「では今週末には集まれるな」
「はい、なんとかなると思います」
アッシュフォード学園の校舎屋上。出入り口から離れた場所で薫は携帯を耳に着けて話していた。
「それまでに出来るだけ初の作戦に関する資料は用意しておく。ナイトメアは使う予定はない。そこまで派手にするつもりはないからな」
「了解しました」
他人名義の携帯を手にした薫はその番号を関係者たちに送り。連絡体制を整えると自身が考えていた作戦について色々と詰めていた。
伊丹たちとの顔合わせもまだ済ませていない。その時にはある程度の作戦内容は決めておきたいところだ。するとジェシカから連絡が来る。
「ご主人様、ご無沙汰しておりました」
「その呼び名は面映ゆいな」
彼女は自分のことをご主人様と呼ぶ。高圧的なキャラを作ってるとはいえ内心、恥ずかしいことこの上ない。
「失礼しました。指定されておりました資料の半分は確保いたしました。例の駅のロッカーにしまってあります」
「邸宅の地図は正確か?」
「はい、各員が目を盗んでその目で確認いたしました。例のルートは使用可能です」
「わかった。君たちは優秀だな」
「お褒め頂き感謝いたします」
結果だけ言えばジェシカはカヴァリル卿配下のメイド全員を仲間に入れるとこちらに全面的な協力を約束してくれた。というより、同じ番号で代わる代わるのメイドたちが連絡を寄越してくる。向こうにバレないようにする偽装工作も兼ねてるだろうがテロメンバーよりこっちの方が先に名前やらを覚えてしまった。
「そちらの人数は6人でいいのか?他に一緒に逃がしたいと言う奴は居るか?」
「はい、少々」「性別と身体情報などをリストに書きまとめておいてくれ」
「はい、いつまでに?」
「今週末までには」
「即刻、リストアップします」
「分かった。頼む」
一通りの電話を終えて一息つく薫。これからは昼と夜の顔を分けて使わなきゃならない。カレンもルルーシュも大変だっただろうな。
「はぁ…」
「こんなところでどうしたの?カオルちゃん!」
「会長…」
「まさか彼氏との電話だった?ごめんね」
「いえ、彼氏なんていませんから」
背後から抱きついてくるミレイを無抵抗で受け入れる。あのとき以来、こう言ったスキンシップが急増した。向こうの中で自分がちょっと上のランクの友達に認定されたのだろう。
「シャーリーは?」
「中庭で合流します。シャーリー、今日は弁当を忘れてきたみたいで」
現在の時間は昼休み。まだ始まったばかりなので下を見れば多くの生徒がそれぞれの目的地に向かって動いている。
「私も混ぜて!」
「構いませんが…会長はいいんですか?」
最近はシャーリーと会長の三人でご飯を食べている。と言うより会長は会長で友達と食べないのか。
「会長って言わなくてもいいわ。ミレイでいいわよ、私たち親友でしょ!」
「それは嬉しいですね会長」
「もぉー。カオルのいけず」
「そのうち慣れるんで我慢してください」
まぁ、会長とご飯を食べるとなると喜んでリヴァルも参戦してくるのだが。だいぶ原作メンバーが周囲に集まってきた気がする。
「ニーナも来ますか?」
「もちろん」
ーー
「全く、相変わらずの男料理ね」
「好きなものを入れたらこうなるんですよ」
中庭にて集まったミレイたちは談笑しながらご飯を食べる。みんなの弁当は女の子らしい色鮮やかな弁当に対してこっちの弁当は茶色と少しの緑という二色弁当。
ちょっと高かったが買った味噌で炒めた肉とレタスを少々。これで白米があれば言うことない。
「よくそんなに食べて太らないわよね」
「この前、こっちが胸焼けするほどケーキ食べに行ったのに太らないのはずるいわよねぇ」
「え、ミレイちゃん。ヴィオネットさんと食べに行ったの?」
「まぁ、時々ね。週一のペースでケーキ食べてるわよこの子」
ミレイの言葉に一番の反応を見せたのはニーナ。なぜか知らないが彼女はミレイの事に関すると過剰な反応を見せる。だからこそ二人でたまに遊んでいることを知られたくなかったのだが。
「そうなんだ…」
「……」
めっちゃ睨まれてるんすけど。ミレイは気づいてないの?完全に目の敵にされてるんですけど。
「よくそんなにお金があるよね」
「いいバイトを見つけたからなそれで俺はだいぶ金持ちになった」
賭けチェスも現在進行中。リヴァルのバイクで俺がサイドカー、ルルーシュがリヴァルの後ろで移動して色々と代打ちやらしてる。そのお陰で財布が潤いまくって止まらない。学生が使う金額を優に越える金額が動いているから当然なのだろうが。
「危ないことしてないわよね?」
「大丈夫だ、そんなことして稼ぐほど困ってないよ」
「んな訳ないじゃんだって…」
余計なことを言いそうなリヴァルの口に特大ハンバーグをねじ込み黙らせる。眼でしゃべるなと脅せばリヴァルは全力で頷く。
「…そうだよね」
シャーリー、なんだかんだ勘がいいな。既に怪しまれてるんだが…なにかの拍子にポロッと言ったら怒られるだけで済むだろうか。
「そうよね、なにもやましいことはしてないわよねぇ」
「ハイ、ソウデスネ…」
「むむ、やっぱり怪しい」
おいこら。シャーリーセンサーが反応したじゃないかミレイ!ってか知ってんのかよ、流石は会長だな、何でも知ってるのかよ。
「勘弁してくれよミレイ…」
ほんの小さな呟き。悪態の意味合いの方が強かったのだ呟く程度に抑えたのだが。
「むむ、ならその美味しそうな肉炒めを貰おうかな」
「聞いてたのかよ…」
「その調子でマイハニーと読んでくれて構わんよ」
「お黙りください」
「あ…美味しい」
これ以上、ニーナのヘイトを溜めたくないので頼まれていた豚の生姜焼を口に突っ込み黙らせる。
あれ、これってまさかの間接…。なんて呟いてたリヴァルの頭をはたく。
会長と関わってからというもの楽しくはなったが慣れてくると少し困ってくる。なんとか彼女を意図的に大人しくさせる方法はないものか。
仲良く談笑をしているとポケットの中の携帯が鳴る。しかも裏の方の携帯がだ。忙しいからかけてくるなとは言ってなかったので仕方ないがどうしたものか。
「席を外します」
「最近、よく電話が来るわね」
生姜焼を食べ終えたミレイが画面を覗き込んでくるが阻止。
「大人しくしてろミレイ」
流石に見られると不味いのでちょっと強めの口調で釘を刺す。誰にも聞こえないように耳元で言うとそのまま席を外す。
ーー
「失礼しました。お忙しかったですか?」
「出れん時は無視する。用件は手短に」
「はい。扇グループの仲介で場所を提供していただけることになりました」
扇さんたちとコネクトがあるとはいえ世話になりっぱなしだな。
「向こうの具合は?」
「はい、多少の重火器があるぐらいです。ナイトメアは持っていません」
「資料を見たがうちにはグラスゴーがあったな。それを礼として扇グループに譲渡してやれ。これからも世話になると」
確かカレンが乗っていたのはグラスゴーというやつで間違いないはずだ。写真と記憶を照らし合わせただけだが。サザーランドも無頼も渡せないがグラスゴー一機なら大丈夫なはずだ。
「はい、私もそれは提案させて頂こうと思っていたところです。実は出来の良いのが居まして」
「きれいな赤髪の子だな」
カレンですね分かります。
「はい、よくご存じで」
「いい眼をしていたからな」
いい眼をしている、それに度胸もいい。ランバ・ラルとアムロ・レイとの初対面の際にランバ・ラルが言った言葉。渋くて格好いいだろ?
「詳細はまたあとに。今はあまり時間を作れない」
「承知しました。ではまたの機会に」
「全く、休まる時がないな…」
少し疲れたように電話を切った薫はため息をつきながら元の場所に戻る。その様子を聞いていた人影、その人物はなにも言わずにその場から去るのだった。