日本近郊の海。そこにはラクシャータを通してインドが提供してくれた潜水艦がひっそりと航行していた。
「それでは黒の騎士団再編成による新組織図を発表する」
潜水艦内でもっとも広い部屋の大画面前に立つゼロ。その隣で同じように黒の騎士団、白蛇グループのメンバーと向かい合う白蛇。今日正式に一つの反抗組織として一つになる事になったのだ。
「軍事の総責任者に藤堂鏡士朗」
藤堂を主とする日本解放戦線残党、白蛇を中心とする白蛇グループ、ゼロを中心とする黒の騎士団。この三大勢力がついに一つとなったのだ。
「情報全般。広報、諜報、外交の総責任者にディートハルト・リート」
ディートハルトはブリタニア人だ。反ブリタニア勢力だけあって一悶着あったがゼロが上手く黙らせる。
「副司令は扇要」
「俺が、でも白蛇は?」
「気にするな、役職の割り当てには俺も関わっている。俺が推薦したんだ」
「不服か?」
「いや…」
最初はルルーシュも薫を副司令にしようとしていた。それを薫が辞退したのだ。彼女曰く、それだと組織の風通しが悪くなると言う。確かにその意見も一理あるのでルルーシュも受け入れたのだ。
「技術開発担当にラクシャータ」
「当然」
そして0番隊。つまりルルーシュの親衛隊の隊長にカレンが選ばれ彼女は思わず笑みを浮かべる。
「作戦参謀、白蛇」
「うむ」
「特務隊総隊長、佐脇ライ」
「はい」
特務隊は参謀直轄つまり白蛇指揮下の特殊部隊を指す。それに参謀はかなり自由に動き回れる役職だ。扇はもちろん、藤堂やゼロにも意見を言える上に指揮権はかなり上位に位置する。実質的な副司令であった。
特務一番隊隊長 伊丹
特務二番隊隊長 ジェシカ
特務三番隊隊長 柏木
特務隊は正直なところ。組織に混乱を招かないための処置の一つであった。白蛇の人望は絶大だ、そんな彼女に付き従ってきた者たちはこの黒の騎士団に白蛇が組み込まれることを良しとしていない。実は伊丹やジェシカたちがその筆頭である。
その反感を少しでも納めるための措置。つまり白蛇の構築してきた指揮系統を黒の騎士団にそのまま組み込むと言うものだった。
(正直、上手くいくか分からないけどね…)
「ゼロ、一つよろしいでしょうか?後程、協議すべき議題があります」
ーーーー
「枢木スザク、彼はイレブンの恭順派にとって旗印になりかねません。私は暗殺を進言します」
「暗殺、枢木をか?」
「なるほどね。反対派にはゼロや白蛇が居たけど。恭順派には居なかったからね」
象徴と言う存在はあるとなしではかなり違う。確かにスザクはこちらにとって目障りな存在になってしまった。
「人は主義主張だけでは動きません。ブリタニアの恭順派にとって旗印が現れた以上。最も現実的な手として暗殺を…」
「反対だ。そのような卑怯なやり方では日本人の支持は得られない」
「そうです。俺たち黒の騎士団は武器を持たないものを殺さない。暗殺と言うことは彼が武器を持っていないプライベートを狙うってことでしょ?」
ディートハルトの提案に藤堂と扇が反対する。
「参謀はどうです?」
「確かに、ディートハルトの意見は概ね賛成だな」
それに対して白蛇は肯定的な反応を示した。だがこれをするに当たっては一つの大きなリスクを抱えている。
「だが殺したとしても殉教者として枢木スザクが神格化されたらこちらが手を出せなくなる。今殺すのは得策ではないな」
「私は最も確実でリスクの低い選択を選んだまで。最終的に決めるのはゼロです」
最終判断はゼロに委ねられる。ゼロは白蛇を伴って自身の私室に入っていった。
ーーーー
C.Cとルルーシュが話している間。薫は書類のサインをひたすら書き続ける。ルルーシュが落ち込みーシュになると基本的に役に立たないのが痛い。
「まぁ、とにかく。スザクを言葉で説得するしかないだろうよ」
「あぁ、だがその材料がない」
「……ルルーシュ。結果的にスザクが仲間になって欲しいから言う」
これはスザクを裏切る行為だと言うのは分かっている。だが彼の心を揺さぶるにはこれ以上の手は無いと判断した。
「なんだ?」
「日本の降伏のきっかけとなった枢木ゲンブ首相は自決したんじゃない」
「なに?」
「スザクが殺したんだよ…」
「っ!?」
ーーーー
「それでは我がアッシュフォード学園生徒会。風紀委員補佐、枢木スザクくんの騎士叙勲を祝いましておめでとうパーティー開始!」
時と場所を移してアッシュフォード学園。そこではスザクの騎士叙勲パーティーが開かれていた。まさかスザクのためにこれほど大きなパーティーが開かれるとは思っていなかったがこれも彼の人徳だろう。
「どうせ他のパーティーはお前は冷遇されたんだろ?ここでは楽しんでくれ」
「ありがとう薫」
柔らかい笑みを浮かべるスザクを見ていると罪悪感が襲ってくる。
「祝いの品でも用意しようと思ったがあいにく急で…すまない」
「気にしないでよ。こうして祝ってくれるだけで嬉しいよ」
「まぁ、こんなものでなら」
すると薫はスザクの手にキスを落とす。この前、ルルーシュにもやっていたがスザクはなにもしてなかった。これで平等と言うやつだ。
「薫…」
「気張れよ。お姫様の騎士なんだからな!」
「うん!」
二人で話していると遅れてきたルルーシュが合流するも続いてロイド伯爵が登場し会場は若干の混乱に見舞われる。
「婚約者だもん…で、いいんだよね?」
「え、えぇ…」
完全に薫のご機嫌を伺っているミレイ。案の定、薫は相変わらずの鉄仮面だが明らかに目を細めて不機嫌そうだった。横でリヴァルが騒いでいる中、ミレイはなんとか現状を打破しようと必死だった。
ーーーー
太平洋に浮かぶ式根島。その付近まで潜水艦を進めていたゼロたちは新兵器であるゲフィオンディスターバーを使って枢木スザクの捕獲作戦を展開させることを決定する。
「次から次へと新兵器って。天才は分からないわねぇ」
「お前もただで終わるつもりはないんだろ?」
「当然でしょ!」
特務隊の専任整備長となったクリミアは新たな新技術に目を光らせる。彼女の本分は改良と応用だ、ただでは転ばない。
「でもヴァリスは柏木機で良いんですか?」
「あぁ、ヴァリスは狙撃銃としても使えるからな」
式根島における戦闘は途中の航空艦の介入さえなければ上手く行くはず。それを援護してスザクを仲間に率入れる。
「ターニングポイントだな」
ーーーー
そして開始された枢木スザク捕獲作戦は順調に進行。捕獲予定地点までの誘導に成功した。
「ゼロ、これで!」
「お前を!」
「捕まえた♪」
切り札であるゲフィオンディスターバーの起動と同時に効果範囲にいたゼロ無頼とランスロットの機体が停止。それを白蛇たちが包囲する形で展開する。
「各機、周辺警戒を厳にしろ。増援を送られたら手間だ」
「「了解!」」
後はルルーシュの説得を待つだけだが…。やはり上手く行かすにルルーシュが拘束されてしまう。
「ゼロ、今助けに!」
「待て、カレン。紅蓮が使い物にならなくなるぞ!」
飛び出そうとするカレンを押さえるがすでに空からは大漁のミサイルが飛来していた。
「全機、飛来するミサイルに弾幕を展開しろ!全弾撃ち尽くしても構わない!撃てぇ!」
薫の言葉と同時に各自手持ちの射撃兵器でミサイルを迎撃する。薫も左腕の速射砲と頭部のバルカンでミサイルを撃ち落とす。
「な、なんだあれは!?」
するとその射線を塞ぐように現れた航空浮遊艦。その光景に思わず息を飲む一同。
「柏木。ヴァリス、フルパワーだ!」
「は、はい!」
薫も指示を出すと同時に背中の大剣を渾身の力で投擲するがその二つの攻撃は虚しくもブレイズルミナスによって弾かれた。
「くそ、これでもダメか!」
「白蛇様、敵艦。下部ハッチを展開、中になにかが!」
「くそっ!全機散開しろ、乱数回避!」
拡散された高熱源体が飛来し黒の騎士団に襲いかかる。そこで薫の意識が途絶えたのだった。