戦国エンブレム   作:公家麻呂

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04話 オスティア候領幕府公使館

翌日、我々はタニア領を立つことにした。

我々は旧キアラン候領を、タニア領軍の護衛を受けて通過した。

旧キアラン領は、現在オスティア候の飛び地として直轄管理されていて、旧キアラン軍がオスティア軍として治安維持をしているのだが、タニア候はその辺りもひっくるめて、話をつけていたようで、これと言った問題も無かった。

 

護衛を引き受けてくれたのは、候弟ランウォード殿であった。

ランウォード氏は候ではないが爵位は男爵で、タニア候庇護下の小領主であった。

つまり、どのみちタニア城からウォード城へ戻らなくてはならないので、自分たちが帰るついでに軽く遠征して行こうという感じらしい。

 

「ところで、清州候。ここのキアラン候の話はご存知かな?」

「確か、以前お家騒動で候弟ラングレン派と孫娘リンディス派が爵位継承を争ったとか。」

 

「えぇ、お家騒動の方はリンディス派が勝利したのですがキアラン候が亡くなられると、爵位は継承せずに故郷のサカへ帰っていったそうです。当時のリンディス派の家臣たちは優秀な人物も多く、彼女自身も聡明な人物だっただけに、爵位を継承しなかったのはもったいない話でした。」

 

「ほぅ、我が国にも地位や名声に興味を持たない人物は、たまにいます。私の知る者たちより、どちらかと言えば、サカの遊牧民族の血が貴族の堅苦しさを嫌ったのでしょうな。」

「貴国の地位や名声に拘らない人物とは?」

「代表的なのは宗教者ですな。後は茶人や歌人と言った文化人でしょうか。武芸者は、なんだかんだで我々のような者が囲い込みますので、これには入らないでしょう。」

 

 

ランウォード殿と雑談をしているうちにトスカナ領に着いた。

トスカナ候領でランウォード殿たちの警護が終了する。

オスティア候はタニアの上司に形式上あたるので形式を通せば。度量を示して通過許可ぐらいは下りるそうだが、トスカナは同列なので警戒さえたりなんだでタニア領軍の通過の許可は下りなかったそうだ。

ここで、ランウォード殿たちタニア領軍と別れることになる。

また、トスカナ候領では何もなかった。本当に何もなかったので割愛させてもらう。

 

そして、トスカナ候領を出てトリア候領に入ることになる。

トリア候オルンはオスティア候ヘクトルと従兄弟にあたり、いわゆる一門だ。

我が国も一門は国内の要地か、本領の近くに配されるので、そういうことだろう。

 

そして、恒例ともなってきた侯爵との対談である。

 

「近頃は、ベルンの様子がおかしいとのことでな。従兄上には軍備の強化を言われているのだ。貴国から武器を輸入したいが、相場はいかほどか?」

 

トリア候オルン殿は我が国から武器を輸入することに前向きの様だ。

折角なので、売り込んでおくか。

確か、火打ち式は絶対輸出しないと兄上が言っていたな。

火縄式は非推奨って感じで、交渉権は一応持ってる。

 

「…そうですな。火縄銃は1丁金貨5000が、妥当ですな。日本刀は金貨1400と言ったところでしょうか。」

 

オルンは後ろに控えさせていた財務担当者とこそこそ話し合う。

予想外に高くて引いているな。

銃は数揃えるの無理だろうな。もともと、注目されてないし…。

貴族のおもちゃに1丁と日本刀十数本と言ったところか?

 

「原材料の玉鋼で剣や槍を作るという手もあります。」

 

まぁ、我が国の鍛冶師とエレブの鍛冶師じゃ、玉鋼の扱いに練度の違いがありそうなものだが黙っておこう。

 

「うぅむ…そうなるか。支払いは物ではダメか?」

「ものにもよりますが…。」

 

「赤の宝玉10つと小金塊が2つでどうだ?」

「では、金貨30000枚と等価値と考えましょう。」

 

「もうすこし、何とかならんのか?」

「では、オスティア候の従兄弟でいらっしゃるオルン様ですので、色を付けて金貨35000で考えましょう。」

 

オスティア候の一門だからなぁ…多少色付けて、よくしておいた方が得か。

 

「で、何が入用で?」

「うむ、清州候が仰る様に、玉鋼で従来武器を作ろうかと思っている。我が領としては銃や倭刀は少々割高なのでな。」

 

その方向で収まったか。妥当なところか?

 

「そうですか。詳細の方は光秀に任せているので、後で文官を引き合わせて下さい。」

「あぁ、わかった。」

 

玉鋼製武器はエレブの主武器の鉄製武器や鋼製武器よりも高品質だが、一番の供給先であるリキアでもその充足率は高くない、と言うよりも低い。

 

リキア諸侯の常備軍が玉鋼の武器を配備中と言った程度だ。

それでも多少値の張る玉鋼を購入しているのは、ベルンの軍拡によるところが大きい。

 

通常ならリキアにベルン、ついでにエトルリアにも分け隔てなく売るのだが、ベルンと言う軍事大国がエレブを統一した場合。さらに領土を拡大するために我が国とも戦争する可能性がある。

 

だから、ベルンには武器の輸出はしない方針だ。

だが、売れ行きはあまり良くない。リキアは経済的な理由で、エトルリアはやる気の問題、つまりベルンを仮想敵国として認識していない。むしろ内側の問題があるのだろう。

オスティア候一門のトリア候オルンですら、大量購入ができない時点で日本刀や銃はもちろん玉鋼が高価であるかが解る。

それでも、買いたい人間がいる。少なくても日本製武器の品質は他国より頭二つほど抜きんでているということだ。

 

まあ、そんなことは置いておいてトリア領を抜ければリキアの中心たるオスティア候領だ。

トリア候オルンとの交渉が終わり、トリア領を出発する。

この辺りまでくれば、山賊が現れることはほぼない。

特に名乗りを上げてくるような、ヤバそうな奴らはいない。

無論、海賊もいない。海ないし…、でも極々稀に川とか池みたいなところに自称海賊がいることもあるが、海にいない時点で海賊を名乗るのはどうかと思う。

 

そして、オスティア候領オスティア。リキアの中心地、実質の首都だ。

街壁に囲まれた大きな街だ。

 

一般的な住居もたくさんあるが、商店もたくさんある。

この、街を攻め落とすとなると大変な労力を要しそうだ。

まず、街を覆う外壁。そして、街の中にあるオスティア城。城自体も城壁に囲まれているし、城内もそれなりに複雑だ。

 

オスティアの町の商店で武器以外の者を売ったり買ったりした。

オスティア候にアポを取って後日面会の約束をとって、初日は街の中を観光することにと言っても、特に印象深い人物に会ったわけじゃないので、大した内容はない。

 

「馬ですかい?駄馬なら銀貨2・30でいいですよ?ちゃんとしたのなら金貨払いじゃないと売れませんぜ。」

「どうせ荷運び用ですし駄馬でいいですか?義冬様?」

 

馬屋とモブの文官が交渉し、津川義冬は最終的な判断を下すだけだ。

 

「うむ。駄馬で構わん5頭頂こう。」

 

「では、駄馬を5頭用立ててください。」

「へい!かしこまりました!」

 

 

 

 

「イリア傭兵の雇用相場は、大体そんなものですか。」

 

光秀は宿屋に滞在していたイリアの傭兵隊長から、雇用相場を聞き出しいろいろと考える。

 

「では、天馬騎士の相場は…?………それくらいが相場ですか。」

「よければ、書面で書いてやろうか?」

 

「いいのか?…店主、この者に酒を支払いはこっちでやる。」

「へい!ただいま!」

「で、傭兵隊長殿。遠国への長期雇用の相場なのだが…」

光秀はイリアより傭兵の雇い入れを検討していた。

 

 

土方はよくわからん。使節団の兵の訓練とか、適当な店で適当にやっているだろう。

あいつ、ほぼモブだもん。

 

そして、私。織田信雄であるが、今回はリキアの中心、実質首都のオスティアであるわけで公使館も一応ある。

 

織田幕府の駐在公使阿閉貞大のところで酒を飲んで過ごしていた。

 

「しっかし、最近のリキアは父が生きていたころに比べると弱体化してるね。」

 

阿閉貞大の父、貞征は先代の公使だ。オスティアの駐在公使は親子二代でやっている。

15年前の騒ぎを生で知っている彼には、現状が良くないことを実感しているのだろう。

 

「あー、やはり思うところがあるわけだ。」

「それはもう、大体うやむやにはなってるけどキアランの継承問題やラウスの騒乱もどき、あと眉唾だと思うけど黒い牙が暗躍してたとか。色々、リキア弱体化の要因が多すぎるよ。」

「たしか、ここ20年くらいで3家ぐらいつぶれてたな。え~と、キアラン、サンタクルス、コンウォルだったか。」

「そうそう。でもコンウォルは金銭問題だったな。」

「3つも潰れたのか。その3つはオスティア候領に組み込まれた。オスティア候の中央集権化が進み、残った候は潜在的に警戒し、一枚岩でなくなった。そこへベルンか…。大丈夫なんだろうかこの国?」

「まぁ、ベルンと戦いになったらいくらかは確実に食われるでしょうな。オスティア候を中心に軍備を強化しているようですが、軍拡中のベルンに対抗できるものかと言われれば。無理と言えますな。」

「うぅむ、幕府としては面白くない話だ。」

「そうでしょうな。」

「我が国にとってはベルンの現王ゼフィールも、先王デスモンドも厄介には変わりなかったが、現王ゼフィール…兄上の予想以上に難敵やもしれん。」

 

 

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