元千葉県、ウラヤスゲットー。イバラキゲットーから逃げてきた薫たちは無事に受け入れ先に到達し一息ついていた。
「白号の修理を優先しろ!」
「ナイトメアの点検は怠るなよ!」
旧遊園地跡に身を寄せた薫たち。ここは元々巨大なテーマパークが存在していた土地なのだが度重なる液状化現象によりブリタニアが危険地域として指定した区画であった。故にここは封鎖され無人地区となってしまったのだ。
だが住むには十分な場所であることは間違いない。安住の地をなくした彼女たちにはぴったりの場所だった。
(あのサザーランド。絶対にジェレミア卿だったよな、あんなに強かったなんて…)
ライたちの案も取り入れた完璧な包囲網を突破されるのは予想外だった。あれ以上の才能を持つスザクが出てくるとなると対処しきれないだろう。
(出来るだけ接触しないようにしないと…)
あの戦闘で無頼を4機も失ってしまったが思わぬ収穫もあった。それはライだ。彼の戦闘能力は異常だ。あの軌道、熟練パイロットであろうと無理な動きだ。
(才能と言うべきなのだろうか…)
ライは仲間たちに祝福されながら迎えられている。あれだけの動きを見せれば誰だって認めざるを得ないだろう。侍従隊のおかげで人種による確執は比較的和らいでいる。彼にとっても住み良い場所だろう。
(ライの参加を喜ぶ前にやっておくことをやっておこう)
まぁ、簡単にいけば挨拶回りだ。今回死んだ者たちの家族、恋人などの者たちに直接会って話す。ただそれだけだ、俺のせいで死んだ、俺のせいでこんな酷い目にあった。これは俺が背負わなければならない罪だ。
ーー
(ふぅ…)
「お疲れさまでした…白蛇様」
「ジェシカ、俺は無能だよ。こんな有り様になってしまったのだ、もっとうまい方法があった筈なのにな」
「いえ、本当の無能は自身を無能とは言いません。私から見ては完璧ですがそれでも満足されないのなら。ご一緒いたします」
皆は俺を責めなかった、涙を浮かべながら言った。貴方のお陰で勇敢に死ねたと。俺はそんな存在じゃない、ルルーシュみたいな知略もスザクのような武力もない。
逃げてはならない。彼らの期待に応えなければ、死んだ奴が浮かばれない。
(もう本当に戻れないところまで来てしまったんだな…)
ーーーー
街の人びとはこちらを完全に信頼している。いや、依存していると言っても過言ではない。千葉のレジスタンスもこちらに参加してくれると言うし、規模だけで言えば戦闘前と変わらなくなるだろう。
(人間を駒と言う勘定に入れてしまうのは。いやだなぁ…)
組織を運営していくなかでは必要なことだ、だが慣れない。人としての感情が邪魔をしてしまう。
(もう手なんて残ってないぞ…)
その後、イバラキゲットー壊滅作戦は成功と言う形で報道が行われることとなる。
対してレジスタンス間では白蛇グループの評価がさらに上がることとなった。
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「イバラキゲットーの脱出は見事であった」
「いえ、優秀な部下と幸運があってこその成功でしたので」
キョウト本部。そこに呼び出された薫は桐原の私室でお互いに向き合いながら茶を啜っていた。
「お主、ここ最近は休みなく動いていたようだが…」
「はい、少し無理をしていたのは否定できませんが。我々の組織は建て直し中です少しは休めるかと」
桐原の私室では薫は仮面を外している。
「無理はせぬことだ」
「はい」
常日頃からいかつい顔をしている桐原だがなんだかんだ言ってこっちを心配してくれるのはありがたい。親がいない薫にとって信頼できる人の一人であった。
「ところで、枢木のことは覚えているか?」
「知ってはいます。しかし昔の記憶は…」
「すまぬな…。ワシも探しているが本家とは切れておってな。ブリタニア軍に入隊したことまでは分かっておる」
「スザクがブリタニア軍に入隊…」
原作通りになった。正直に言えば彼が入隊するまでに接触してそれを阻止するのも一つの手だと考えていたが。
(原作の開始が来年度の始まりだと仮定するなら。時間はない、もう半年も残っていない)
一応いっておくと現在は寒い冬、12月ごろだ。あと四ヶ月でどうにかできるなど、かぎりなく不可能な話である。
(困ったなぁ…)
「こちらの動きとしてはインド軍区から技術者が派遣されることになっておる。その試作機と新型を送ってくると通達は来ておるが」
「新型機ですか?」
「あぁ…」
(紅蓮のことか…)
紅蓮、詳細なスペックは知らないがブリタニア産ナイトメアとは違い、獣に近い猫背フォルムに大きな右腕に特殊兵器を持つ完全オリジナルナイトメア。確か、あれは日本製ではなかったのだが、インド製ナイトメアだとは思わなかった。
(あれにはカレンが乗るはずだったな)
「時期にもよるが日本解放戦線かお主らのグループに手配するようになるだろう。お主の白号の戦闘データを元に無頼の改良機の開発も進んでおる」
「こちらには優秀なパイロットもおります。新型を持て余すことはありません」
「ほう、それは期待できるな」
落ち着きのある和室は二人だけの空間。だが二人が身を置いている環境的に自然と殺伐なものになってしまう。
対して桐原も世間話と言っても薫の過去については触れないように心がけているので自然と話の内容も減ってくる。
「そうであった。この前、菓子を貰ったのだがワシにはちと甘すぎる。手伝ってくれぬか?」
「喜んで…」
桐原が取り出したのはまんじゅう。黒糖まんじゅうと呼ばれるものでよく温泉街で見かけられたものだった。
「おいしい、お茶の苦味によく合いますね」
「そうか、それはなによりだ」
その後もポツポツと経過報告をしながらお菓子を頬張るのだった。
ーー
「ふぅ…」
その後、かなりの時間をゆっくりしてしまった薫は桐原に進められてキョウトのお風呂でゆっくりする。ここのお風呂は温泉らしく、室内だが露天風呂のようなセットが組まれ、大きな湯風呂でくつろぐ。
「あら、だれか居るのですか?」
「はい?」
現れたのは長い黒髪の幼女。
(オーマイガット!!)
今だに幼女耐性がついていなかった薫は大パニック。風呂場に乱入してきたのは皇神楽耶。日本のレジスタンスグループを束ねるキョウト六家の当主。つまり、日本のレジスタンスグループのトップと言うことになる。
「あら…その髪、その肌。貴方が白蛇ですね!」
「えぇ…」
女体にはかなり慣れたが違う種別の女体は今でもかなりきつい。ミレイとかの裸だったらまだ興奮しないが(嘘)。やっぱり小さな女の子の裸を見ると言うのは罪悪感と言うか、そう言うのが沸いてくるのだ。
「桐原公がいつもおっしゃっておりました。貴方は日本を救える存在だと」
「いえいえ、恐れ多い。俺はただながされながらももがいているだけの人間ですよ」
「あら、そうでしょうか?」
無邪気な笑み。そんな彼女の笑みを通しては何も分からないが大きなものを感じた。
「覚悟がなければこのような道にはたどり着きませんよ」
「……」
なんだか励まされているような気がした。それだけ、たったそれだけで俺はお風呂の中でも大きな声で笑ったのだ。
「あら、思ったより気さくな方なのですね」
「そのようです。ありがとうございます、神楽耶さま」
ーーーー
「そうか、エリア11の騒動は収まったか」
「はい、正直のところ。こちらに要請をと思っておりましたが、テログループは無事に鎮圧されたようです」
「クロヴィスは政治より芸術や文化に秀でているからね」
ブリタニア本国。そこでエリア11の情勢を聞いたシュナイゼルはチェスを行いながら話を続ける。
「エリア11の騒動ですか…」
「あぁ、新興のテロリストが名を馳せていたらしい」
「貴方はエリア11の事は気にするのね、他の事は目もくれないけど。それほどの物があそこにあるの?」
「あぁ、あそこは気になるな」
シュナイゼルの側に控えるカノン、その二人と対峙しチェスの相手をしている青年が一人いた。
「意外だな。ナイトメアと戦場にしか興味がないと思っていたからね。そう言えば、ロイドたちもエリア11でランスロットの実証実験を行うといっていたね」
「ランスロットですか…」
「あぁ、君は行かなくて良いのかな?」
「行きたいのは山々なんですがね。俺は皇帝陛下直属なんでね」
真っ白の軍服に藤色のマントを纏った青年は鋭い目付きで盤上を眺める。
「そうだったね。皇帝陛下直属部隊 ナイトオブラウンズ ナイトオブ13 ヴィヨネット卿」
次から原作開始です。