ブリタニアの少年ルルーシュは、謎の少女C.Cから特殊な能力を手に入れた。《ギアス》いかなる相手にでも命令を下せる絶対順守の力。妹ナナリーの為、神聖ブリタニア帝国の破壊を目論むルルーシュ。
そして全てが謎に包まれた薫は自身の組織を磐石なものにしていた。
一方、彼の友人枢木スザクは、帝国内での足場を築きかけていた。
既にこの時、先行きの命運が必然として約束されていたのかもしれない。
「カワグチ湖?」
「そう、カワグチ湖のコンベンションセンター。そこに一泊してくる」
あのサイタマゲットーの事件から数日後。カオルは荷物を纏めて旅行の準備をしていた。
「大丈夫なの?こんな時期に旅行なんて、テロリストたちが活性化しているっていうのに」
「仕方ないだろう。俺が決めたんじゃないんだから、だから俺が着いてくんだよ。女しかいねぇからな」
「じゃあ、これ持っていきなよ」
ライが手渡したのは小型の銃、銃のわりには随分と軽い。
「セラミックと竹を使ったニードルガン。これは金属探知機にも引っ掛からない」
「なるほど、金属探知機があってもいいようにか」
「弾は3発。予備の弾は無いからね」
「まぁ、もしものためにリボルバーも持ってくけどな」
ニードルガンは上着の袖に、リボルバーはジーパンに差し込む。少し大きめのシャツを被せてあるから見える心配はない。
「何かあったらすぐに行くから」
「頼もしい騎士だなお前は。その時は頼りにしてるよ」
そう言って家を後にする薫、それをライは静かに見送るのだった。
ーーーー
カワグチ湖に向かう電車に乗り込んだ薫は用意されたお菓子を頬張りながらゆっくりする。サイタマゲットーの住民の受け入れやらで休む時間がなかったのだ。
「私、トウキョウ租界を出るの初めてなんですよ!」
「ルルーシュも来られると良かったのにね」
「うっ…」
旅行に参加したのはシャーリー、ミレイ、ニーナにカオルの四人。実質の女子会になったのだ。
「良いではないか。夜通し語り明かそうぞ好きな子の話とかさ」
「会長にいるんですか、そんな人?」
「さぁね」
(あぁ、癒されるぅ…)
この死から遠く離れた空気が何よりの癒し空間なのだ。
(ルルーシュの件もあるしコーネリアは強気の姿勢だしで精神崩壊しちまうよ)
ひさびさの外だからか怯えるニーナに寄り添うミレイ。それを横目に薫はひさびさの安眠につくのだった。
ーーーー
「もう、カオルは電車で寝てばっかりじゃない」
「すまん、最近寝てなくてな」
「あんまり、無理しちゃダメよ」
「すまんな、ミレイ」
やっとのこと着いたカワグチ湖のコンベンションセンター。そこはいつも以上の警備が敷かれており、あちこちに警備員の姿が見える。
「物々しいな」
「今日、このホテルでは各国のサクラダイトの配分会議があるの。より厳しい警備だから安心でしょ?」
「そうだな」
各国の主要人物が集まる会議。と言うことはテロ目標になっても文句は言えない場所だ。
「嫌な予感するなぁ…」
するとホテルの入り口では警備員が手荷物検査を行っていた。幸いにも体に武器を忍ばせているために無事であったが逆に警備が随分と手緩い気がする。
「ミレイ、早く荷物をおいて名所とやらにいこう」
「なによ、カオル。随分とノリ気じゃない」
「いや、そう言うわけではなくて…」
「動くなぁ!」
ホールでチェックインの手続きをしていると室内で怒声と銃声が鳴り響く。
「我々は日本解放戦線だ。ここは占拠した、指示にしたがってもらおう!」
(なんでこうなるかなぁ)
両手を上げて無抵抗を示す。あの制服は確かに日本解放戦線、まさかこれほどの組織が押し寄せてくるなんて予想もしていなかった。
ーーーー
「日本解放戦線の草壁である。我々は日本の独立解放の為に立ち上がった。諸君は軍属ではないが、ブリタニア人だ。我々を支配するものだ。大人しくしているならばよし。さもなくば…」
「ルル…」
「ちっ、草壁め…」
どこか暗い部屋に集められたカオルたちは銃口を突き付ける日本解放戦線の兵たちに見張られ人質として扱われた。
(ブリタニア軍もこの状況を把握しているはず。この地下には大きな物資搬入口があったはずだが)
トラックが通れる大きさならナイトメアは悠々と入ることが出来る。狭い空間とはいえ、日本解放戦線が戦線を維持できるとは…。
(そうか、だからこその超電磁式榴散弾重砲か。レールガンで放たれる高速の散弾ならあの限定空間なら絶対兵器になるはずだ)
「よく考えてるじゃないか…」
ーー
人質として扱われてしばらくたった頃。カオルの様子があきらかに異質なものに変わっていくのを感じ取っていた。
(カオル…)
この殺気だった空間にカオルは自然と白蛇としてのモードに入っており彼女自身も殺気だっていたのが主な原因だろう。
ミレイは自分の知らないカオルが現れてくることで不安になる。彼女がどこか遠くの存在になっていくようで不安になるがどうしようもないことだった。
「は、了解しました」
拘束されてからかなりの時間が経過した頃。日本解放戦線の兵が通信を受けて一人の男性を立ち上がらせる。
「な、なんなんだ!」
「いいから来い!」
無理矢理つれていかれる男性を見てミレイは思わずカオルに抱きつく。
「なんなの?」
「見せしめだろうな。ブリタニアと交渉しているなら変な遅滞交渉を行わせないために人質を一人ずつ殺していく。まぁ、方法の1つではあるがな」
怯える彼女に対してひどく冷静なカオル。それを見て、彼女は本当に同じ人物なのかと疑問が湧いてくるほどだ。
「なんでそんなに冷静なのよ」
「慣れたんだよ。嫌でもな…」
彼女の眼は酷く冷めていた。
ーーーー
どちらにせよ。こちらが無傷で逃げ切るのはむずかしい上に俺が白蛇だと自供しても信じては貰えないだろう。
(さてどうしたものか…)
「い、イレブン…」
その時、信じられない言葉がニーナの口から発せられた。この状況で最も口にしてはならない言葉を的確に吐いたニーナに対して今までにない苛立ちを感じる。
(ちっ、バカが。なんでそんなことを口走るんだよ!)
「なんだと、貴様。今なんと言った!?イレブンだと我々は日本人だ!」
「分かったわよ訂正するから!」
「なんなんだ、お前たちは!隣の部屋まで来い!きっちり教え込んでやる!」
激昂した兵はその怒りを納めずにニーナの腕を引っ張り立たせようとする。それを庇おうとするミレイとシャーリーも怒りを買われて大騒ぎになる。
(仕方ない)
薫が袖に仕込んだニードルガンを取り出そうとした瞬間。
「お待ちなさい!」
「なに?」
「私を貴方たちのリーダーに会わせなさい、私はブリタニア第三皇女、ユーフェミア・リ・ブリタニアです!」
その瞬間、その場が凍りつきユーフェミアに視線が集まるのだった。
ーー
ユーフェミアの出現騒ぎでニーナの件は流れてしまったが。彼女が連れていかれ、静かになるとイレブンと呼ばれた兵士はこちらを睨み付けてくる。
「おい、こいつはお前たちの友達だな?」
そういうと兵士は薫に向けて銃口を向ける。
「そ、そうですけど」
「次に飛び降りてもらうのはコイツだ」
「カオル!」
こんな時だけしっかりと答えるニーナの答えに満足した兵士は俺の手を取って立ち上がらせる。どうやら、彼女自身を殺すのではなくその周りから殺そうという魂胆らしい。
「ほら、行くぞ」
(ちっ…)
カオルが連れていかれそうになるとミレイは必死に抵抗して彼女に抱きつく。
「お願い、私も連れてって!私も一緒に飛び降りる!」
「ミレイ!」
「お願い、カオル。貴方が先に死ぬなんて嫌なの!」
日本解放戦線の連中に殴られながらも必死にしがみつく彼女についに折れた奴らは渋々了承する。
「大丈夫か、ミレイ?」
「大丈夫よ、どうせ死ぬんならね」
屋上に向かうためにエレベーター連れていかれた二人は二人の見張りと共に上るエレベーターの中で過ごす。するとカオルはミレイを強く抱き締めると耳元で囁く。
「ミレイ、俺が叫んだら伏せて目と耳を塞ぐんだ。いいな」
「…分かった」
ミレイは詳しくは聞かずに頷く。右手を腰に回してリボルバーを手に取る。弾は6発きり、チャンスは一度。
「伏せろ!」
薫は叫ぶと共にリボルバーを発砲。エレベーターのスイッチを見つめていた兵の腹に当たり苦しみながら倒れる。
「貴様!?」
慌ててマシンガンを向けるもう一人の兵士だがその間に薫はリボルバーを3発放つとその一発が心臓を貫き絶命する。
「貴様、一体…」
「……」
エレベーターの端で苦しむ兵士の脳天を貫き止めを刺す。お陰で返り血がベットリとつくが気にしない。
「いいぞ…」
「カオル…これは一体……」
悲惨な光景におもわず嘔吐するミレイはあくまで冷静なカオルを見つめる。
「俺は佐脇薫、これが本名だ。そして日本人、テロリストだよ。日本解放戦線ではないがな」
「薫…」
ついに言ってしまった。この状況は言い訳が出来ない状況だから仕方がないがミレイにだけは秘密にしておきたかった。
「すまん、黙っていて。騙したかった訳じゃない、ただ俺は…」
気まずくて目をそらしているとミレイに顔を掴まれて動かされる。すると薫はキスをされた。
「ミレイ…」
「これで隠しごとは無しね。良かった、これで私に何でも話せるわよ。辛くても話せなくない、だって私が貴方を愛してるから、なんでも聞いてあげる。貴方を癒してあげる。」
待っていたのは全く予想してなかった展開。それを見て薫は泣きそうになる。
「俺は女だぞ…」
「関係ないわ、私は貴方、佐脇薫という人間に惚れたのよ」
「敵わないな、そしていい女だ」
「あら、今ごろ気づいた?」
「いや、知っていたさ」
もう一度だけ互いに口づけをする。
「元気になった?」
「そうだな!」
屋上にたどり着いたエレベーターのドア越しに待っていたのは兵を撃ち殺す薫。彼女はなぜか、心が晴れ晴れとしていた。
「薫、貴方?」
「なんだ?」
「笑ってるわよ」
「ん?」
今まで能面であった顔が少しだけ微笑んだ。それを見たミレイは満面の笑みで笑い返すのだった。