「解析が終わるまではなんとも言えないが。グロースターの三倍以上はあると見て良いだろうな」
「やられるかと思ったよ…」
「あの機体並みの性能機を持てるようになればお前にも楽させてやれるんだがな」
薫の部屋、そこではパソコンとにらめっこしていた彼女が溜め息をつきながらお茶をすする。
「敵の新型ナイトメアの性能もそうだけどパイロットも凄まじい」
「あぁ、お前と互角に戦えるんだ。かなりの才能だよ」
まだ半年ほどしか見ていないがライは凄まじい。操縦技術もさることながら戦略眼等と言った軍事的な面も鋭い、これほどの逸材がいるなんて思わなかった。
「とにかく、回収したグロースターはお前に渡す。残りも俺が乗ろう。キョウトに送りつけて改良を頼んでいるところだ。出来れば連絡が来る」
「ねぇ、薫」
「なんだ?」
ぴったり真横に座ってくるライを気にせずに話を続ける薫。
「薫はあの機体のパイロットとか知ってるんじゃない?」
「……余計な詮索は身を滅ぼすぞ」
ためしに脅してみたが彼は怯むことなくこちらを見つめてくる。
「あのランスロットって機体。初見で叫んでたから」
「ライには敵わんな」
「僕が必死に君に食らいついているだけなんだけどね」
ライの洞察力も異常だってなにこの主人公、もしかしてどっかかの夢小説が混ざってるって言っても納得しますけど。
「俺は学校に行かなきゃならん。その間にランスロットの解析を頼む」
「分かったよ」
ーー
その頃、特派では先日盗まれたグロースターについての話が上がっていた。
「どうでしたか、あのグロースターは?」
「うん、クロヴィス殿下の親衛隊ので間違いないね」
確認を入れたところ、親衛隊は全滅。そのうち二人は身ぐるみを綺麗に剥がされていた所を見れば、誰だってグロースターが盗まれたのは分かる。
「テロリストにグロースターが渡ってしまうなんて」
「仕方ないんじゃない?あの時はかなり混乱してたしね」
「パイロットもかなりの手練れです。コーネリア殿下がご着任なさるというのに」
「僕たちが言ってても仕方ないよ。それよりセシルくん、これ見て」
ロイドが示したデータを覗き込むセシルはその数値を見て驚愕の表情を浮かべる。
「この数値は異常です。ありえません」
「でも現実にいる。面白いねぇ、このグロースターのデヴァイサーは」
それは敵の反応速度を回数ごとに示した数値。その反応速度も異常だがなにより見るべきは回数ごとに分けられていると言うのに全く同じ数字が並んでいることだ。
つまり、あのグロースターのパイロットであるライはいついかなる時もコンマ秒単位で全く同じ反応時間で動いているということになる。人間は意識をどこに向けているか、その時の思考などで反応速度は増減するものだ。だがこの異常な数値、とても人間とは思えない動きだった。
「面白くなってきたねぇ…」
ーー
「こらルルーシュ。今寝てたでしょ、手が止まってた!」
「だからって叩かないでくださいよ」
「俺を置き去りにした罰だ」
「そうそう、なにやってたのよ昨日」
「あぁ、いや」
いつも通りの生徒会。本当に生徒がやっていいのかと言うぐらいのレベルまでの事務仕事をやらされるここでは大忙しであった。
「はいはい、話を逸らさないの今は部活の予算審査早く終わらせないとどこも予算が降りないでしょ?」
「そんなことになったら…」
「馬術部なんてマジ怒り。またここに突入してきたりして」
去年の悲劇が思い出される。こちらの手違いで予算が降りなかった馬術部の部長が馬ごと生徒会室に突撃したのだ。
「カオルが居なかったらどうなっていたか…」
「あれは凄かったわよね…」
まぁ、あれも偶然なのだが。寝起きのカオルが放ったテレフォンパンチが馬の鼻っ面に直撃し部長を撃退したのは良い思い出だ。
「とっとと終わらせる。授業に間に合わん」
猛烈なスピードで書類を書く薫を見て唖然とする一同。
(書類なんてどんだけ書かされたか)
公私ともに大量の書類を書かされた薫にとってすでに書類の山など簡単な作業と化していた。
ーー
「終わった」
「お疲れさま、カオルが居なかったらヤバかったわ」
「なら書類を溜めるな」
書く作業と言うものは肩が凝る、これが中々キツいんだ。ミレイ枕で休んでいると昨日のことを思い出す。
(枢木スザク、果たして俺にとってどのような人物なのか…)
ルルーシュとかなりの信頼関係を築けていた点から見てスザクともそれなりの仲なのだろうか記憶がないので想像がつかない。
(変に深い関係じゃないと良いんだけど…)
もし、スザクと最近まで関係を持っていたのなら俺が偽物だってことはすぐにわかってしまう。それだけが懸念だった。
「教室に戻るよ…」
「カオル、昨日のシンジュクってどういう意味だったの?」
「……」
「毒ガス騒ぎと関係していたりする?」
ミレイの言葉に黙って目を合わせるカオル。彼女自身、どこかで察している点があるかも知れないが。
「毒ガス事件とは無関係だ。俺は毒ガスなんて関わってない」
「そうよね」
ズルい言い方をした。限りなく嘘に近い真実を述べてしまった。厳密には嘘はついていないがこんな言い方、嘘と同義だ。
「また放課後な」
「えぇ…」
お互いに後味の悪い結果となってしまったが仕方がなかった。
ーーーー
(悪いことしたなぁ…)
一抹の後悔を浮かべながら教室に向かっていると反対方向から見覚えのある少女がやって来た。
「カレン…」
「カオル、久しぶりね」
紅月カレン、偽名ではカレン・シュタットフェルト。彼女を学校で見るのはかなり久しぶりだった。
「良かったのか?」
「えぇ、教室にいても他の子の相手しなきゃならないし」
再会した二人は屋上に向かうと周囲を気にしながら話す。
「シンジュクの件は聞いている。無事でなによりだ」
「ありがとう、でも私たちのせいで多くの人が死んでしまったわ」
「悔やんでもどうにもならない」
「ありがとう」
カレンは意気消沈している様子でいる。こんな彼女を励ましてやりたいのだがどう元気つけて良いか分からない。
「でもよく逃げられたな。かなりの部隊が出動していたようだが」
「うん、私たちを助けてくれた人がいて。誰だか分からないし、生きてるかも分からないんだけど」
「男か?」
「たぶん、カオルは知ってたりする?」
「まさか」
「そうよね、ごめん」
内心、かなり参っているようだ。
「無理すんなよ。話は聞いてやるから」
「ありがとう…」
無事にカレンとの再会を果たしたカオル。こうして原作の開始を実感したのだった。
ーーーー
その後もルルーシュとカレンのせめぎ合いが発生したりしていたが基本的にはノータッチ。二人の間に入ってもいいこと無し、変に二人に警戒されても困るので。
その後、放課後にミレイに呼び出されカレンの歓迎会の準備を行うのだった。
「そっち見つかった?こっちも出来たから始めようか」
「繊細な料理は肩が凝るな」
「大きいから凝るよね胸が」
「それは関係ない…はずだ」
一緒に料理を仕上げたミレイとカオルはホールに用意された机に運び込む。
「うおーすげ!」
「流石はカオルとミレイさん!」
「ふふっ、もっと誉めるが良い」
皿を並べる二人に戸惑うルルーシュとカレン。
「あの、なんですかこれ?」
「知らないはずないだろうルルーシュ。カレンの歓迎会だ」
「歓迎会?」
「カレンは体の事もあるので生徒会に入れるそうだ。まぁ、他の部活に入ってもカレンの人気では満足に動けないだろうしな」
まぁ、カレンに正体がバレても個人的には良い気がするが念のためにルルーシュを庇っておく。
「え、カオルってルルーシュくんと知り合いなの?」
「幼少期からな…幼馴染みという奴だ」
「そうなんだ…」
俺の幼馴染みと聞いて警戒が緩むカレン、次いでナナリーの登場ですっかり笑顔になってくれた。
「さて、まずは乾杯といきますか!」
場も暖まって来たところでリヴァルが取り出したのはシャンパンそれを見た一同は驚く。
「あ、シャンパン」
「生徒会自らこれは不味いんじゃ…」
「まぁまぁ、固いこと言わないで」
「もう、カオル。風紀委員として取り締まってよ!」
「ん、なんだ?」
なんだいシャーリー、俺はシャンパングラスの手配で忙しいんだ。
「なんで、飲もうとしてるのよ!」
シャンパングラスを持って待機しているカオルに突っ込みをいれつつシャンパンを取り上げようとするシャーリー。
「ルルーシュパス!」
「え?」
「あぁ、もう。ルルも簡単に受け取らないの!」
シャンパンの取り合いでごちゃごちゃしている二人。それを横目にカレンにシャンパングラスを渡す。
「「あ…」」
あ…とは何事かと思えば襲いかかるコルクが眼前に。それをカレンが手で払うも後から飛び出してきたシャンパンの中身が放物線を描いて降り注ぐ。
それはカレンのみならずカオルにも見事に降り注ぎ全員がやらかしたと二人を見つめるのだった。
ーー
「着替えは…」
「咲夜子さんが…」
びしょ濡れになったカレンは即刻お風呂へ、カオルは濡れたまま洗濯機の前で腕組をしていた。
「ごめんね、カオル」
「コルクが緩んだ状態で暴れるからだよ」
特に不快感はないが着替えは欲しい。ミレイの用意してくれた女子制服を携えて奥で着替えるのだった。
ーー
「やっぱりスカートはスースーしてるな」
こんなミニスカートでよく恥ずかしくないものだ。常日頃ズボンを愛用している身としては恥ずかしいものがある。
スカートについての脳内議論を行っていたカオルはホールに戻ってくると全員がテレビの前でニュースを見ていた。
「ミレイ、どうした?」
「クロヴィス殿下が亡くなられたのよ」
「殺されたんだってさ」
「そうか…」
犯人として挙がったのは知っての通り枢木スザク。これでゼロの初舞台が始まる。ブリタニアに対する反撃の始まりだ。
(ゼロの誕生か…)