「いっつぅ…」
気を失った薫が目を覚ましたのは滝壺のすぐ横であった。確か、機種不明機に襲われて逃げ惑っていたと思うのだが全く思い出せない。
「やられたわけではなさそうだが…」
機体の残骸が確認されない以上、大破した機体から放り出されたわけではなさそうだが。それにしてもこの島は静かすぎる。
「まさか、違う島とかあるのか?」
それほど長い間、気絶はしてないようだがこうなってしまえば普通はブリタニア軍に捕まっている筈だが。
(とにかく、ちょっと…)
誰も居なさそうなので水浴びでもしておこう。服の中に砂が入りまくって物凄いことになってる。プロテクターと一体化している服を脱ぐと全裸で水浴びをしながら服を水洗いする。
「え?」
「は?」
そんな時だった、草むらからスザクが姿を表したのは。
「マジかよ!」
「くっ!」
薫は慌ててリボルバーを上空に向けて威嚇射撃を行おうとするがその前にスザクがなんか回転しながら飛んできた。
「この身体能力お化けが!」
武術なんて習ってない薫は簡単に滝壺に叩きつけられ沈められる。
「お前は、白蛇だな!」
「降参だ、抵抗はしない!」
いまだに仮面を被ったままなので白蛇とバレてしまったが抵抗するつもりはない。と言うか全裸で痛い目に合いたくないのだ。
ーーーー
その後、服は着させてもらったが木のツルで手を拘束されそうになって慌てて止める。
「待ってくれ、スザク」
「僕は君の事は知らないよ」
「それはないだろう?」
「え?」
あっさりと仮面を取る薫。その素顔を見たスザクは思わず動きを止める。
「薫…」
「…大正解」
「どうして君が…」
「本気で日本を救おうとしてブリタニア軍に入るのはお前ぐらいだよ」
「でもテロリストなんて…あんな事があったのに…」
動揺するスザク。そんな二人はお互いに話が必要だとそう感じたのだった。
ーーーー
「薫が僕の父の事をゼロに教えたのかい?」
「あの事は俺が墓場まで持っていくべき話だ。教えるとしてもルルーシュやナナリーぐらいだろうさ」
「そうだよね…」
スザクがゲンブを殺害したことは本人であるスザク、目撃者である薫とそれを隠蔽した桐原しか知らない筈だ。ルルーシュやナナリーたちすら知らない事件であった。
「でも、本当にそれからどこに居たの?この七年間…親に頼ってはないもん。どうやって一人で…」
「…なんで俺が一人で生きていると?」
スザクのハッキリとした口調に疑念を覚えた薫は思わず聞き返す。
「当たり前じゃないか。君の親はあんな状況で君を気にかけるほどの人間じゃないよ…」
「……」
「だから薫は僕のところに居たんだから…」
繋がった…あの記憶の断片とスザクの証言でやっと繋がった。桐原公の家系ということはバリバリの日本人家系だ。しかも旧時代的な思想を持っていてもおかしくない。だからこそ、アルビノである俺は異端児だったのだ。
(虐待か…)
身体的、精神的虐待やネグレクト。そんな理不尽な暴力が彼女を襲っていたのだろう。そしてスザクによって引き取られ居候状態。ルルーシュたちとはそこで出会ったのだろう。
「そして殺した…」
「え…」
「スザク、俺はな…。親を殺したんだよ二人ともな」
「っ!?」
思わず絶句するスザク。そらそうだろう、彼女も自分と同じ道を渡り歩いてきたのだ。親殺し、彼女はそれを背負いながら暮らしてきたのだ。
なら、もっと納得できない。なぜ彼女は命を懸けてまで日本に尽くすのか。彼女を苦しめたのは日本の伝統そのものだというのに。
「それをお前が聞くか?」
「え?」
「日本は俺たちの母国だろ?」
特別な理由なんてない。例え、苦しい過去があっても俺は日本人で祖国は日本なのだ。それ以上の理由なんてないだろうに。
「そうだね…」
「とにかく、俺たちは今、協力し合えるだろ?」
「うん、取り敢えず。この島で今晩は過ごさないといけないからね」
二人は互いに手を差し出して握手を交わす。ここだけは白蛇とバレてしまったがランスロットのパイロットとしてではなく。二人の親友としてあるのだった。
ーーーー
「秘技、燕返し!」
ピギィー!
刃の潰してある刀を猪の脳天に叩き込むと気絶する。それを木のツタで縛り上げると引き摺ってキャンプ地まで運ぶ薫。対してスザクは海で器用に魚を確保して十分すぎる食料を確保していた。
「やるね、薫」
「お前こそ、素手で魚とか熊かよ…」
「手厳しいな、よく見れば掴めるよ」
「それはお前だけだと判断する」
「そうかい?」
ーーーー
食料を無事に確保し、火を起こした二人は向かい合いながら食事をする。
「それで、どうなんだ?」
「なにが?」
「あの…えっと。ユーフェミア殿下についてだよ」
俺が気になっていたことそれはユーフェミアとスザクについてだ。報道やコンベンションセンターの件で彼女は人格者というのはよく分かった。二人はお似合いのカップルと言えるだろう。
「え、ユーフェミア殿下?」
「そうだよ」
皇族のお姫様と属領となった日本人とのラブロマンス。うん、物語としても美味しいし、なによりそう言った話があってもいいだろう。年頃の男女なのだから。
「すごく感謝してるんだ。こうしてルルーシュやナナリー。薫に会えたのは殿下のお陰だしね。こうしてブリタニア軍人としても居られる」
「お前はブリタニアで居場所を見つけたんだな…」
「うん…薫は?」
「俺は張り子の虎さ。外面だけ成長して中身は空っぽだ」
「そんなことないさ。薫はもう立派だよ、もう僕やルルーシュが居なくても生きていけるじゃないか。でも白蛇なのはびっくりしたけど…立派になりすぎだよ」
「ははっ、成り行きさ。全部、俺が仕組んだ訳じゃないし俺一人ではなにもできなかった」
伊丹、ジェシカたちが居たからこそ今の組織がある。こうしてルルーシュと手を組めた。
「薫、白蛇をやめるつもりはないの?」
「ない」
「テロリストの最期は悲惨だよ…」
「スザク…今ここで逃げてしまえば俺は俺じゃなくなる。俺は一生後悔して行くことになる」
「そうだね、本当に薫は強くなった」
「もし、俺たちの道が重なれば…」
「そうだね、僕もそうしたい。そうなることを願ってるよ」
静かな島で二人は決意する。目の前にいる彼/彼女は戦場では敵なのだと。
次回は他の島メンバーです