速連絡した。
例え自分が脱落したとしても、いざとなったら彼女の後見人の立場からサポートし、遠坂の血が勝つように仕向ければいい。という打算の元での行動だった。
彼女を行儀見習いとして家に置き、環境に慣れさせて、急遽ではあるが手配した聖遺物を使って自身や綺礼と同じように召喚させ、遠坂が計3枠を確保しておく。出来れば三大騎士クラスが欲しいところだがことは急を要する。わがままは言っていられない。最悪、キャスター辺りが出てきたら捨て駒にするのもアリだ。
幸いというか、流石遠坂の血筋と言えばいいのか、その娘の手には令呪が出ていた。
これで準備は整った、後は聖遺物だけだと思い手あたり次第にそれの流れ着きやすいところを回っていく。
そんな中で彼がやってきたのは涼風骨董品店の前店主、四方月詠の遺品整理会だった。
涼風自体は遠坂の何代か前の当主から分けられた血筋で、時臣とは遠い親戚、もっと言えば分家と本家にあたる。
しかし、根っからの魔導の血統と、そこから外れて凡俗に混じってその才能をただ腐らせる無能。
遠坂の人間は涼風をあまり快く思ってはいなかった。もちろん時臣も、それ故か彼女の妹からは蛇蝎の如く嫌われている。
そんな良くも悪くも縁のある場所で、時臣はそれを見つけたのだ。
それは、美しい棺だった。
「コンラッドの棺」
その名の通り、かの円卓の騎士(だったとも、そうでないとも)コンラッドの納められていたとされる棺。
かの騎士はこの棺に友、ギャラハッドが賜った聖杯、またはその中身を振りかけ閉じ込めたという逸話のある、三大騎士クラスを呼ぶには最適な聖遺物であった。
中世ヨーロッパのものにしては縁取りに金が流布されていたり、何かよくわからない(鰐のような口の何か動物のようなものなど)模様がそこら中に彫り込まれていたりと少々派手派手しくはあるモノの、それくらい大切に埋葬されていたという事なのだろうと時臣は自身を無理矢理納得させた。
さて買い取ろうと行動に移そうとしたその時既に売約済みであることを聞かされたが、時臣は到底その事実を受け入れることが出来なかった。
なんせ、そう言って出てきたのは魔術の魔の字も知らない様な小娘だったからだ。
内心でうまく事が運ばないことに苛立ちつつ、遠坂時臣は提案する。
―――そこまで言うのなら、精々役に立ってもらおうじゃないか。
「お嬢さん。どうだろう。私に少し、ほんの少し間だけその棺を貸してはいただけないかね?もちろんそれなりの礼はさせてもらおう。」
***
瑩子たちが歓喜に沸いたのも一瞬であった。
何故なら―――。
「お前が、墓荒らしどもか?」
―――瑩子の首筋に、背後から見事な装飾の短剣を押し付ける者がいたからだ。
瞬間ゾワリと、此処にいる協力者全員が嫌な汗を噴き出した。
「え?・・・あ、え?」
状況の飲み込めていない瑩子はそのまま何かを当てているであろう背後の人物を見ようと首を少しずらす。
と、プツリと皮が切れ、肉が裂けて血が零れ落ちた。
それはほんのわずかなものであったが、生まれてこの方首に刃物を突き付けられたことなどない彼女。
そこでようやく突き付けられているものが刃物で、自身は殺されかかっているのだと悲鳴とともに理解した。
「我が愛しきものの墓を暴いておきながら、許しなく妾の貌を盗み見ようとは・・・この、痴れ者めっ!!」
声は年若い女のもので、その女はまるで宣誓するかのような堂々とした口ぶりで瑩子を罵倒し何かを振り上げた。
恐らく、先程の短剣であろう。
顔を青くして固まる瑩子。慌てる時臣に、呆然としている教授と明石。
「ほう!」と感心したかのように声を上げたのは観察に徹している可哀そうなヤンキーもといギルガメッシュ位である。
ふり降ろされそうになったそれを掴む手が一つ。その手はそのまま襲撃者である彼女を引き寄せる。
「お久しぶりですね。ネフェル。相も変わらず美しい人。」
首を包帯で巻き直した男の顔をまじかで見た女は瞬間顔を赤らめると、短剣を消して男に飛びついた。
「う、うむうむうむうむ。ひっ久しぶりではないかっ。ああああ会いたかったぞ!!エンタハっ。」
「はい、私も会いたかったですよ。ネフェル。」
行動とは裏腹に純真な乙女の様な照れた物言いをする女に対して男は終始穏やかに返している。
しかし、エンタハとはいったい誰か?自分たちは確か円卓の騎士()コンラッドを呼び出したのではなかったか。
というか誰だこの女。
騎士()と本人を除いた心の一致であった。
とうの二人はと言えば先程の感動の再会()の後に何事かを話し合っている。
「しかし、罪人を罰さぬというのも・・・。」やら「ですがそれでは貴女が・・・。」と言っている辺り此処にいる、正確には盗人とそれを手引きした者の処遇を話し合っているようなので薄ら寒さは消えない。
しばしの話し合いの後、どうにか決着したらしいそれに皆固唾を飲んで注目する。唐突に先程まで目深に被っていたマントを剥ぎ取って現れたのは、黒髪金眼の溌溂とした美女だった。褐色の肌に彫りの深い顔立ちから、恐らくではあるが中東系の血筋なのではなかろうか。
「ふはははははっ聞け、愚かなる盗人どもよ!!妾はバストネフェルト!!誇り高き第19王朝が王女でありそこなセテプエンプハタの妻である!!これよりこの争いを持って其方らを見定める故、精々励むがよい。」
ではなと言って霊体化した女は去っていく。
騎士()は黙って手を振るだけだ。
そんな騎士の様子に、女・・・もといバストネフェルトが完全に退場したのを確認した時臣が慌てた様子で駆け寄る。
「し、失礼するが、君はかの円卓の騎士コンラッド卿ではないのかね?」
ギルガメッシュとは違った気安さというか少し距離が近めの物言いに、別段気分を害した様子でもなく彼は口を開いた。
「そうであるともそうでないとも・・・一つだけ言わせていただくとするなら、
「何故?」
驚いたように目を見開いた彼と、間接的に棺が偽物であると知らされた明石は呆然とする。
そこで、改めて棺を見た瑩子は一周回って冷静になったところでやっぱりなと納得した。
何故なら、その棺自体はヨーロッパでよくある木製の長方形の箱型だが、その周りの装飾に使われている模様はヒエログリフと正しき死者の守護神アメミットなどといったエジプト独特の装飾が成されていた。
コレ、中東からの輸入品じゃね?と冷静になった頭で瑩子は突っ込みを入れた。
「まあ、いろいろありまして。
はっきりしない物言いとともに向けられた笑顔と続けられた言葉に時臣は顔を青くする。
その言葉を聞いて彼は「失礼する」と言ったかと思うとさっさとこの部屋を退出してしまった。
そして、コンラッド?は瑩子に改めて向き直って自己紹介を始める。
「さて、改めて。私はこの通り見てくれは騎士の格好をしていますが一応神官のようなものとでもお思い下さい。マスター。真名はセテプエンプハタ。よろしくお願いしますね。」
にこりとこれまたさわやかな笑顔で彼は笑った。
彼は正しくコンラッドではあるがコンラッドではない。
因みに首がデュラハン仕様なのはコンラッドの時に父親に切られてから聖杯を授けられたから。現在はある神様から貰った包帯で縫合している。
でも時折とれる。巻き方変えたら?
経緯とかはそのうち唐突な感じで出す・・・かも・・・?
お試し故確約はできない。
奥さん()は出すかどうか迷ったけど結局出した。
オリジナルだよ。誰だよそれ。
え?生前の奥さんについて?
奥さんの弟R氏「あれはバステトなんぞではない。バステトの皮を被ったセクメトだ。」