「白蛇さま。私は貴方に尽くします。すべてを捧げる所存です!」
「……」
正直、桐原と白蛇の間で何が起きたかは分からない。だが結果的には彼女は他のレジスタンスグループより高位な関係をキョウトと結んだ。
「白蛇さま。これからどうしますか?」
「そうだな、まずはブリタニア人の内通者が欲しいところだな」
「内通者ですか?」
確かにそうだ。その考えに対して伊丹も全面的に同意する。だがそれはかなり難しい。特にこちらが日本人ならばそれだけで向こうを警戒させてしまうからだ。
「ブリタニアをよく思っていない。関心のない人間がいれば良いんだが…」
「我々から主義者を見つけ出すのは難解です。なにせ我々日本人はその存在だけで警戒されます」
「まぁ、当てはある」
「本当ですか?」
ブリタニア人の当てがあると言うことは租界に彼女は侵入でき軍からの目を気にすることなく動けるだけのコネがあるということだ。
(どれだけの根回しをしてきたんだこの方は…)
「お前たちにも動いてもらうかもしれない。動けるように準備をさせておけ。それとしっかりと顔合わせもしたい」
「分かりました。主要なメンバーのみになりますが集まれるように手配します。連絡手段はどうしますか?」
「あとで手配する」
「はい」
今までは組織の維持だけを目的として来た行動だったが彼女に意見を聞くだけで今までにない速度で物事が決まっていく。
(これが本当のリーダーというものなのか)
そうこうしているうちに桐原公に指定された部屋に到着する。
「私はここで待機します」
「頼む」
「はい」
今までグループの長として振る舞ってきた伊丹だが今までにない充実感に溢れていた。個人に対してこれほどまでに尽くしたい、貢献したいと思えるのは初めてだ。圧倒的な戦略的手腕、観察眼、どれをとっても一流だ。
「そうか…これがカリスマというものなのだな」
ーー
「待っておったぞ…」
「桐原公…」
桐原は自分専用の客間として使っている部屋に白蛇を招き入れた。本来ならこんな仮面の人物など入れないのだが彼女は特例だ。
白蛇こと薫は先程の態度とはうって変わって敬意を感じる態度に少々、驚きながらも桐原は態度を変えない。
「どうだ、この部屋は?」
「どこか…落ち着きます」
「そうか…ここは昔のわしの邸宅の部屋を模した部屋でなお主にも見覚えがあるかもしれんの」
幼き頃の薫。まだ無垢な少女だった彼女は遠縁であったが縁者であった。数えるほどしか招いてはないが彼女も日本時の自身の邸宅を知っている筈だ。
「俺の過去を…知っているのですか?」
「あぁ…わしも少ししか知らぬがな」
彼女の態度に少々の疑問が残る。彼女の態度は知られたくない過去を隠そうとしているより。その過去を知りたがっているような態度だった。
「俺には過去はありません。すべて無くした、だから貴方が知っている佐脇薫はもういません…」
「そうか…では新たな薫。顔を見せてはくれぬか?」
いや、彼女は過去を棄てたのか。彼女の過去は決して幸福なものではなかった。そうでなければこれほど強く記憶に残っていないだろう。言い方は悪いが縁者は沢山いるのだ。
彼女は静かに仮面を取る。その顔を見た瞬間、桐原は思わず唾を飲んでしまった。
「お主…本当に変わったな…」
「別人ですからね…」
別人、確かにその表現の方が正しいかもしれない。仮面の下から現れたのは日本人形のような生気を失った顔。なにも知らない者が見れば恐怖するようなほどの無表情であった。
「そうか…」
今日まで彼女の所在など知りもしなかった。どれほどの理不尽が彼女に襲いかかってきたなど想像に容易い。
「ワシはお主に最大限の助力をするつもりだ。お主が奪ってきたサザーランド。我々の方で改良した機がある、それを託そう」
「いいんですか?」
「お主はお主が正しいと思った道を行け。それがワシらを助けることになる」
「…ありがとうございます」
「他の者にも話を通しておく。顔を出してくれると便宜を図れる」
「分かりました…」
今まで放っておきながら身勝手なのはよく分かっているが。彼女は放置すれば勝手に崩壊してしまう。そんな確信が桐原の中には産まれていた。そんな彼女が殺し合いを始めるのだ。観察していないと気が気ではなかった。
(あの子を象徴として祭り上げなければならんのか)
自身の無力さを感じた桐原は誰もいなくなった部屋でほんの僅かだけ表情を強ばらせるのだった。
ーーーー
どうも皆様。カヴァリル卿の
(あの時は本当に楽しかったですね)
ドラ息子とクソ親父が文字通りボコボコにされる姿は控えめに言っても最高でした。ミレイ・アッシュフォード様を助け出す姿は我々の憧れそのものでした。
ジェシカはいつも通りの買い物コースで邸宅に戻るルートを通っているとそこには先程まで考えていた人物がベンチで座っていた。これは声をかけなければならない、一種の使命感のようなものに駆り立てられ話しかける。
「あら、貴方さまは?」
「あ、貴方は!」
向こうも想定外だったようで。こちらに気づくと反応してくれる。
「はい、ジェシカ・フレヤンスです。あの時のカオルさまは惚れてしまいそうでした」
「いや、俺も頭に来ていたから…。みっともないところを見られた」
「ご友人を助ける所なんて白馬の王子のようでした」
「いえ…」
先程まで考えてきたことを告げると少し恥ずかしかったのか口元を隠す。表情からは分からない、仕草からの判断だが照れてくれていると思う。
「フレヤンスさん」
「ジェシカで」
こんな反応もしてくれるのかと思っていたジェシカは急に近づいてきた薫に反応できずに接近を許してしまう。まぁ、気づいていても止めなかったが。
「ジェシカ。貴方は救われたくないですか?」
「え?」
小さな話し声。囁くような彼女の言葉を受けたジェシカは脳髄を溶かされそうなほどの感覚を与えられた。こんな声で心に閉じ込めていた願望を言い当てられる。彼女は驚きを含みながらも一瞬で薫の中に引き込まれた。
「貴方の仲間も含めて俺に救われてみる気はないですか?」
「良いのですか?」
この方は全て知っている。自身が叶わないと思って捨てた願望を、ジェシカは薫に全てを見透かされているような感覚に陥っていた。
「その為にはあなた方の協力が不可欠です。アイツなら不正の証拠ぐらいたくさん出てくるでしょう?」
「それをどうするのですか?」
「知る必要が?その後は我々が君たちを保護しよう」
「知る?我々?」
彼女の話術と囁くような声で完全に支配下に置かれたジェシカはこの瞬間、半ば思考停止した人形のようになっていた。
「えぇ、でもそれをすれば貴女方は二度と陽の目を見ることはないでしょうね」
「貴方は…いったい…」
もとより陽の目など見ていない。戻ろうとも思っていない。ならこちらにデメリットなど皆無なのだ。彼女なら現状を打破してくれるそれだけの確信が彼女の中には溢れていた。
「分かりました全ての資料をお渡しすれば良いのですね」
「えぇ、信頼しますよ」
「お任せください」
断る理由など皆無。なら従うのが道理だと言うものだ。彼女の口元が離れると正気を取り戻した彼女は問う。
「私は貴方をなんとお呼びすれば?」
「そちらに任せますよ」
実に端的に告げられた言葉。あの言葉には薫という名で呼ぶなと言う意味が込められているのだろう。ジェシカは早まる鼓動を感じながらも吉報を仲間に伝えるために帰路につくのだった。
薫の隠れステータス
カリスマ A+
ルルーシュ EX
藤堂 A