奇妙な生活
(しかしこいつは…)
なんとかブリタニアの政庁から脱出し無事偽装工作は上手くいったしキョウトからブリタニアの動きが活発化しているという話も聞かない点から見てないんだよな大丈夫だろう。
(とりあえず手元に置いておくか…)
ここは自分の部屋。ベッドにはカプセルから出てきたイケメン君が転がっている。得体の知れない人物をアジトに置いておくわけにはいかないし。もし発見されてもたまたま見つけたと言えば誤魔化せるだろう。
「ブリタニア側の人間か?」
顔を見る限り、日本人ともブリタニア人とも取れる顔立ち。どちらかと言えばカレンと顔の雰囲気が似ている。
「あれ、カレンって日本人なのか?」
今思えばカレンもブリタニア人と言われても問題ない顔立ちをしている。
「う…」
「目を覚ましたか…」
「ここは…どこだ…」
「俺の家だ。全く、俺の計画が目茶苦茶だ。これで政庁に潜入出来なくなってしまった」
瞬時に辺りを見渡した彼はこちらを振り向くと真っ直ぐこちらを見つめてくる。どうやら警戒しているようでこちらの体を見てくる。武装はしてないので襲われたら抵抗できないのだが。
「佐脇…薫……」
「そのとおり、お前の名前はなんだ?」
「ライ…」
「名字は?」
「名字?」
意味がわからないと言った風だったがすぐに思い立ったようで頭を捻る。
「分からない…」
「記憶喪失か…どこまで覚えている?親は兄弟は?」
「……」
「そうか…」
ライというキャラなんて聞いたことがない。当然ながら友達もそんな人名を言葉にしなかった。もしかして外伝キャラなのか、それならここで大きくストーリーが変わることがない。だがそれは困る、このままではルルーシュがゼロになってしまう。
「引き寄せられたと言うべきかな?」
「?」
「俺も記憶喪失でな。ここ数ヵ月の記憶しかないんだ、親の顔も兄弟が居たのかすら分からない」
類は友を呼ぶとはよく言ったものだ。まぁ、俺は完全な記憶喪失と言うわけではないんだが。
「そうなのか」
「まぁ、思い出すなら勝手に思い出すさ。しばらくは世話をしてやる」
拐ったくせに捨てるなんて非常識なことはしませんよ。
「なぜそこまでしてくれる?」
「親近感を感じたからさ」
キンキンに冷えた麦茶を渡し、飲み干す。やっぱり麦茶が一番うまい。
「ブリタニアになにをされていたかは知らないがゆっくりと休め。それからでも遅くない」
「ありがとう」
「きにするな」
政庁侵入から数日後のこの日。それから薫とライの奇妙な同棲生活が始まった。
ーーーー
一応、ライには外に出歩かないように言っておいた。しばらくの間は彼の存在を隠しておく必要があるからだ。その間、彼は薫の家に泊まることになった。
「歴史については随分と堪能だな」
「勝手に出てくるんだ。覚えた記憶はないんだが」
「やっかいだな。これじゃ、どこの国出身かわからんな」
当初は必要最低限のものしか置いていなかった部屋は住んでいるうちにどんどんと物が増え、普通の部屋と化していた。この中でもテレビとラジオはライにとって貴重な暇潰しツールだ。
「それにしても強いな」
「そうか、俺より強い奴ならいくらでもいるぞ」
現在、ライと薫は互いにチェスをしている。20回やって1回勝つ程度の勝率だがライにも勝っている。他にも将棋やオセロ、トランプゲームなど様々な種目で勝負している。
まぁ、そのほとんどがライに勝ち越されているのだが…。
「そろそろ外に出るか?」
「いいのか?」
「ほとぼりも覚めてきている頃だろう」
彼と同棲して一ヶ月近くの時間が経過した頃。ライにようやくの外出許可が降りた。それまできっちり守っていた彼も誉めてやりたいが仕方なかったのでどうとも言えない。
ーー
「やはり、外界の刺激と言うのは良いものだろう?」
「そうだな」
そして外に繰り出した二人は公園を散策していた。ライは薫の私服を来ているのだがサイズ的には問題ない。身長はルルーシュ並みに高いライだが薫自身もルルーシュ並みの高身長なので問題はなかった。
念のためにサングラスをつけさせているが…なんとかなるだろう。
「薫はテロリストなのか?」
「まぁな、反ブリタニア活動を主に行っている」
「そうなのか」
馴染みの露天でカリフォルニアドックを食していた二人はベンチで一息つきながら話す。
「無理をするなよ」
「無理してるように見えるか?」
「あぁ」
「なら気を付けようか」
イバラギでの反抗作戦、ブリタニア貴族襲撃、政庁侵入をやり遂げた白蛇の組織は他のレジスタンスグループよりも頭ひとつ抜けた存在として認識されつつある。主に関東地方を中心に救出や援護作戦を実施し各関東県の組織との連携を強めている。組織は確実に拡大し強力なものへと変わっていった。
(移動は辛いから近場の関東とか山梨を主な任務地にしてるけど連日ドンパチやってるから死にそうだ)
キョウトから送られてくる依頼をこなしているがこっちの身が一つなので本当に疲労で死にそうになる。学校も少しづつ休んでいる様だ。
「お前は外に出たくせに能面みたいな顔して…」
「それはそっちもだと思うけど」
「マジか…」
一ヶ月も寝食を共にすれば兄弟のような感じにはなってくる。少なくとも薫はライの事は信用してる。というか自分の表情筋が死んでるなんてはじめて聞かされたんだが。
「お前は記憶を取り戻したいのか?」
「薫はどう思ってるんだい?」
「俺は別に記憶なんていらない。今、優しくしてくれる友人がいるし、仲間もいる。だから記憶なんて今さらあったところでな」
「そうだな、僕もいらないかな」
「そうか…なら俺の仲間を紹介してやる」
いつまでもニート生活を送らせるわけにはいかない。でもブリタニアで働くにしたら彼は危険すぎる。なら裏の世界しかないだろう。この選択肢を奪ったのも俺のせいかもしれないが…。
「ありがとう」
「礼を言われるほどの事はしてないさ」
彼がどんな人物かはある程度分かっているつもりだが。いろんな手段で彼を調べるべきだと言うのはよく分かった。
(ジェシカに色々と手配してもらうか…)