ふざけるなバカヤロウ!
「ふざけるなバカヤロウ!」
ボロボロの廃墟。確かゲットーと呼ばれていた場所で少女が絶叫していた。あきらかに治安が悪そうな場所での絶叫は人目を集め、自分が危険になる行為だが現在の状況では意味はない。
(なんでこんな修羅場なんだよぉ!)
真っ白のショートヘアをなびかせてその場で隠れている少女。なぜこのようになったかはしっかりと説明しなければならないだろう。
それは少し前のことだ。
ーーーー
「って感じでそれがだいたいのあらすじだな」
「ほぉ…」
俺、こと佐脇薫は昔からの馴染みだった親友に連れられ映画館に足を運んでいた。
親友の熱烈な薦めにより今回見ることとなった映画は《コードギアス反逆のルルーシュ》と言うやつだ。軽く説明すれば主人公がヒーローではなく悪の親玉という変化球系のアニメ…らしい。あらすじは先程聞いたが寝ればすぐ忘れてしまうだろう。
「てことで時間だ。いくぞ!」
「あぁ…」
現在、全く興味が湧かないのだが百聞は一見にしかず。思ったより面白いかもしれない、そう思いながら映画が始まるのだった。
ーー
うん、とても面白かった。キャラの掘り下げは映画だからカットされていただろうが凄く面白かった。特にカレン、ワンコみたいで可愛いわドストライクだわ。
「なぁ、俺の言ってることは間違いないだろ?」
「今回は認めよう。凄く面白かった」
映画が終わり照明が一斉に点灯する。一瞬のホワイトアウトの後、目を開けると視界に広がったていたのは廃墟でした。
「はぁ?」
あれ、なんか声がおかしいぞ。美しい女性の声が聞こえるんだが…。
「……おぉ、ぱい」
近くにあった粉々の鏡を覗き込むとそこには美しい真っ白な少女がいた。首振り、手を振り、目玉を回す。
はい、俺です。悲しいかな貧相な息子と突然のお別れを果たし夢と希望の塊が二つ登場した。
…ちょっと待って確認します。ありませんね、手遅れですわ。
生まれ変わるなら女がいいって思ってたけどなんか嬉しくねぇ…。
「転生?転性か…。神様は?トラックは?ドッキリって言うのもワンチャン?」
辺りを見渡すが完全な廃墟街。絶対セットとかじゃないなこれは、せめてトラックに轢かれたなりなんかで死んだならすぐ分かるのになんでホワイトアウトで転生してんの? そんなスナック感覚で飛ばさないでもらえます?しんちゃんの映画かよ!?
ヒューーン
「ヒューン?」
なにか遠くから音がすると同時に廃墟が爆発、瓦礫のシャワーが襲ってくる。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
尻餅ついて急いで四つん這いん、四本の手足で台所の人気者、黒光りティGさんの如く逃げる。今思い出したけど俺、今女なんだよね、絵面最悪だわ。
手足、最悪ですわ。擦り傷パラダイスですわ。
「なにごと!?」
物陰からよく見れば所々から煙や炎が上がってる。そしてその煙を突き破って姿を表したのは紫色のロボット名は《サザーランド》。
サザーランドは縦横無尽に走り回り気晴らしと言わんばかりにアサルトライフルを撃ちまくっている。
「はい決定。映画のくだりから分かってたけどコードギアスです。ありがとうございます!」
映画の冒頭で見たよ、似たようなシーン。あれでしょ…シンジュク事変!怒りで肩がふるえているけどもう知らねぇ。
映画を見た限り、主人公のルルーシュが決起する切っ掛けになったやつだよね。
ならどうする?
自らも戦線に参加して共にヒャッハー!→それはない(アズミ感)
ルルーシュじゃたよりねぇ、俺がいくぜ!→よぉし!誰かダイナマイト持ってこい、口に突っ込んで火を付けてやる
ひたすら息を潜め、事態収集を待つ→それだぁ!(カバさんチーム感)
はぁ、夢小説みたいに介入してこれから死ぬキャラたちを助けろだとぉ?てめぇ、頭沸いてるのか!人間が一人、加わるだけで運命変わったら苦労しねぇんだよ!(誰も言ってない)
ってか死ぬキャラとか知らねぇし!俺が知る限りヴィレッタが金髪にぶち抜かれてシャーリーパピーが死んだことぐらいしか知らねぇし!
とにかく、サザーランドに見つからないように影から影に移動して建物の中に逃げよう。出る杭は打たれる、つまり出ない杭は打たれない!
ーー
「ふざけるなバカヤロウ!」
そして今に至る。
結構時間経ったけど現れないんですゼロ様が!ルルーシュ様が!アレなのか?お前がルルーシュになるんだよか?ふっざけんなよ!
「やってられるかー!」
逃げよう、俺は奇跡を待ってる方の一般人だ!
俺が身を潜めていた建物の二階の窓の外の真横にハッチ開きっぱなしのサザーランドさんが着けてあった。奇跡ですね、奇跡は待ってたら起きるんですよ。
これに乗って逃げようか。鍵もつけっぱなしだし、割れた窓の破片で太もも切ったけど我慢して乗り込む。パイロットはいないようだな。
「えっと確か。オレンジのレバー引いたら閉まるよな?」
上手く閉まった。よっしゃ、前進じゃあぁ!なんか上手く前進したサザーランド。でも全速力で、すると建物の影から出てきたサザーランドさんと大激突、思いっきり頭を打ちました。
その際にボタン色々と押しちゃったけど変なことなってないよね?
「救世主だ!」
「ついに神の御使いが現れた!」
あ、第一村人発見。ってか頭から血が流れてて前が見えない。座席の下に包帯あったから全部巻いておこう、ハサミないし。なんとか血が止まったので一回降りて話をしたい。
どうやってしゃがむの?しゃがもうと四苦八苦してる間に発見した老齢の方々が叫んでいるが気にしない。今こっちは忙しいんです!勝手に前進したり後退したり、挙げ句の果てにはライフル撃っちゃうしで滅茶苦茶。
俺ですか?レバーしか見てませんよ!
不恰好だけどなんとかしゃがめた俺はハッチを開けてその方々の元に降り立つ。後ろでサザーランドぶっ倒れてるけど気にしない。
「助けてください。ブリタニア軍は私たちを憂さ晴らしのために殺しているんです!」
「このままじゃ私たちも人狩りで殺されてしまう!」
「……」
なんかやけに高かったテンションが鳴りを潜め状況を理解した俺は吐きそうになる。後ろのお婆ちゃんが抱えているのは血まみれの子供。なんて惨い…。やべ、吐きそう…。
「うぷ…」
「ありがとうございます!」
なに、この方々。俺のゲロ見て楽しいの?あ、俺美少女だったわ。綺麗な女の子はなにしても良いってほんとなのね。
「レジスタンスがまだ戦っています!助けてあげてください!」
「……」
そう言って無線機渡してどっか行こうとする老人たち。ちょっと待てよ!
「お姉ちゃん…助けて……」
「……今回だけだ」
断れないよこの状況、子供盾にするとかマジあり得ないんですけど。
「見よう見まねでやってみるか…」
本当に今回だけね。全滅しても知らないからね!
ーー
まぁ、レーダーらしきものには敵の位置がはっきりしてるし。さっき、映像どおりサザーランド満載してる電車あったから走らせておいたけど。
「神様、俺を飛ばしたのヤベッて思ってるなら助けて!」
さっき渡された無線から男女の声が入り乱れている。あれだよね、カレンのグループだよね。確か扇さんがリーダーやってる。
「おい、このグループのリーダーは誰だ?」
「なに、誰だお前?どうしてこの番号を知っている?」
「誰でもいい。勝ちたいのなら私に従え、そうすれば後悔はしない」
「…分かった」
頭の中のルルーシュ像を壊さないように話してみる。すると向こうも切羽詰まっているようだ。渋々、了承する。
「指定座標に集まれ、そこにプレゼントを用意してある」
さぁ、始めようか。命がけのゲームってやつを(ヤケクソ)