魔神が生まれた日
あのイバラキゲットー脱出作戦から数ヵ月が経過した。白蛇グループは実質的に関東方面のレジスタンスグループの頂点に立ち。以前以上の戦力を保有するのに至った。
絶対的カリスマを持つ白蛇と絶対的エースのライがいる白蛇グループは幾度もブリタニア軍と衝突するも無事に潜り抜けて暗躍していた。だが薫が行いたい本当の目的であるC.Cの情報は手に入れられなかった。
「ルルーシュは?」
「リヴァルが連れてっちゃって」
「また代打ち、ポーカーかなそれとも」
「二人とも生徒会の自覚がないんだから…。お金かけてるんですよ!しっかり勉強していれば成績だって…ねぇ。カオル」
「そうだな。まぁ、それは本人のやる気次第だこっちからはどうしようもない」
アッシュフォード学園の庭では昨今のエリア11を騒がせている張本人であるカオルの姿があった。もはや、いつもの光景と化したこの光景の中でカオルは違和感を感じていた。
(この感じ、どこかで聞いたことがあるような…)
遠い記憶の中で探ってみるがあまり記憶にない。この世界に来て一年ほど経っているために前世の記憶が所々曖昧になってきた。
(女の体にも慣れたしな…)
この前まではミレイなしではランジェリーショップに入れなかったが今じゃ平気では入れるようになった。悲しいことに女性の下着では反応しなくなってしまった。
男としてこれはどうかと思うが今は女なので仕方がない。まぁ、性癖は変わらないが。ガチガチのレズビアンだ(外見)。
「それで、今日は平和なのね。カオルは」
「ミレイ、ひさびさの俺の昼飯タイムなんだ。そこに触れないでくれ」
放課後と昼休みはだいたいミレイ、シャーリー、ニーナ、カオルの四人で食べているのだがよくカオルは席をはずす。
(女になってモテ期が来るとはな)
よく男に告白されるのだ。付き合ってくれとか、俺と釣り合うのは…なんて男にコクられても精神的にサン値減るからやめてほしい。
「よく言うわ。この前、ちょっと悩んでたでしょ?」
「確かにセリネの告白は少し悩んだな…」
それでも中には女もコクってくる事もある。その時は死ぬほど悩む、普通にタイプだったし。童貞、彼女なしで転生した俺にとっては悩ましかった。
「やっぱり、カオルって同性好きなの?」
「らしいな」
まぁ、中身は男だしね。
「心配するな、シャーリーにはルルが居ることは分かっている」
「なっ!?」
ルルーシュに完全ゾッコンとなったマイ天使シャーリー。彼女なら告白されても迷わずOKを出すのだが。
まぁ、俺の裏の顔があるかぎり。だれかと親密な関係になることは避けなければならない。
「むー」
不機嫌そうにするミレイ。正直に言えば、彼女の気持ちは察している。俺はラノベの主人公じゃない、あんなことやこんなことをされれば嫌でも気づく。だけど気づかない振りをし続ける。彼女に血みどろの世界は似合わない。
(住む世界が違うって結構きついよな…)
ーーーー
「ジェシカ、ツァーリから連絡が来てるぞ」
「ありがとう、バレット」
ウラヤスゲットー、白蛇グループ本部。そこで待機していたジェシカは潜伏していたツァーリから連絡が来るといぶかしみ、通信機に向かう。
「どうしましたか、ツァーリ?」
「ジェシカ、紅月グループが政庁に潜入したと」
「紅月グループが?」
紅月グループは昔から懇意にしているグループだ。シンジュクゲットーのレジスタンスグループだが政庁に潜入できるほどのモノは持っていなかったはずだが。
「伊丹さま、白蛇さまに連絡を」
「そうだな」
小さなグループとはいえ、紅月グループが何かしらの行動に出たという事は連絡をいれなければならないだろう。
ーーーー
「なに、紅月グループが?」
「はい、そんな大それたことをするとは思えず。一応連絡をと思いまして」
(原作が始まった…)
先程のミレイたちの会話。あれは映画を通して全く同じ台詞を聞いたから違和感があったのだ。ということはC.Cはカレンたちの所に。
「シンジュクに向かう。今すぐ動けるか?」
「それは厳しいです。すでにブリタニア軍は部隊を展開させています。こちらから動けば本部の場所が」
「だろうな、報告ご苦労。他のレジスタンスグループにも通達。警戒レベルを最大限まで上げさせろ」
「了解しました」
イバラギの時のように飛び火が出ては困る。伊丹たちに指示を出し終えると再び電話を開いて通話をする。
「ライ、今すぐ正門まで迎えに来い」
「どうしたの薫?」
「説明はあとだ。虐殺が始まる前にシンジュクに向かうぞ」
「っ!分かった、すぐに用意する」
ついでに言うとライとは今だに同棲している。ミレイには弟として紹介した。幸いなことに同じ青い目と白い髪を持っていたので向こうも渋々納得してくれたのだ。
「シャーリー、午後の授業は休む。先生に言っておいてくれ」
「どうしたのカオル?」
「ミレイ、シンジュクについてのニュースが入れば連絡を入れてくれ」
心配そうに見つめるミレイ、それを見たカオルは彼女にしか聞こえない声でそう呟くと弁当をしまい正門に向かう。
「カオル…」
すごい形相のカオルを見送るミレイは心配そうに見つめるのだった。
ーー
「薫!」
「早いな」
「バイクは機動力命だからね」
フルフェイスのヘルメットを受け取った薫はバイクに飛び乗るとライに行くように告げる。
「何があったんだい?」
「俺が手にいれたかった人物をカレンたちが盗んだんだ。一度忍び込んだから潜入は無理だと思ってたんだが。本当にやりとげられるとはな」
「相当の主要人物みたいだね。ブリタニア軍は大慌てだよ」
「当然だ、あれが公表されればクロヴィスは廃嫡だろうよ」
「そこまでかい?」
「そこまでさ、だから怖い。クロヴィスは証拠を消すためには何でもするぞ」
薫の言葉に息を飲むライ。というより、いつもより胸が当たり、少し雑念が入っていたのは言わないでおく。
ーーーー
「逃げられただと、それでも親衛隊か!」
「申し訳ありません。爆発は上方に拡散したのですが、岩盤が」
「何のためにお前たちに教えたと思っている」
「た、探索を続行します!」
シンジュクゲットー外苑部。そこに移動していたGー1ベース内では残念なことに物語通りに物事が進んでいた。
「しかたない」
「しかし殿下!」
「あれがバレれば私は廃嫡だよ。本国には演習を兼ねた区画整理と伝えよう。クロヴィス・ラ・ブリタニアが命じる、シンジュクゲットーを壊滅せよ!」
シンジュクゲットー壊滅作戦全ての始まりである事件が幕を開けたのだった。