Beyond the lost.   作:浪速の風来坊

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資料としてOVAなどを見直したりしていました。
文言や言い回しなども訂正を入れています。
間隔が空きまくって申し訳ありません。
ニューマシン構想などは固まっているので、
舞台設定を決められれば進めていけそうです。


13話 究明 -後編-

2025年12月6日

 

「なるほどねぇ。まぁ想像はしてたが、ハヤトが単なるヘマで死ぬこたぁそりゃねぇわな。にしてもイレギュラーに次ぐイレギュラーか、ツいてねぇな」

「加賀はもう分かってたみたいな口ぶりなんだね」

「あったりめぇだ。フィルはそこまで詳しくは知らんと思うが俺とハヤトの関係はそうチャチなもんじゃねぇんだよ」

「…」

 

グレイとフィルがメカニックをしているファクトリーに加賀はこの日訪れていた。加賀らしいというか、この記者会見のことを知ったのがフィルに会ってからだったのはお約束である。

 

「そういや、なんでここに来たんだ?」

「盟友に会いに来ちゃいけねぇってのかよ、グレイ」

「お前さんが絡むとなんだかキナ臭さを感じてな」

「そんなに危険な話じゃねーよ、安心しな。昔の俺とは違うんだぜ」

「どうだかねぇ。で、用件は?」

「ちーっと真面目な話になるんだがよ、…」

 

加賀とグレイ達のレースでの付き合いは加賀のサイバー引退と共に一時途絶えていたが、ここからまた歯車は動き出すのだった。

 

 

「何か思うところでもあって?アスラーダ」

「…」

「ずっと黙りこくっちゃって、変な子ね」

「どうしても、ハヤトを助けられなかった。使える全ての機能を同時に開放しても、間に合わなかった」

「…あなたには、分かっていたのね」

「私は、悲しい」

「みんな、気持ちは同じよ。だからこそ、これからできることを考えましょう」

「…」

「とりあえず、あなたにこれをインストールして適応してみるわね」

 

「…なんだか、霧がかかったようで居心地が悪い」

「やはりそう感じるのね。制限枠に対してそこを遮断するシステムを組んでみたのだけど」

「嬉しい気持ちにはならない」

「でしょうねぇ。困ったものだわ」

 

新マシン開発もなかなか一筋縄ではいかないことが窺い知れる一幕である。のち、試行錯誤の末にクレア・フォートランはアスラーダから一部抽出した機能を複製して新しいサイバーシステムへと埋め込むことで、新マシンの脳とも言えるサイバーシステムを完成させることとなる。それはオフシーズンテストが開始される僅か数日前、ギリギリでの出来事になるのだった。

 

 

「不運、だな… レースの世界だけに仕方がないのかもしれないが、ハヤトの身にそれが起きてほしくはなかった」

「左様でございます、おぼっちゃま」

「それはそれとして受け入れざるを得ない、か。

 

ああそうだ。リント、スゴウから発表されるアスラーダに関する情報は無論収集し、その上で得られたフィードバックからエピメテウスに載せられる部分は載せるようエンジニアのケツを叩いておいてくれ。あまりテストまでに時間もない、頼むぞ」

「承知しました、オーナー」

「凡そどんなものかはあの男から聞かされていたが、その詳細を知れるのであれば打てる手として利用はしたいからな」

 

ランドルは一ドライバーとして悲しみを想起する間も与えられず、チームオーナーとして、またエースドライバーとして身を振ることを余儀なくされた。彼のプロ意識があってこそそれは成立することが出来たと言っていい。ユニオンの新マシンも着々と完成への途上にあることが窺えた。

 

 

2025年12月7日

 

「あの会見の翌日に表彰式なんて組まれてもな…」

 

新条が複雑な笑みと共に表彰されるのもさもありなんといったところだろう。今季はドライバーズ・コンストラクターズの両タイトルを圧倒的な差で獲得するには至ったが、今回もまた世間の一部ではライバルの離脱によって転がってきたという、初めてチャンピオンを獲得した時と同じ見方を向けられ、それが少なからず新条本人の耳にも入ってしまっていることも影響していたかもしれない。

 

そして同時に風見ハヤトという不世出のドライバーともう永久に直接対決出来ないことが、彼の心に小さな影を落としていた。世間の意見を真っ向から覆す機会が、もう二度と訪れないが故である。

 

「それでも、走り続けるしかないんだよな、トップを。アイツがずっとそうしていたように」

 

来季に向け、アオイもマイナーアップデート主体ではあるが、ニューマシン攻勢を仕掛けてくる他チームに対して迎撃する準備を整えつつあった。専門家もしばらくはアオイ一強が続くと見ており、衆目から最も大きな期待が寄せられているのは確かである。

 

 

「菅生、この形の決着でよかったと思うか?」

「最善に近いとは言えるだろうな。アスラーダの情報が開示されたのも仕方がない、むしろ俺たちの肩の荷が降りたって印象すらあるな」

「まぁそれはあるかもしれんな。それにしても、風見のことは改めて不幸としか言いようがないな。チーム側に責任が無かったことは幸いなのかもしれんがね」

「もし仮に自分の身に降りかかっていたとして、違う結末を導くことは難しかったと素直に思う。複雑な気持ちはまだ残っているが、スゴウの来季のために力を注がんとな」

「ドライバーとして全力は尽くすぞ、菅生」

「ああ、期待している」

「ニューマシンは年明けになる形か?」

「クレアが頑張ってはいるが、完成にはもう少し時間を要しそうだ。ブーツホルツたちには迷惑をかける」

「いや、戦闘力のために待つのは仕方なかろうよ。私はもう慣れているし、理解してもいるから問題ない。レオンを始め若いやつらには私からフォローを入れといてやる」

「それは助かる」

「ではまたな」

 

随分長い付き合いになった監督と1stドライバー。やるべきことは互いに見えていて、無駄な会話を必要としない空間を共有していたのだった。

 

 

こうして2025年シーズンが文字通り終了した。この年に起きた最大にして最悪の悲劇に対する清算が済んだのだと、人々は判断したためである。人はいつまでも感傷に浸ってはいられない。特に現場に近しいところから、意識は来るべき次のシーズンへ注力する方向へ向き始めていた。

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