トウキョウ租界の墓地。そこではシャーリーの父親の葬儀が行われていた。
「もう埋めないであげて!」
シャーリーの母親の悲痛な叫びが響く中。薫は静かに棺を見つめる。忘れていた、いや、知ろうとしなかったのだ。あんな状況でシャーリーの父親の位置など把握できるはずがない。だからこそ目を逸らしていたんだその未来を知ってもどうにもならない事実に。
カレンとリヴァルが謝る中、シャーリーはあくまでも冷静で笑顔を浮かべていた。
「よしなって、それより私はあんたの方が気がかり。ちゃんと泣いた?今、変に耐えると後で辛くなるよ」
「もういいの、もう十分泣いたから…」
カレン、いやルルーシュには相当キツいだろう。自身の事を好いていてくれている女の父親を自分で殺したのだから。
「卑怯だ!」
するとスザクは突然叫ぶと感情に身を任せて言葉を並べる。それを止めようと薫は口を挟む。
「黒の騎士団は、ゼロのやり方は卑怯だ!自分で仕掛けるのではなく、ただ人の尻馬に乗って事態をかき回しては、審判者を気取って勝ち誇る。あれじゃ、何も変えられない!」
「スザク…」
「間違ったやり方で得た結果なんて意味はないのに」
「スザク!」
その瞬間、薫はスザクをぶった。グーで殴らなかったのは薫がまだ冷静でいられている証だった。
「薫…」
「今、ここで。言うべき事じゃないだろう!」
なんで殴ってしまったのかは自分でも分からない。でもほんの少しだけ八つ当たりが入ってしまったことに薫は自責の念に駆られる。
知っていたはずなのだ、彼女の父が死ぬことは。だが忘れていた。一年という年月に加え、なれないテロリストの先導などやることが多く忘れ去っていたんだ。まぁ、これは言い訳だが。
「シャーリー。もし、どうしようもない時は俺に相談しろ。必ず力になる」
「ありがとう、カオル」
「あぁ、じゃあ。また教室でな」
シャーリーに一言添えると薫はスザクを連れてこの場から去る。これ以上、スザクに変なことを言われても困るからだ。
シャーリーが一番仲良くしている生徒会メンバーの半分がシャーリーの父の死に関わっている。
(本当に胸くそわりぃ…)
ーーーー
「薫、大丈夫?」
「あぁ、知っていても俺には選択肢がなかった。いや、本気で助けようとすれば助けられたのに俺はそうしなかった。シャーリーの父を殺したのは俺でもある」
だからってテロリストを止めるつもりなんて毛頭にない。ルルーシュはそれでも前に進もうとするはずだ。俺より悲しい過去を持つ奴なんていくらでも居る。
「ルルーシュもシャーリーもこれ以上悲しみを増やさないために…やってやるさ」
ピリリリリ!
部屋の隅でボーッとしていた薫の元に着信が入る。それはシャーリーであった。彼女はすぐに会いたいと用件を伝えると薫は急いでシャーリーの実家に向かうのだった。
「ごめん、急に呼び出して…」
「気にするな、どうしたんだ?」
「実はルルが黒の騎士団と関わってるって軍人さんが…」
「ルルーシュが黒の騎士団と?」
ちっ、ヴィレッタか。映画だとダイジェストだったしわすれかけてたがこんな出来事もあった。危ないところだった、また後の祭りで思い出すところだった。
「私だって信じたくないの。でも今夜だけ、ルルをつけてみようとと思って…」
「分かった。俺も付き合うよ」
「ありがとう、カオル」
今夜は日本解放戦線が埠頭から脱出する日だったはずだ。そこにルルーシュも現れなければならない。最悪のタイミングだがこっちで何とかするしかないか。
ーーーー
「もしルルーシュが黒の騎士団の仲間だったらどうするつもりだ?」
「分からない。でも今は確かめたいだけ…」
「もしゼロが目の前にあらわれたら?殺すのか?」
「……」
ルルーシュを追って電車に乗り込んだ薫とシャーリーは向かい合いながら後を追う。
「薫は両親はどうなの?」
「俺には居ないんだ、親という存在がな。居たのは知ってるが記憶にない。俺は記憶喪失だからな」
「カオルが記憶喪失?」
「あぁ、だからお前の気持ちを理解してやることは出来ない。でも仲間が死んでいくのは何度も目にした。嫌なものだ…」
カオルの予想外の事実に驚くシャーリー。するとルルーシュは電車を降りて埠頭の方に向かう。するとシャーリーは電話を取り出して電話を掛ける。
「誰に?」
「一応、あの人にも連絡をしておかないと」
「あぁ、そうか」
ヴィレッタを呼び出した二人はこうして埠頭に入っていく複雑な道の埠頭のせいで見失い埠頭をさ迷うことになる。
「どうしよう。迷っちゃった」
「もう止めようシャーリー。十分だ、ここまで…」
薫がシャーリーを諌めて帰させようとした時。湾岸で巨大な爆発が起き、大きな水柱が立つ。
「まさか、テロ?」
(ちっ、このタイミングで!)
「シャーリー、隠れて!」
戦闘が発生したのならどこが戦場になるか分かったものではない。ここは頑丈なコンテナが密集している場所。そう簡単に危険にはならないと思うが。
ーー
「ハッチを砕いて引きずり出してやる。コーネリア!」
日本解放戦線を囮にした作戦でコーネリアに切迫したルルーシュはライフルを向けるがその奥に謎の熱源反応を関知していた。
(シャーリーに薫か!?)
「ゼロ、お前のやり方じゃなにも変わらない。結果ばかり追い求めて、他人の痛みが判らないのかぁ!」
ーー
(くそっ、はぐれた!)
謎の大爆発のせいでシャーリーと離れ離れになってしまった薫は一生懸命に走り回ってシャーリーを探しているとなんとか見つけ出す。
「私が…お父さんの!」
するとシャーリーは銃を構えてゼロに向かって引き金を引こうとしていた。
「シャーリー!」
「え?」
薫の声で振り返った瞬間。ゼロの仮面が外れる、薫はそのまま駆け寄ると。
「すまん、シャーリー」
腹に渾身の一撃をお見舞いする。するとシャーリーは気絶し力なく倒れる。
(危機一髪だったな…)
「お前に人は殺させない…」
「美しい友情だな。学生」
「お前か、シャーリーに変なことを吹き込んだのは!」
シャーリーを気絶させるとコンテナの影からヴィレッタが姿を現す。
「お前、どこかで」
「誰だお前…」
「…気のせいか。それよりゼロの顔を見せてもらおう」
ヴィレッタはゼロに駆け寄ると髪の毛をつかんで顔をよく見る。
「これは驚きだな。学生自身がゼロだったとは、しかもブリタニア人」
「……」
気分よく笑っているヴィレッタの後ろで薫は静かに懐からリボルバーを取り出す。
「こいつをコーネリア総督に引き渡せば私は貴族になれる。騎士候ではない本物の貴族だ、それにまだ生きている。いいぞぅ、どんな処刑がお好みかな?」
「……」
音の鳴らないように撃鉄を上げて狙いを定める。シャーリーを巻き込んだツケをここで支払ってもらう。自身の欲のためにシャーリーを巻き込んだこいつは殺すべきだ。
「総督にはお前たちのことも…」
「必要ない、総督には誰も報告に行かないからだ」
「迂闊、思い出したぞ。お前は半年前、政庁にいたな!」
「そうだな、じゃあ死ね」
「こんなところで!」
容赦なくヴィレッタに撃ち込まれる銃弾。腹に撃ち込まれたヴィレッタは血を撒き散らしながら倒れる。
「ガハッ、きさま…」
「運が悪かったな」
止めを刺そうと銃口を頭に押し付けると引き金を引こうとする。ここで殺せば目撃者は居なくなる。
「っ!」
すると突然のフラッシュバック。
「な、なんだこれは…」
記憶の中に出てきたのは血塗れの死体。二人の男女の死体を見下ろしているような記憶が頭を駆ける。
「これは、カオルの記憶なのか…」
様々な感情の渦が沸いてくる。それに耐えきれずに薫は胃の中身をすべてぶちまける。
「おうぇぇぇぇ!」
銃の持つ手が震えて使い物にならない。暴発の恐れもあるのでしまうと嘔吐物を放置してヴィレッタを抱き抱える。
「海に捨てよう」
幸い、すぐ先は海だ。この状態で海に流せば生き残る可能性は0だ。ヴィレッタを海に落とすとシャーリーを背負ってそのまま立ち去る。ルルーシュには後で説明しよう。
「とにかく逃げるぞ」
こうして間一髪だったがシャーリーとルルーシュの接触を防げたのだった。
復活のルルーシュのテーマ曲「この世界で」が最高すぎる!