ニーナ・アインシュタイン。
内気で引っ込み思案な性格であり、人付き合いも余り得意な方とは言えない。生徒会に入れたのもこちらを配慮してくれたミレイのおかげ。
彼女にとって生徒会室は学校での唯一の場所であった。大好きなミレイがいながら静かに自分の世界に入れる貴重な空間。当初からルルーシュという存在は居たが彼は自らこちらに接してこないからたいして気にも止めなかった。
そんな波風の立たない日常に入ってきたのがカオル・ヴィヨネット。最初はあまり気にしていなかった。ルルーシュと同じであまり干渉してこないからだ。
(彼女は何でも持ってる…)
彼女はなんでも持っていた。他者からの信頼、羨望、恵まれた体を持った女性。振る舞いや口数もあまり変わらないというのに全く反対の生活を手に入れた女。そんな彼女のことは少し嫌いだった。
「よくそんなに食べて太らないわよね」
まぁ、そんなことを言っていたが実際にそんな奴なんていくらでもいる。気にすることは無かった。そんな彼女が最近、決まってきたメンバーと食事をしている時。驚愕の真実を知る。
「この前、こっちが胸焼けするほどケーキ食べに行ったのに太らないのはずるいわよねぇ」
「え、ミレイちゃん。ヴィオネットさんと食べに行ったの?」
「まぁ、時々ね。週一のペースでケーキ食べてるわよこの子」
何気ない会話のヒトコマ。そこに投入された爆弾は彼女にとってはかなりの威力を誇っていた。
「勘弁してくれよ。ミレイ…」
動揺しているニーナの耳に届いたのは小さく呟くカオルの言葉。その一言でこの二人がただの友人とは言えない間柄だということは用意に推測できる。
「むむ、ならその美味しそうな肉炒めを貰おうかな」
「聞いてたのかよ…」
「その調子でマイハニーと呼んでくれて構わんよ」
「お黙りください」
「あ…美味しい」
端から見れば完全に恋人な二人。ヴィヨネットは同性愛者なんて噂も流れてるし不安と言えば不安でもある。昔っから共に過ごしてきたミレイを奪われるような思いをしたニーナはカオルを見つめる。
(なんなのよ…)
見た目に反して彼女は男よりだ。口調を含め食べ物の趣味やらも男のような感じだ。そのギャップが良いとか外野も叫んでいるけどそれも無視。
まぁ、こちらからしてみれば異質極まりない。
「席を外します」
「最近、よく電話が来るわね」
生姜焼を食べ終えたミレイが画面を覗き込んでる。正確な日にちは覚えていないが彼女はこうやってカオルに過剰に接触している。いつもしっかりと線引きをしている彼女にしては珍しい。
(本当になんなの…)
こうしてニーナは明確にカオルに対して敵意を覚えることになる。
ーー
当初のイメージを遥かに越えてカオルは異常なほど行動力が高い。普通ならお見合い会場に殴り込みをかけるなんて聞いたことがない。しかも貴族同士のお見合いだ、貴族制を取り入れているブリタニアでは貴族は絶対。
そんな貴族の大事な行事でやらかすなど誰が思おう。
「大人しくしてろミレイ」
こそっと囁かれた言葉にゾクッとするミレイ。落ち着きのない子供をたしなめるような言葉遣いにおもわず鳥肌がたつ。
彼女の悪ふざけか、それとも気まぐれなのか。カオルはたまにそう言うことをしてくる。
「全くもう…」
言葉にならないため息がもれる。あの時以来、彼女を遊んでいた自分が今度は弄ばれているような気分になる。
「わざとだったら相当の策士よね」
「ん、どうしたんですか会長?」
「いや、なんでもない。あれ、ニーナは?」
「トイレにいくって言ってましたよ」
「ふーん」
ーー
「きれいな赤髪の子だな」
こっそり後をつけていたニーナはカオルが周囲の目を気にしながら電話している姿が見える。
「いい眼をしていたからな」
どうやら誰かの話をしているようだ。おそらく女性の話だろう。というかミレイという存在がありながらまだ他の女に手を出しているのか。
(女たらし…)
「詳細はまたあとに。今はあまり時間を作れない」
デートの約束でもしていたのだろうか。彼女は申し訳なさそうな感じで話していた。
「全く、休まる時がないな…」
一通りの話を聞いたあと。彼女はため息をつきながら電話を切る。彼女、クールな顔をしていながらとんでもない裏の顔を持っていた。こんな彼女をミレイに近づけてはならない。そう思ったニーナは静かにその場を立ち去るのだった。
ーーーー
そしてその週末。ついに白蛇、最初の作戦が始まるのだった。