「遅かったか…」
「これは、ブリタニアの親衛隊?」
薫が急行したのはとある倉庫。そこにはブリタニアの親衛隊の死体が転がっており、その真ん中には突っ立っている銀髪の女性がボーッとしていた。
「ヴィレッタ・ヌゥ。こいつがいるということはまだ近くにいるはずだな」
薫は迷いなくスタンガンをヴィレッタに押し付けて気絶させると親衛隊を近くで観察する。
「なんでこんなところで親衛隊が…この銃創は自殺?戦場のど真ん中で?」
「ギアスだな…」
「ギアス…」
ギアスというフレーズに引っ掛かりを覚えるライ。だが薫はそんなことを気づけるほど冷静ではなかった。
「こうならないために俺は動いた。情報も集まりやすくした…なのに。なのに、なんだこの体たらくは!くそっ!」
トタンで出来た壁を蹴りつけ苛立ちを隠さない彼女の姿に驚くライ。彼女がこんなに感情を露にするのは珍しかった。
「まぁいい。次だ、こうなったらとことん援護してやる」
すると薫は親衛隊の服を物色し始めた。
「薫、一体何を…」
「親衛隊がいるということはグロースターがあるはずだ。それを奪って参戦する。お前なら出来るだろう?」
「そうだね」
薫の言葉に対してライは少し悪い顔をして笑う。彼の表情は豊かだ、最初は能面みたいだったが多くの人と触れたお陰だろう。
親衛隊のIDカードと制服を奪った二人はすぐに着替える。
「でも、制服とIDカードを奪えたからって簡単にナイトメアは」
「俺の予想通りならもうすぐ混乱が生まれる。そこに乗じる」
(全部後手に回ってしまった。こうならないために力を手に入れたのに…この俺の無能が!)
「本当に混乱が…」
「カレンたちが盛り返したんだろう」
「そんな力があるの?」
「いや、ない。俺の師匠が手を貸してるんだろうよ」
「師匠、師匠がいるの?」
「まぁ、似たようなものだ」
薫の言葉に驚くライ、それを見て慌てて訂正する。
まぁ今ごろはルルーシュの指示で紅月グループが大暴れしている頃だ。その隙にグロースターを起動、こんなに容易く奪われるなんて軍としてどうかと思うが仕方ない。
「どうだ、ライ?」
「サザーランドよりパワーがあるね。でもサザーランドより使いやすいかもしれない」
「まぁ、お前の腕だと専用機を用意しなければならんからな。グロースターで勘弁してくれ」
「いや、その気持ちだけでありがたいよ」
本当は全てのグロースターを頂きたいのだがここは2機で我慢しよう。
「これで援護に向かうの?」
「いや、ここまで来たら我々二人で状況に介入することは不可能だ」
ルルーシュの邪魔もしたくないしね。
「俺たちは新型ナイトメアの威力偵察だ。それとパイロットもな」
ついにスザクとランスロットが出てくる。そんな彼からルルーシュを逃がす手伝いをする。それが今できる選択肢のひとつだ。
(最初、俺はここで間違えてたんだよなぁ)
グロースターを奪った二人は物陰に潜んで待っていると二人に大きな振動が襲う。おそらく、ルルーシュがサザーランドの大部隊を地下に叩き落としたのだろう。
「よし、そろそろ動くか」
「了解」
ーーーー
「ランスロットMEブースト」
「ランスロット、発進!」
「ははっ!いきなりフルスロットルか!」
機嫌の良い開発者の声を後ろに残しながら出撃する白き騎士。これでやっと話が始まってしまうのだった。
ーーーー
「ふっ、もう少しで検問を崩せる」
ブリタニアの大軍勢相手に無双を繰り広げていたルルーシュは有頂天になっていた。自身の持つ知略と戦略、そしてこの不思議な力があればブリタニアをついに切り崩せる。そう思ったからだ。
(薫、お前の暗い過去もこの俺が焼き尽くしてやる)
今もなお、苦しむ親友に意識を向けているとき。指示していたテロリストから通信が入る。
「こちらBグループ敵影を確認」
「ん、増援か。実戦は違うな、状況は?」
「全員脱出はしたが、四機があっという間に」
「敵の数は?」
「一機だよ、一機。新型じゃないのか、見たことのないタイプだ」
「おい、どうした?」
不自然に途切れる通信。撃破されたのだろう、それはいいがこの妙な胸騒ぎ。それがルルーシュには気に入らなかった。
「なに、実弾を弾く?」
「あぁ、どうすれば…石田っあぁ!」
(使えないテロリストだな。たかが一機、物量で押し潰せば)
確かに異常な強さを誇る敵ではあるだろう。だが数の暴力に耐えられるはずがない。押し潰せばそれで終わり、その時はそう高をくくっていた。
「N4、N5足止めしろ。後続部隊が着いたら囲め」
「分かった!」
「止められねぇて、こんなの!?」
「おい、どうした?」
的確に指示を出しているはずだ。だがそれを力で捩じ伏せられる、現場の詳細が分からない。だからこそ、原因がここでは分からないのだ。
「なんだ、何が起こっている?」
「うわぁ!」
「敵は、本当に一機なのか?」
愕然とする、こんなことがあるのか?戦略を戦術で押し潰されるなんて、本当にあっていいのか?
するとルルーシュが伏せていたビルに白い機体が姿を表し攻撃してくる。
「こいつか、俺の作戦を!」
サザーランドが悲鳴を上げる。明らかにパワーが負けている、見たことのないタイプであるし、本当に新型なのか。
「たかがパイロットが、よくも!」
珍しく苛立ち、叫ぶルルーシュ。だがあきらかに分が悪い。
脆い足場が崩れ、落ちる二機。粉塵が上がり、視界が悪くなる。
「仕方ない、ここで脱出を!」
脱出レバーに手をかけた瞬間。敵機が空中で回転しながら蹴りをサザーランドに放つ。たまらず吹き飛ぶルルーシュを庇うように横合いから紅いグラスゴーが新型に攻撃する。
「おい、借りは返したぞ!」
「なに?」
「ここまでか!」
パンチを防がれ、スラッシュハーケンも防がれたグラスゴーは攻撃手段を失い、脱出する。
「学ばないとな、実戦の要は人間か…」
その隙にビルから脱出したルルーシュは安全圏までの脱出を試みるが異常な加速をする機体に追い付かれつつあった。
「ちっ!」
どこまでもしつこい。ライフルで迎撃しようとした時、前方を塞ぐように展開する敵機の姿。それはブリタニア軍の高性能ナイトメア、グロースターであった。
(挟まれた。まだ親衛隊の生き残りがいたのか!)
前方には二機、後方には化け物が一機。完全に挟まれたルルーシュは打つ手なしと落胆する。
(薫、ナナリー。すまない!)
俺が捕まっても、なんとか逃げ延びてくれ。そう思考したルルーシュの予想とは裏腹にグロースター2機はサザーランドに構うことなく白い機体に突撃していくのだった。
ーーーー
「サザーランドの援護にまわる。敵はランスロットだ!」
「分かった!」
サザーランドとすれ違い、大型ランスを構えて突撃する薫とライ。まさかの状況に動揺したランスロットは薫の一撃はなんとか受け流したがライの攻撃をモロに食らうとビルに激突する。
ーーーー
「あいたぁぁぁぁぁぁ!」
その光景をランスロットのカメラ越しから見ていたロイドは絶叫しながら頭を抱える。
「そんな、あれは親衛隊のグロースターですよ!」
「親衛隊とは通信が取れなくなっているらしいじゃない。敵に奪われたとしか考えられないよね」
先程まで無双していた相手とは違う。あきらかに二人とも手練れだ。目立った武器を装備していないとはいえ、スザクが操縦するランスロットが押されている。
「敵の指揮官機の位置をロストしました!」
「まぁ、いいデータが取れそうだから良いか」
「不謹慎ですよ!」
セシルの叫びにロイドは首を傾げるだけであった。
ーー
「くっ!」
それと同時にスザクも二機のグロースター相手に苦戦を強いられていた。前衛に立つグロースターの動きが精密かつ、機敏に動くために対応が辛い。その上、後衛のグロースターの援護射撃が的確で流れを完璧に奪われてしまった。
「くそっ、指揮官機が!」
あのサザーランドには完全に逃げられてしまったが目の前に手練れの二機がある。それの対処が先だ。
ーー
「くそっ、見てた通りチートだな!」
「薫、長期戦は止めた方がいい」
「分かっている」
ランスロットのでたらめな軌道。直に見てこそ分かる、こいつは化け物だ。次に会うときには武器も携帯しているのだから手がつけられない。
(ここでスザクを殺せば…)
そんな考えが頭をよぎるが否定される。未だ、中でほのかに生き続けるカオルが拒否しているのだ。
(仕方ないか)
「ライ、ケイオス爆雷を投げる。それと同時に引き上げるぞ、地下を伝えば本部に戻れる」
「分かった!」
指示と同時にケイオス爆雷を投擲。瞬時に爆発しランスロットを襲う、ランスロットはシールドを展開するとそのまま受けきる体勢に入る。
「撤収する!」
その後は全力で撤退。無手状態ではあったがなんとかランスロットから撤退することが出来たのだった。