「どうだ、こいつは?」
「いやぁ、やっぱり天才は凄いわね。飛行のフロートシステムにエネルギー兵器のハドロン砲。化け物ね」
収容されたガウェインはラクシャータ指導の元に解析と再調整が行われていた。ユーロピアでそれなりの経験を積んだクリミアでもお手上げだと言うのに天才というものは凄いものだ。
「だが戦闘向きでは無さそうだがな」
「流石、あれは実験機だからね。フロートシステムとハドロン砲、それにドルイドシステムの実験機。戦闘を前提に作られてないから動きは鈍重。どっちかって言うと移動砲台ね」
「ドルイドシステムというのは?」
「言ってみればスーパーコンピューターね。ファクトスフィアを遥かに凌ぐ非常に高度な演算能力を持つ高性能な解析装置。これなら移動砲台も兼ねた前線司令部になるわね」
まさにゼロに相応しい機体だ。指揮官が自ら最前線に向かうゼロのやり方に合っているしナイトメアの中なら素顔を晒せる。
「それに、ちょっと思い付いた事があってね」
「なんだ?」
正直なところ。くまなく解析したがフロートシステムの量産や小型化はクリミアの班の技術では不可能だ。だが彼女は小型化もせずに広く運用できるような秘策を思い付いていた。
「砂漠用のサンドボードや通常の航空機を元に考えてみたんだけど。フロートシステムを搭載した板をつくるの」
「板…そう言うことか」
「あら、誰も思い付かないと思ってたんだけど」
薫も予備知識がなければ分からなかっただろう、だが思いついた。
「お前が言いたいのはSFSの事だろう?」
「SFS?」
「すまん、サブフライトシステムの略だ。つまりはそこにナイトメアを乗せて運用するための航空機代わりだな?」
「その通りよ!」
サブフライトシステムはガンダムにて使われたMS運用を前提とした航空機の事だ。飛行能力を持たないMSが空戦を行う際に使用された。それに加えMSの作戦可能区域の拡大にも大きく貢献し長い間運用されていた方法だ。
「確かに画期的だ。それが使えればこちらが圧倒的に優位になる」
フロートシステムを使用したサブフライトシステムには滑走路が要らない。ヘリのようにその場から出撃できると言う利点もある。狭い場所を行き来するナイトメアにとっては画期的な発明かもしれない。
「キョウトに話しは通しておく。試作機の開発を急げ」
「ありがとう、分かったわ」
地上戦がメインのこの時代での制空権は意味あいが強い。これは時代を変えるかもしれないと薫は胸を踊らせながらその場を後にするのだった。
ーーーー
「よくご無事で…」
「あぁ、白夜叉の回収もすまなかったな。ジェシカ」
「いえ、しかし驚きました。いつ降りられたのですか?」
「それが俺にも良く分からなくてな…」
あの時の記憶は突然、切れたような違和感を感じる。もしかして意図的に転送されたのではないかと思うが確証はない。
「それに…」
「白蛇様?」
「いや、なんでもない」
あの時、謎の遺跡の前で見た俺…あれは一体なんだったんだろう。
「考えても仕方ないな…」
自分自身、かなりの特異人物だというのは良くわかってるつもりだ。あのギアスのマークが描かれた門、ギアスと自分がどう関わっているのかも知っていかなければならない。
「ゼロの所に行く…その後は一度、キョウトに出向く」
「白蛇様、九州の件はどうされますか?」
九州の件。澤崎が中華連邦の軍を使って九州を武力制圧した話だ。世間では大騒ぎになっているがこっちには関係ない。
「中華の傀儡に用はない、黒の騎士団としては動かないだろう。その件は我々は静観する」
「承知いたしました…」
「では頼んだぞ。ジェシカ」
ーーーー
「なに、スザクにか?」
「あぁ、正体を知られた。ついでに全裸も」
「最後の情報は聞き流そう。だがそれだとお前はもう…」
ルルーシュの私室に来た理由。それはルルーシュに報告せねばならない事があったからだ。それはもちろん、無人島でスザクに正体がバレた件だ。
「軍や警察にバレた様子はない。アイツも俺の正体については飲み込んだんだろう」
「そうだろうな、俺が同じ立場でもそうする。俺たちはただ他人ではないからな」
「だがもしもの時を考えるともう学園には居られないだろうな」
「すまない。俺のせいで…」
「お前は関係ない。あれは事故だ、どうしようもない」
当然、この事はミレイにも報告してある。彼女はかなり落ち込んでいたが早速、ロイドにこの事を探ってみたが結果は白。つまり、ほんとうにスザクはこの事をだれにも話していないようだ。
《こっちで休学の手続きは済ませておくから安心して。それと、学園祭は来てくれると嬉しいな》
《分かった。学園祭は行くことにするよ》
学園祭であれ、あまりアッシュフォードに行くことは阻まれるが愛しい女の為だ。そこは骨を折るとしよう。
「俺は一度、クリミアたちとキョウトに行く。それと…本当にトウキョウを落とすのか?」
「他に誰がやるんだ?」
「だろうな」
トウキョウに独立国家を創造する。それはルルーシュの悲願である。その為の黒の騎士団なのだ。
「九州の件は任せた」
「あぁ…」
ルルーシュの部屋から退出すると潜水艦の食堂を通る。そこには仲良く話すライとカレンの姿が見える。無人島からさらに仲良くなった気がする。
「お似合いだな」
理想的な美男美女だ。微笑ましい、俺もミレイが居なかったら血涙を流していただろう。
そんな光景を見ながらも薫は一旦、潜水艦を後にするのだった。
ーーーー
ルルーシュが九州の件に介入している頃、薫はキョウトにいた。
「ついにトウキョウに攻め込むか…」
「はい、反ブリタニア勢力の気運も上がってきています。我々が決起すれば雪崩れるように決起するでしょう」
桐原との茶会はすでに習慣となったこの頃。最近は明るい話ばかりで嬉しい限りだ。
「顔は変わらぬが楽しそうで何よりだ。お主のその姿を見ているだけでワシは嬉しい」
「何を言うのです、俺にはもう親族はいません。俺にとって貴方は父のようなものですから…」
「ワシが父か…」
「すいません、出すぎた真似を」
「いや、むしろ心地よい。お主のような娘をもってワシは幸せじゃよ」
「桐原公……」
薫の言葉に偽りはない。彼女は心から桐原を尊敬し、この世界の父と思い。尊敬の念を抱いていた。それは桐原も同じであり、薫と言う少女の親代わりになれたと言うのはなんとも言いがたい良いものだった。
「九州の件は片付きそうか?」
「ええ、ルルーシュも動き出したようですし。じきに収まるでしょう。俺から言わせれば澤崎の方が売国奴ですよ」
「ふん、あやつもあやつなりに考えた結果だろう。だが浅はかだったな」
騒がしい世間に対して静寂な部屋。その中でゼロとスザクによって九州が陥落したと報告されるのはすぐ後だった。
「みなさん、お待たせしました!これより、トウキョウ祖界で最もオープンな。アッシュフォード学園の学園祭を始めます!スタートの合図はこの一言から!」
「にゃー」
全てが順調に進んでいると思っていた。だが、それは悲劇へのカウントダウン。その発端であるアッシュフォード学園の学園祭が開催されたのはその翌日だった。