「おぉ!」
「伊丹さん。凄いですよ、無頼が5機も!」
「そうだな」
あの白蛇事件から数日後、全国のレジスタンスを束ねるキョウトから支援物資が届いた。レジスタンスの支援組織と言っても実力があり、見込みのあるグループにしか支援してもらえない。
「サザーランド4機はあげすぎだと思いますけどねぇ」
「そう言うな柏木、そのお陰でキョウトからの支援を受けられる。ナイトメアの数だけが全てじゃない」
「まぁ、そうですよねぇ」
やけにのんびりとした口調の柏木だが冷静な視線の持ち主で役に立つ。私こと、伊丹を中心に添えたグループは他のグループに比べて弱小だ。
メンバーのほとんどが女性と言う構成は他のグループにはない上に平均年齢も低い。そんな我々がブリタニア軍に勝ったと言う事実は大きい。
「これで白蛇のお眼鏡に適うグループに近づけたでしょうかね?」
「わからん、訓練を欠かすなよ。しばらくしたらシンジュクゲットーに出向いてみる」
「お願いします」
(白蛇よ。私は貴方のご期待に報いて見せる)
伊丹はそう思うと完熟訓練に明け暮れる仲間たちのもとへと向かうのだった。
ーー
「ここがクラブハウスだ。主に生徒会の書類決済など、様々な用途で使われている」
「クラブハウス…」
「そして俺とナナリーが住んでいる場所でもある」
日本に人質として送られてきた際に出会った佐脇薫、彼女はカオル・ヴィヨネットと言う名前に変えてアッシュフォード学園に入学してきた。こういうのを運命、いや運命の悪戯と呼ぶのだろう。
「ところで、なぜ男装を?」
「スカートを履きたくない。女性の格好は怖い…」
「そうか…」
「ごめん、ルルーシュ。その前にトイレに行かせて貰えるか」
「どうしたんだ?」
「さっきから腹が痛くて…」
「そうか、トイレならそこを左だ。俺は咲世子さんに準備をさせるから」
まさか薫と出会えるとは思っていなかったからもてなしの用意をしていなかった。脇腹を押さえる彼女を見送るとほんの少しだけ表情を暗くする。
ここまで話していたが所々、異常な点が見られる。俺と言う一人称に加え、言葉遣いが荒い。まるで本物の男のようだ。男装をしているのはアルビノが原因で日光に当たらないようにしているのだと思っていたが。
《スカートは履きたくない。女性の格好は怖い…》
(あの戦乱の後。身寄りもないアイツはどうやって生き延びていたんだ?)
ルルーシュとナナリーはアッシュフォード家のバックアップのお陰でなんとか生き延びたが彼女は本当に助けてくれる人など居ない。年端もいかない女の子がどうやってお金を稼いだのか…。
「まさか…」
辿り着いた可能性にルルーシュは思わず吐き気がする。男らしい言動に俺と言う一人称、男装などの男性に対する防衛反応的な症状。顔の筋肉が全く、機能していない無表情、そして過去の記憶障害。この可能性ならば全ての辻褄が合う。
「くそっ!」
やりきれなくなったルルーシュは思わず壁を叩く。
「これも全てブリタニアのせいだ!」
昂る気持ちをなんとか抑えるといつも通りの笑顔に戻す。せっかく、ナナリーと会うのだ。これで二人とも気持ちが楽になってくれれば良いんだが。
「ルルーシュ?」
「あぁ、薫。この先にナナリーが居る、ゆっくり休んでいってくれ」
「はい…」
なにか顔色が悪い気がするがナナリーと会えば気持ちも晴れるだろうと踏んだルルーシュは扉を開ける。
「ただいま、ナナリー」
「お帰りなさい、お兄さま。入学式はいかがでしたか?」
「あぁ、退屈だったよ。それより、ナナリー。お前に会わせたい人が居るんだ」
「あら、珍しい。お兄様がここに人を招くなんて」
「そうかい?」
いつも通りの和やかな会話。それを見つめていた薫は少し泣きそうな顔をしている。そんな彼女にルルーシュは優しく行くように促す。
薫はそれにしたがって向かうとナナリーの目の前で止まり、恐る恐る頭を撫でる。
「ひゃっ!」
突然、頭を撫でられ驚くナナリーに反応してすぐに手を離す薫はこちらを見るがこちらは笑顔で良いぞと視線を送る。
「優しい手ですね。とても懐かしいです…」
「ナナリー…」
「その声は…もしかして薫さん?」
「うん…」
「薫さん!生きていたんですね!」
薫の手を慈しむように触るナナリー。彼女は涙を流して再会を喜ぶ。それを見て感極まった様子の薫も涙を流してナナリーの両手を強く握る。
(薫、ナナリー。辛い思いをさせて本当にすまない)
涙の再会を果たした二人を見ていたルルーシュは心の中で謝る。それと同時にブリタニアへの憎しみをさらに募らせる。
(俺は必ずブリタニアをぶっ壊してみせる!)
ーー
「懐かしいですね。あの時は女の人は二人だけでしたから、よく遊んでいましたね」
「……」
「薫さん?」
「え、うん…」
「ナナリー、ちょっと良いかい?」
「はい?」
紅茶を片手に和やかに話すナナリーと薫だが、薫方がぎこちない、それはそうだ。彼女は記憶がないのだから。それを見かねたルルーシュはナナリーに声をかけると少し廊下に出る。
「ナナリー、落ち着いて聞いてほしい」
「どうしたのですか?」
「薫だが俺たちの事をあまり覚えていないかも知れないんだ」
「え…」
「彼女は俺たち以上に辛い生き方をしていたみたいでね。その記憶を封印してしまったんだよ」
「そんな、薫さんにそんなことが…」
あまりの出来事に気を落とすナナリー。本当ならナナリーには言わないでおきたかったがこれは二人のためでもある。
「私はどうしたら…」
「ナナリーはそのままで良いんだよ。これから俺たちで記憶を作っていこう」
「はい、そうですね。お兄さま!」
そう、ナナリーが変に気を使わなくてもいい。彼女が笑っているだけで心は救われるのだ。手短に話を済ませたルルーシュは薫の待つ部屋に戻るとナナリーが言葉を発する。
「そうだ、どうせなら今日は泊まっていってはどうですか」
「「え?」」
ルルーシュと薫の声がハモる。当の本人であるナナリーは楽しそうに答えを待っている。するとルルーシュは素早く薫の元に移動する。
「いいんですか?」
「ナナリーが言っているんだ」
他の奴なら絶対に泊めないが薫なら……まぁいい。
「昔みたいに一緒のベッドで」
「「ほわぁ!!」」
ナナリーはさらに爆弾を投下。流石に二人はすっとんきょんな声を上げて驚く。
「いいの?」
「……いい」
スザクだったら絶対に許せないが薫は女だし、昔からの付き合いだ。………………………………………………………………………まぁいい。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫でふ!」
ところで彼女の予定を全く聞いていなかったが大丈夫のようだ。と言うことで佐脇薫ことカオル・ヴィヨネットの宿泊が決まったのだった。
ーー
「……」
みんなが寝静まった頃。ナナリーの部屋を覗き込むルルーシュ、仲良く眠っている二人を見て一安心する。
(話しかけたときはどうなるかと思ったが…)
こちらの事情も変わったが随分と変わってしまった薫の事を思う。まさか男装までしているとは思わなかったが彼女の過去を思えば仕方ないだろう。
(落ち着きを持っているとはいえ、不安定なのは変わりない。俺やナナリーの目の届くところに居させた方が向こうも安心するだろう)
そういえば、生徒会長であるミレイから生徒会員を集めてくるように言われていた。
(本人も気にしていたしちょうどいい。薫を生徒会に入れよう)
確か、教室で他の女子生徒と生徒会の話をしていた。どうせならミレイ会長に紹介しようとルルーシュは決める。この瞬間、薫の生徒会入りが決定するのだった。