「うーん」
アッシュフォード学園の生徒会長。ミレイは一つの悩みを抱えていた。
(カオルが構ってくれない…)
最近のカオルは忙しそうにあっちこっちを行き来し、放課後になるとすぐに帰宅してしまうのだ。本人に聞いても「なんでもない」っと言われるばかり。
それに心なしか疲れているようにも思える。なにかやらなければならないことでも出来たのだろうか。
「まぁ、仕事はしっかりとこなすから。文句はないんだけどね…」
そんな悩みを抱えながら生徒会室にたどり着いたミレイは中で居眠りをしていたカオルの姿があった。
(相変わらず綺麗ね)
その真っ白な髪は太陽光を反射させ輝いていた。カメラが手元にあれば撮っていたほどだ。
ルルーシュにはカオルの過去についてはなにも聞かないでほしいと言われている。
(それでも知りたいと思ってしまうのは何でかしらね…)
一度だけ、彼女のお腹を見たことがある。そこには痛々しい傷跡が残っていた。ブリタニア軍の日本の占領時になにかしらあったのかもしれない。
全く起きる気配のないかカオルの横に座ってみる。
(まぁ、会長として少しは労ってやりますか)
そうしてミレイはゆっくりと膝を貸すのだった。
ーーーー
「どうだ?」
「はい、解析は続けているのですがいまだに…」
「違う、もう一人の方だ」
エリア11政庁の最重要研究区画に足を運んだのは現在、総督であるクロヴィスの補佐をしているバトレー・アスプリウスだった。
「肉体改造と必要最低限の知識を教育し終えましたが。どのような措置を行っても意識が目覚めません」
「そうか、優秀な兵士になるのは間違いないのだが…」
「やはり神根島にて実験を行った方がよいのでしょうか?」
「分からん。まさか遺跡の中に生きた人間が眠っているとは誰も思うまい。前例がないのだからな」
拘束着を身につけられた青年を見つめるバトレー。不老不死の女よりは利用できるかといろいろと手を加えてみたが意識が目覚めないのではどうしようもない。
「フェネットくんはどこにいるんだ?」
「彼は家ですよ。娘に会ってくるそうです」
「彼は愛娘家だな」
バトレーは内心ため息をつく。自分自身は所帯をもつという行為は行っていないためになんとも表現しにくい。
バトレー・アスプリウスという人間は己の全てをブリタニア皇族に捧げると誓った男。家族というコミュニティーは場合としては邪魔になりかねないからだ。
「念のためにカプセルに圧縮しておけ。殿下には私から説明して神根島に連れていけぬか聞いてみよう」
「ありがとうございます」
研究員が改めて頭を下げるのを見届けるとその場を去る。
(やはり、いい気はしないな…)
皇族の為になるからこそこんなことをしてはいるが本来ならこんなことはやらない。人間を隔離して実験を行うなど…。
ーーーー
「殿下、バトレーです」
「ん、バトレーか。入れ」
「失礼します」
クロヴィスの執務室に出向いたバトレーは礼儀正しく入室すると持ち込んできた案件の説明に移る。
「殿下、例の実験生体の件ですが。研究員から発掘された神根島の方で臨床実験を行いたいと言うことで」
「あぁ、あの目を覚まさない生体の事か。それほどまでに大切なのか?」
「はい、今までのどの生体よりも優秀なはずだと…」
「ならそのように手配しろ」
「承知いたしました」
神根島での臨床実験。それは当然ながらC.Cの事ではない。では一体誰なのか?それは薫も知らぬことであった。
ーーーー
「ちょっとくすぐったいわよ」
「……」
その頃、カオルとミレイは生徒会のソファーの上で抱き合っていた。正確にはミレイが抱きつかれたと言った方が正しいが。
女の子同士で抱き合ったりすることはよくある。ミレイ本人もよく誰かに抱き付きながらスキンシップを取っている。だが彼女はこんな事をするタイプではないと思ったのだが。
「…なにかあったの?」
「いや、なにもないさ…」
「無理は駄目よ…」
「わかってるさ…」
やっぱりなにか隠してる、そうミレイは悟った。心を開いてくれていることに喜びを覚えるがそれ以上に彼女が苦しむのを見ていられない。
「ミレイといるとホッとするな」
「そう?もっと甘えてもいいのよ」
「もうやめとく…」
するとあっさり立ち上がるカオル。それに一抹の寂しさを覚えながらも仕方ないと思う。彼女は強い人間だ、だからこそ彼女が求めてきたら答えよう。受け入れられる存在でいよう。
「じゃあ、みんなが来る前に仕事を用意しないとね!」
「ミレイ?」
「あれ?」
こっちも元気よく立ち上がったつもりだったが急に足にの力が抜ける。慣れないことをしてしまったせいだろうかふらついてしまった。
「いっつぅ!」
「大丈夫!?」
カオルの苦悶の声に驚くミレイ。結構派手な音が鳴り響くが自分は無事だった。彼女に抱き抱えられたミレイは柄にもなく動揺しする。
「大丈夫、怪我はないか?」
「えぇ」
「それは良かった」
背中を強打したのか背中を抑える彼女に急いで湿布などが入っている薬箱を持ってくる。
(お腹の傷…)
湿布を背中に張り付けながらミレイは腹にある大きな傷跡を確認する。実に痛々しい様だ。彼女のお面を張り付けているような表情の根元が過去にある。しかしそれを問うことは出来ない。
(私ってこんなに臆病だったかしら?)
「そういえばミレイに話があるんだ」
「え、なに?」
思考の海に使っていたミレイはカオルの言葉によって引き戻されそのお願いを聞くのだった。