「白蛇様、対象の侵入を確認」
「よし、全ての罠を起動させろ」
「了解」
イバラギゲットーの中心部。巨大な交差点が存在する地点にたどり着いていたサザーランドの部隊を確認すると行動を開始する。純血派隊は不審そうに周囲の確認を行っている。
「やはり、気づかれるか…」
「やっぱり、中心街に誰も居ないのは不自然だからね」
「そうだな。だがここまで来てもらった以上、返さんよ」
ライの言葉に薫は腹をくくる。今までは散発的な戦闘は行ってきたが直接出ることはなかった。だが今回は全面的に前に出る、最新鋭機にのっているのだ。それぐらいの働きをせねばならない。
「作戦開始!」
「「了解!」」
ゆっくり、ゆっくりと歩を進めるサザーランド。その足元には細いワイヤーが通っている。通路に仕掛けたワイヤートラップの起動と同時に動き始める。
カチッ…
「かかった!」
当然の爆発、サザーランドの右足が吹き飛び倒れる。それと同時に戦闘ステータスまで機体を立ち上げて動き始める。
「各機、敵に考える隙を与えるな!柏木!」
「は~い!」
素早く動き始めるサザーランドたち。高所のビルに伏せていた柏木がロングバレルライフルを構えて撃つ。それは見事にサザーランドのライフルを破壊する。
「ほれほれ~。やっちゃいましょう!」
「各機、路地警戒!」
「「了解!」」
スナイパーがいる以上、身を隠すのは常道。だが路地には全てトラップが仕掛けてある。もしトラップが足りずに突破されても先には部隊が潜んでいる。
一機が路地でトラップを起動させる、だが他の機体は真っ直ぐにこちらに向かってくる。
「あれ、こっちに来るかぁ」
「頭が回る奴がいますね」
「ライ、俺と来い!伊丹たちは背後から挟撃をかけろ、柏木は任せる。移動してもかまわん!」
「「了解!」」
「なら、少し粘るかな!」
柏木は敵が迫っているというのに冷静。乱数回避により狙撃を避ける純血派だが一機の左腕を吹き飛ばす。このおかげで敵もかなり威圧されるだろう。
「僕が前に出るよ!」
「すまない!」
ライのサザーランドと薫の白号が姿を表し純血派機と対峙する、冷や汗ダラダラの薫だが前に進み続けるととんでもない光景を目にした。ライのサザーランドに弾が当たらないのだ。まるですり抜けているような。
「本当に強化人間ってやつなのか」
「うおぉぉ!」
自分も負けていられない。下手ではあるがある程度の操作は出来る。それならばこちらは時間稼ぎをしてライに倒してもらうのが妥当だろう。
「とにかく、一機!」
白号が手にしているのは工事用ナイトメアが持つピッケル。当然ながら、腕にはスタントンファが付いているが手になにか持ちたかったのだ。ライフルの数だって全員分あるわけではない。なのでこっちが余り物を使っているのだ。
…かなりみんなに反対されたが。
「ピッケルだって使えるんだよ!」
どこぞの鉄血世界の傭兵たちを見てみろ、モッさんとかな!ピッケル一つでヒョイヒョイ敵の武器を剥ぎ取ってくんだぞ!
(まぁ、そんなこと出来ないんだけどね!)
勝ったと言わんばかりにライフルを構えるサザーランド。リーチが短いピッケルなのでしっかりと接近して振るう。とにかく射線がこちらからは逸れれば良いのだ。
(あれ?)
深く入りすぎて銃身どころか、ピッケルの先端がライフルのトリガーガードに引っ掛かる。そのままの勢いで上空に飛ばしてしまったが両者唖然である。
(ほわい?)
飛ばされたライフルを回収、ほぼゼロ距離で形勢をひっくり返えしてしまった。
(予想外です…)S◯ftBank
「やった、ライフルゲット!」
一人でテンションが爆上がりの薫だったが秒で破壊されてしまいテンション爆下がり。
「ちっきしょう、この野郎!」
横にいたサザーランドに怒りの視線を向けると足場の悪い道路に足を引っ掛けて転ぶ。無様に敵のサザーランドにタックルをかましたようになり一緒に倒れてしまう。
「痛て!」
倒したサザーランドに思いっきり殴られカメラの調子がおかしくなる。おそらく、頭部を思いっきり殴られたのだろう。慌てて逃げようと立ち上がるがサザーランドともみくちゃになって中々立てない。その時に敵の頭を踏んでしまうが仕方ない、最終的にピッケルをサザーランドに突き立てて立ち上がる。
「脳震盪起こすわ!」
まだ反撃するかもと構えていると相手は脱出。なんとか一機を撃退することができた。
「なんだありゃ…」
「あれが天才と言うものなのか…」
サザーランドたちを包囲しつつある伊丹たちはライの恐ろしく強い姿に唖然としそれを見つめる。
「柏木さん!」
「まずっ!」
ケイオス爆雷を放り投げつけられた柏木はすぐに撤退。無数の破片が柏木さんに降り注ぐがライフルを失っただけでなんとか逃げられた。
「白蛇さま!」
「すまん!」
伊丹から受け取ったライフルで牽制射を加える薫。すると最後のサザーランドが脇道に逸れる。そこにはワイヤートラップが仕掛けてあったがサザーランドは使っていたランドスピナーを収納し小ジャンプ。
ワイヤートラップを飛び越えると追撃していたライを牽制するためにわざとワイヤートラップを起動させられてしまう。
「ライ、無理をするな!」
するとスラッシュハーケンで大きく飛んでトラップを回避した薫はピッケルを振りかぶって攻撃、それも左のトンファで受け流されてしまう。
「やはり、強い!」
「白蛇さま、避難民の退避が完全に完了いたしました」
「そうか、すまないな。ジェシカ!」
「いえ」
目の前にはサザーランドが一機、こちらを睨み付けているが数の差は歴然、こちらが押せば勝てるはずだが。
「全機、撤退だ!」
「しかし白蛇さま!」
無駄な被害は我々を滅ぼす。勝てるだろう、勝てるだろうがこちらに被害が出ないはずもない。ただでさえ損耗している戦力をこれ以上減らすのは避けたかった。
真っ直ぐと脱出ルートに向かう薫の姿を見て撤退していく伊丹たち、こうしてイバラギゲットー脱出作戦は成功したのだった。