「え、薫が行方不明ですか?」
「そうなのよ。弟さんにも聞いたんだけど、昨日は帰ってないって言うし」
薫とC.Cが接触した次の日。生徒会室でミレイがルルーシュに相談を持ちかけていた。
「連絡は?」
「ついてたら苦労しないわよ」
(白蛇として活動しているなら分かるが。流石に連絡が取れないというのは気になるな…)
ルルーシュは薫の裏の顔を考えて思案するがそれはミレイも同じ、テロリスト活動でなにかあったのではないかと気が気でないのだ。
それをお互い知らないものと思っているために相談できない状況だったのだ。
「分かりました。こちからからでも調べておきます」
「頼むわね」
ーーーー
(あー、気分悪り…)
その頃、目を覚ました薫は山奥の廃墟に縛られていた。
「やっと目を覚ましたようだね。君は静かで助かるよ、煩わしい声が聞こえないからね」
「お前は何者だ?」
「僕はマオ。安心して君には危害は加えないから、佐脇薫さん?」
「………」
ガッチリ拘束されているのを確認すると観念して大人しくなる薫。こう言うときは相手を刺激しないのが一番だ。
「昨日の倒れる前は君の声が聞こえたんだけど今は無理だね。まさかC.C以外にもギアスが効かない人がいるなんてね!」
「ギアス能力者か!?」
確かにルルーシュ以外にもギアス能力者がいるのは不思議でないがまさかこのタイミングで出てくるなんて。
「君は静かだけどC.Cの事を知るためには不便だなぁ。まぁいいや、君が倒れる前にヒントは貰ったから」
「俺の携帯!?」
マオが持っていたのは俺の携帯。その画面にはルルーシュと表示された画面が。
「駄目だよ…」
すると額に銃口を突きつけられる。
「思考が読めなくても流石に分かるよ。大人しくしてないと殺しちゃうよ?」
「くっ!」
厄介なものに巻き込まれてしまったと言う後悔となにも出来ない悔しさで唇を噛むのだった。
ーーーー
「本当にここなんだな?」
「あぁ、実際に会っていたしな」
その頃、ルルーシュはC.Cを伴ってシャーリー宅付近の町に来ていた。彼女の案内が恐らく一番最近の目撃証言だろう。何かあったとすればここ辺りだろうが。
「手分けして探そう。その後の目撃情報が欲しい」
「分かった」
ーー
ピリリリリ!
「っ、薫!?」
捜索していたルルーシュの元に薫から連絡が入る。素早く取り出す彼は電話に出ると知らない男の声が聞こえた。
「薫、今まで何をしていたんだ?」
「さぁ、何をしてるんだろうね?」
「なに!?」
素早く後ろを振り向くとそこにはマオが不敵に立っており笑みを漏らす。
「貴様、薫に何をした!」
「いいねぇ、怖い顔だ。自分の女を取られて許せないって顔」
「薫はどこだ!?」
「知りたい?なら勝負しようよこれでね」
「くっ!」
「お話ししようよ。色々とさ」
ーー
(やっぱり着いてきて良かったな)
そんなルルーシュの姿を遠くから監視していたライは鋭い表情でマオとルルーシュを見つめる。あの人物、ライは近づいてはならないと本能で感じる相手だ。
「薫、絶対に助けるからね」
ーー
すぐ近くの高尾山のケーブルカーに乗せられたルルーシュは無人の車内でチェス勝負を行っていた。
(こいつが誘拐犯か?おそらくチェスはきっかけに過ぎない。本当の目的は俺を人気のない場所に連れ込むこと。)
「初めてやるんだよね。このゲーム」
(電話にかけてきたのも演出。いや、俺の顔を知らなかったからだ。と言うことは俺の写真を手にいれる時間がなかったと言うこと…ならば…)
「付け入る隙がある?」
「っ!?」
「しっかりしないと死んじゃうよ。薫がね」
「くっ、なにが初めてだ。この嘘つきめ!」
ーーーー
(手頃な誘拐なら人気のなく、防犯設備のない場所を狙うはず)
高尾山の斜面をバイクでかけ上がったライは周囲を確認する。ケーブルカーの近くに呼んだことは近くに拠点か、それとも薫を捕まえている場所があるはずだ。
(ケーブルカー整備用の休憩所かな)
整備員が腰を落ち着けるための小屋、そこならば該当する。山のチュウフク辺りの小屋に忍んで入ると人がいた形跡がある。慎重に奥に進むが。
「そう簡単には行かないか…」
明らかに誰かが拘束された後があったがそこには誰もいない。どうやら移動させられた後だったようだ。
ーーーー
(ぐぅ…頭いてぇ……)
ケーブルカーの終点にくくりつけられていた薫は対峙するマオとルルーシュが視界に入る。
「ルルーシュ!」
「薫、気がついたか!?」
安堵の表情を浮かべたルルーシュに対してマオは不敵に笑うばかり。
「君たちには罰を与えないといけないんだよね。C.Cをたぶらかした泥棒ネコ達はね」
「くっ!」
どうやら、俺が寝ている間にかなりルルーシュが追い詰められているようだ。銃を構えるマオに対して武装をしていないルルーシュは対抗できない。
「大丈夫だよ。後で薫も送ってあげるからね…ん?」
「薫ー!」
「ライ!?」
絶体絶命の状況でバイクがケーブルカーの路線を飛び越えてやって来た。運転手はライ、彼は空中のバイクから発砲。それと同時にマオも発砲した。
お互いの銃弾でマオのサングラスが飛び、ライはバイクのバランスを崩す。
「うわぁ!?」
「この野郎が!」
大クラッシュするライを援護するためにマオの脛を思いっきり蹴り飛ばす。
「いたぁ!?」
「薫!」
痛がるマオの横を通り抜け薫をお姫様だっこで回収するルルーシュ。めちゃくちゃ重そうだが何も言うまい。
バイクの下敷きになったライも銃で追い討ちをかけるがケーブルカーに逃げ込まれる。
「ルルーシュ、早く解け!お前はバイク上げられないだろ!」
「分かっている!」
車内で新たにライフルを取り出しているマオを見て慌てる二人とバイクから抜け出そうとするライ。
するとケーブルカーが勝手に動き出して降りていく。
「C.C…」
C.Cの登場に車内でハイテンションなマオを横目に拘束を解かれる薫。
「ありがとう、ライ!」
「いや、無事で良かったよ」
バイクから抜け出したライに抱きついてよしよししてやる。その背後で不服そうなルルーシュと煽り率100%のC.Cが横で見ていた。
ーーーー
「まぁ、とにかく助かった。ルルーシュもC.Cもありがとう」
ライも伴って無事にアッシュフォードのクラブハウスに戻ってきた四人は腰を落ち着けると改めて礼を言う。本当にどうなるかと思った。
「大変だったんだ。キスぐらいしてもらわないとな」
「C.C!」
キスか…。まぁ、確かに頬にキスはゲームやアニメでよくある行為だが…向こうが許可しても男にするのは…。C.Cになら喜んでするが…まぁ、ルルーシュも美形なので無理ではないな。
「ほら、手を出せ…」
「「?」」
ルルーシュとC.Cに手を出させると手の甲にキスをする。これでも恋人がいる身なのでこれで勘弁してください。
「ほわぁ!?」
「なんだ、口ではないのか…」
「してやろうか?」
「C.C ぅ!要らないからな、これだけで充分だ!いや、決して嫌という訳ではないがぁぁぁ!」
慌てて立ち上がったせいで椅子に足を取られそのまま倒れるルルーシュ。
「これだから童貞ボウヤは…」
「薫、個人的には彼との付き合いを改める必要があると思うな」
「冗談だよルルーシュ。初めては大事な時まで取っておけよ」
「う、うむ…」
一通り、ルルーシュをからかった所で本題に入る。
「所で、コイツら信用できるのか?」
「失礼な、誰が君を助けたと思ってるんだい?」
「心配しなくていい。裏の世界でライほど信用している者はいない。何せ、こいつは俺の尻のホクロの位置まで知ってるからな」
「は?」
「やめてよ薫!あれは事故だから知らないよ、と言うかあったの!?」
「なら余計にこいつはなんだ!」
「お前たちといると退屈しなさそうだ…」
勝手な盛り上がる男性陣に対して紅茶をすすりながら静観するC.Cであった。
「まぁ、安心しろ。こいつはお前と同類だ…」
「なに、と言うことはギアス能力者か?」
「ライ?」
いきなり凄いことを言われて驚く薫。そんなこと知らなかったぞ。
「ギアス…どこかで聞いたことが…」
「薫、こいつは…」
「ブリタニアに実験されているところを助けたんだ。偶然だがな、その時から記憶を失ってて…まさかギアスの件で実験を」
「僕は…」
嫌な予感がする。そんな気配を察知した薫はライの手を強く握る。
「無理をするな。気にすることじゃない、お前が何者だろうと俺たちの関係が変わる訳じゃない」
「ありがとう、薫」
「すまないな、C.C。この件は…」
「あぁ、予想以上に複雑なようだな。ここで話す話ではないな」
マオの話を戻さなければならない。そう判断した全員は彼の話に移行する。
「それで、マオについて話してもらおうか?」
「分かった。あれは私の責任でもある…」
ーーーー
C.Cからマオの話を粗方聞き終える頃には紅茶が冷め、全員が苦い思いをする。
「C.Cに執着している訳は分かった。なら今度は本格的に仕掛けてくるぞ」
「そうだな、その意見には賛成だ。今度こそチェックをかけに来るだろう」
「でもその話だと薫もルルーシュも弱点を握られてる事になる」
薫が白蛇であること、ルルーシュがゼロであること。二人にとってこれ以上の致命傷はないだろう。
「あぁ、だが向こうにとっての奥の手でもある。俺や薫に捜査の手が伸びればC.Cにも手を出しにくくなるからな」
「奥の手が分かってるならこっちも手の打ちようはあるだろうさ。こっちが有利だ」
「でもそのためには奴のギアスを何とかしなくちゃ…。C.Cさんを使うのは危険すぎる」
「それなら俺の出番だ。俺はギアスが効きにくい体質らしいからな…」
「なんだと?」
「え?」
「………」
薫の言葉に思わず聞き返すルルーシュとライ。ギアスは絶対の力、誰もその力には抗えないはずだ。
「実際にこっちの思考は読めないと言われた」
「確かに…あの場面……」
あの時、ライがバイクで突入してきた時はマオが事前に反応し反撃されたが薫のスネ蹴りにはまったく対応できていなかった。その原因が薫の思考を読めなかっただとしたら。
「C.C…」
「あり得る話だ。彼女は他とは違い、特別だからな」
ギアスはこの世界の理。この世界の外の住人なら世界の理に従う必要はない。
簡単に言えばこの世界そのものを王に例えるなら薫だけは違う王に従う身、なのでそこに発生するはずの強制力が働かない。もしくは働きにくいと言う事になる。
「とにかく、こちらは向こうの出方を伺うしかない。この関東圏全域を俺の黒の騎士団と薫の白蛇グループに見張らせよう」
「賛成だ」
「伊丹さんたちに《殺されそうになった》って言えば血眼になって探すだろうね」
「その件は伏せておこうな」
ライの言葉に薫の血が引く、容易に想像できてしまうのが怖いものだ。
「ルルーシュ、お前はナナリーについてやれ」
「あぁ、そのつもりだ」
「俺もしばらくはクラブハウスで寝泊まりをしよう。もしもの時のためにな。ライは連絡役をたのむ」
「分かった」
折角だ、スザクも呼んでナナリーを喜ばせよう。
一通りの方針が決まったところで一度、解散する。対マオ対策委員会が設立され行動を始める四人であった。