オレンジ事件から翌日。薫はアッシュフォード学園ではなく富士のキョウトにまで足を運んでいた。
「うむ、来たか。白蛇」
「ご招待いただき、ありがとうございます」
「うむ、お主らにもこれを渡そうと思ってな」
桐原に呼び出された薫はライ、伊丹たちを引き連れてやって来るとそこには無頼改が並んでいた。
「これは、白号ですか?」
「いや、白号の戦闘データをもとに開発された無頼の改良機だ。お主らに5機、日本解放戦線に5機を任せるつもりだ」
回転刃刀が装備された無頼改は日本人向けにカスタムされた専用機、それを任されるということは俺たちがどれだけ信頼されているかがよく分かる。
「無論、白号用のパーツも用意してある」
「壱型はお前のものだ。お前が使いやすいようにカスタムしろ」
「ありがとうございます!」
白号壱型(元サザーランド)は伊丹に任せている。後は伊丹が上手くやってくれるだろう。
「それとお主らが奪ってきたグロースターなのだがな…」
「これは、グロースターですか?」
目の前にあるのはグロースターからかけ離れた見た目の機体。肩には白い文字で蛇と書かれたエンブレムも施されているために白蛇用とは分かるのだが。
「なんか、かっこよくなってる」
頭部は兜を被ったようなデザインからツインアイに変更、ブレードアンテナがつけられ通信能力が強化してある。コックピット周りや膝、肘などに装甲が追加され防御力と攻撃力が上がっている。
肩アーマーは紙を真ん中で折ったテントのような形で横からは刃が見えている。
腰には愛用のピッケル。コックピット側面には回転刃刀が懸架されている。それに加え、衝撃拡散自在繊維が編み込まれたマントを装備している。
白号弐型《
「貴方が白蛇ね。会えて光栄だわ」
「このレディは?」
「EUから派遣された技術者だ。スマイラス将軍貴下の開発部隊だったらしいのだが」
「初めまして、クリミア・ディンセンフォールよ」
美しい黒髪を短く切り揃えたクリミアは白蛇と握手を交わす。
「失礼でなければ…なぜEUから?」
「EUの首脳部はパンツァー・フンメル系のナイトメアモドキしか採用しないからよ!メーカーの利権とかが絡まっているんでしょうけど。それなら、私たち開発部が居てもいなくても同じじゃない?」
「確かに、EUは大きな損失だな。君のような技術者を失ったのは」
「ふっ、口が達者なのね」
「そうかい?」
なるほど、EUの技術者が作ったデザインだから騎士っぽいのか。純日本製ナイトメア《白夜叉》。素材はブリタニアのグロースター、開発者はEUの技術者。どこに日本がいるのかと言いたくなるがこれもプロパガンダのためだろうな。
「桐原公、もう一機のグロースターが見当たらないのですが」
「あぁ、それはなぁ…」
「ないわよ。だって2機分使ってるんだもん。その代わり、第七世代に匹敵する性能を獲得したわ」
(うそん…)
ぶっちゃけ、ライの方が腕は上なのでライのために作って欲しかったのだがまさかのパーツ化。ワンチャン、この白騎をライにあげた方が。
「いや、安心しろ。この機体ほどではないがグロースター以上の性能をもつ機体を用意してある」
「それは良かった」
うん、ほんとうに良かったよ。俺はグロースター2機の改良をお願いしたのに一機が消えてたよテヘッなんて言われたら怒るところだったよ。
よく見れば白騎の後ろに見たことある機体が覗き込んでいる。確か、あれは映画で藤堂たちが乗っていた機体に酷似している。
「月下の先行試作機だ。これはインド軍区から来た技術者が作ったものだが性能は折り紙つきだ」
「月下、先行試作機か…」
「輻射波動と呼ばれる兵器を搭載した機体でな白騎に劣らぬ性能を誇っておる」
「こんな物まで用意してくださるとは…ありがとうございます」
本当に桐原には頭が上がらない。深々と頭を下げるとその先に巨大な兵器を見つけた。
「あの奥の機体は…」
「あぁ、あれは…」
「なるほど、貴様があの白蛇か」
奥にあった巨大な大砲を持った兵器を見つけた薫だったがその質問は後ろからやって来た野太い声に遮られる。
「白蛇…」
「失礼ながら貴方は?」
「日本解放戦線の草壁である。俺も機体を受領しに来たのだ」
薫を庇うように前に出るライを見て気にくわない表情をした草壁だが話を続ける。
「白蛇と申します。以後、見知りおきを」
「あぁ…」
「中佐、白蛇さまにその様な態度は」
「ほう日本解放戦線を抜け出したかと思えばこの様な小娘の下に着くとはな伊丹大尉」
草壁の言いように後ろに控えていたジェシカたちも殺気を強める。まさに一触即発、日本のレジスタンス本部で二大組織が睨み合う結果となってしまった。
「伊丹、ジェシカそれにライも…。落ち着け」
こんなところで喧嘩などたまったものではない。まだ正式な面識がない日本解放戦線に悪いイメージを持たれても困る。
「しかし白蛇さま!」
「大層な噂の割りに対して俺のような若輩者が出てこれば当然の反応だ。仕方ない」
これが本心だ。というより、噂に尾ひれが着きすぎて尾ひれが本体みたいな感じになってしまっている。この反応が当然なのだ。
「まだ子供か?」
「あんな奴があの白蛇とはな」
草壁の部下たちも白蛇に対して落胆の声を上げる。
「ふん、我らと並ぶレジスタンスと聞いてみればとんだ張り子の虎だな。部下も程度が知れる」
「っ!」
草壁の吐き捨てるような問答に薫は一瞬だけ体が冷えるような感覚を感じた。その瞬間、腰の刀を抜刀。瞬時に草壁の首元に刀を止める。
「なに!?」
「中佐!」
「部下の悪口は止めて貰おうか。無能の俺に付き合ってくれてる気の良い奴等だよ」
目にも止まらない抜刀に全員が唖然とする。彼女が生身で戦おうとするのは今までになかった分、驚きである。
「ふん、勝手にしていろ」
捨て台詞を吐いた草壁は受領しに来た雷光の元に向かう。それを見て薫は少し後悔する。
「白蛇さま!」
「すまんな、伊丹。お前の立場を悪くさせた」
「いえ、貴方の思い。我々にはしかと届きました」
薫の前で膝を降ろして跪く伊丹たちを見て恥ずかしくなってくるがここはあえて偉そうに深く頷くのだった。
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「超電磁式榴散弾重砲?」
なんじゃ、その漢字の塊?
「うむ、簡単に言えばレールガンだ」
「そんなものを日本解放戦線はなぜ?」
「なにかの作戦で使用すると言っておったが」
「日本解放戦線がですか?」
かなりの間。目立った組織行動を行わなかった日本解放戦線がこんな下準備をしているとは。
「白蛇さま…」
「…嫌な予感しかしないんだよなぁ」
別に平等主義を唱うわけではないが日本人至上主義というのも違う。
(ああいうタイプは周りを巻き込んで暴走するんだよなぁ)
そんなカオルの懸念は見事に的中するのだがそれを知るのはまだ後の話である。
白蛇の抜刀が早い理由。
「双龍閃!天翔龍閃ぃ!」
秘密の趣味にて刀を振るっているせい。