イバラギゲットー壊滅作戦は薫たちが駆けつけた次の日の朝に開始された。轟音と爆音と共にイバラギの町が破壊されていく。町の外縁部からゆっくりと進撃してくるブリタニア軍は獲物を追いやる狩人のような気分であった。
「なんだ、イレブンの中でもマシなレジスタンスと聞いたが張り合いのない」
「ふ、イレブンごときにそのような力があるものか。多く殺せなかった方が奢りだぞ」
「負けられんな!」
バカな笑い声を響かせるサザーランド。その一機に風穴が開くと爆散する。
「な、なん…」
驚く僚機も訳が分からず撃破され絶命する。
「こちら柏木ぃ、敵機2機を撃破」
「よくやった。ポイントを移せ」
「了解ぃ」
柏木が乗っているのは無頼カスタム。ロングバレルのライフルを持ち、カメラをサザーランドの物に変えたカスタム機だ。
「こちら伊丹、敵を捕捉」
「伊坂です。攻撃します!」
各所に配置したナイトメア隊が敵に牽制攻撃を開始。あわよくば敵の数を減らしていく。
「順調だね」
「あぁ、空爆されたら終わりだがな」
「大丈夫だよ。テロリストの殲滅ごときでは空爆は使わない。金がかかるからね。それに絵にならない」
周囲にはブリタニア人の住む祖界も存在する。ピンポイントで攻撃できない空爆は危険だし、無駄な金がかかる。それにナイトメア隊で敵を蹂躙した方が絵になる。
まぁ、切羽詰まったら行うかもしれないがその頃には俺たちは逃げているという算段だ。
「よく分かっているな…」
さっきのは完全に独り言。というより完全にそんなこと考えてなかった薫は内心、汗ダラダラで答える。迎撃の算段をつけるので精一杯で他のリスクなんてなにも考えてなかったのだ。
(知ったか乙。なんでそこで知ってるフリするかな俺は!)
顔を手で覆って隠れたくなるがそれは出来ない。今は敵を迎撃するそれしか許されないのだから。
ーー
(ちょっと試されたかな…)
それに対してライも内心、ホッと息をついていた。最初こそ仮面を被った彼女の雰囲気に飲まれていたものの、なんとか落ち着きを取り戻して答えきったのだ。
先程の質問、恐らく自分がどこまで俯瞰できるかを試したのだろう。
(気を付けないと…)
仮面を被った彼女はレジスタンスグループのリーダー。普段の生活のように甘えさせてはくれないだろう。
ーー
「各隊、第一フェーズを終了。以後、第二フェーズに移行します」
ナイトメア隊による散発的な攻撃。ゲリラ戦法を使ったのなら敵は固まって移動してくるはず。そこを歩兵で一網打尽にする。
ーー
「くそっ、イレブンめ!」
「ナイトメアの襲撃を警戒しろ!数はこちらが多いのだ押し潰すぞ!」
「イエス・ユア・ハイネス!」
読み通りサザーランドは4機編成で固まり、襲撃を警戒しながら進んでいく。中にはグラスゴーの部隊も見かけたがごく少数だった。
「まだだぞ…」
バレットを中心とする歩兵隊は息を潜めてナイトメアや装甲車が通りすぎるのを待つ。ナイトメアが足を踏みしめる度に大きな地響きが鳴り、恐怖を掻き立てるが歩兵連中は必死の形相で待機していた。
「最優先は歩兵と装甲車だ。上階層の部隊はナイトメアにかましてやれ!うてぇ!!」
バレットの言葉と共にランチャーやRPGが放たれる。背後から奇襲されたブリタニアの部隊は悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。
「雑魚が!ぐわぁぁぁ!」
サザーランドも頭部を吹き飛ばされ視界を失う。なんとか無事だったサザーランドも二射目を放ったバレットの弾頭がコックピットに直撃。バランスを失い倒れる。
「よっしゃ!」
「このイレブンがぁ!」
「っ、逃げろ!」
頭部を吹き飛ばされたサザーランドがライフルを乱射。咄嗟に伏せたバレットだが他の兵たちは襲いかかる弾丸や落ちてくる瓦礫に巻き込まれて絶命する。
「静かにしてやがれ!」
彼女は潰された仲間の死体からランチャーを剥ぎ取りコックピットに直撃させるとサザーランドは動きを止めた。
「こちら歩兵第一分隊。敵を殲滅するが被害甚大、これより撤退する」
「バレット、良くやってくれた。お前たちは脱出しろ」
「白蛇様…ありがとうございます」
ーーーー
「ふぅ…」(吐きそう…)
こっちの手駒が増えたお陰で大規模戦闘になっている。それは喜ばしいことだがこれまでにどれだけの命が散ったかは分からない。自分の指示一つで命が簡単に散っていく。それを嫌というほど実感していた。
(ちきしょう、逃げたくてたまらねぇよ)
リーダーが居なくなる。その重要性は素人なりに理解しているはずだ。だからこそ動かない、動じていないように振る舞う。理想のリーダーであるために。
「作戦は順調だが、これからだな」
まだ純血派が出てきていない。それにこちらの勝利条件は戦闘の勝利じゃない。
「ジェシカ、避難民の退避はどうなっている?」
「現在、約9割が終了しました。安全圏まで完全に退避するにはあと3時間はかかるかと。」
「引き続き護衛を頼む」
「了解しました」
まだ避難民の事は察知されていないらしい。その間にこちらも時間を稼がなきゃならない。避難民の護衛にナイトメアを3機も割いているのだ。これ以上の支援は無理だ。
「こちら第二防衛ライン。敵多数なれど持たせられます!」
「こちらはお任せください!」
「すまない、各主要メンバーは最終防衛ラインに終結せよ!」
「「「了解!!」」」
既にかなりの足止め作業を行っている。中心部に迫れば迫るほど足場が悪くなり行動がナイトメアに限定される。地の利はこちらにあるのだがいかんせん数が多い。
(どこまで持たせられるか)
ーーーー
「行けるぞ。このまま白蛇様の指揮があれば!」
「ほう、その白蛇とやらはこの奥か?」
「なに!?」
「このカラーリング。純血派か!」
第二防衛ライン。そこに展開していた無頼2機がジェレミアと接触、一瞬のうちに撃破される。
「ふん、他愛もない。皇帝陛下の寵愛を理解できぬイレブン風情では無理もないが」
「ジェレミア卿、敵の掃討も完了しました」
「敵の防衛ラインも二つ越えた。次辺りが本命だろう」
続いてヴィレッタのとキューエルが続く。純血派の活躍により一瞬のうちに防衛ラインが崩されてしまう。
「白蛇とやらがどれほどのものか。このジェレミア・ゴッドバルトが見極めてやろうではないか!」
ーーーー
「2ー3地点の反応が消えました。敵に突破されたと思われます」
「ちっ、力押しではやはり負けるか。各機、予定通りに行動せよ。ライ、俺に着いてこい!」
「あぁ!」
薫はスラッシュハーケンをビルの壁に突き刺し白号を降ろすとライのサザーランドを降ろして続く。
「伊丹、トラップを起動させろ。ここに民間人がいないと悟られれば後はないぞ!」
「了解!」
進軍してくるジェレミア純血派と薫の全面対決が始まるのだった。