ユーロピアの生活は端的に言えば快適であった。キチンと整った施設に常駐できるというのはありがたいことだ。本当に正規軍が羨ましい。
当の薫も義眼の埋め込み作業を無事に終えて包帯からやっと解放されていた。
「やっと包帯から解放されたか…」
「おめでとうございます」
「あぁ、なんとか一息だな」
義眼の充電も兼ねた眼帯を着けた薫は久しぶりの解放感にホッとする。どこぞの天龍みたいに刀の鍔を模した眼帯はお気に入りだ。まぁ、これから長いこと使うことになるだろうからデザインも大切だし。
「白蛇さま、ユーロピアに来られてから随分と柔らかくなられましたね」
「そうか?」
「はい」
基本、表情を崩さない薫様子が変わったのを気づいたのはつい最近だ。僅かだが笑みのような表情を見せることがある。やっと彼女が気を許してくれたのか…それともこちらに気を使ってくれているのか分からないが。
(僅かでも白蛇さまの支えとなれば良いのですが…)
それは傲慢だろうが、願わずにはいられない。そう言うものなのだ。
今日、レイラたちはスマイラス将軍の護衛任務のためにこの基地を離れている。ユーロピアの作戦も近づいていると言うこともあってナイトメアの修理も適宜行っている。
問題なく稼働できるのは白夜叉含めて4機程だろうか。
「白蛇さまぁ」
「どうした、柏木」
新機体のテストをしていた柏木の訪問を迎えると新型の話になる。
「狙撃銃だけ新調できるみたいなんですけどね」
「やはり機体はまだか」
「はい、流石にそう簡単には。完全新規生産ですからねぇ」
今までのシリーズとは一線を越えた機体を造り上げようとクリミアも必死だ。彼女の満足するまでやってやるのが良いだろう。
「見る限りは義眼と分からぬな」
「はい、ランドル博士はかなり優秀な人のようですね」
色々と機能が備わった義眼なのだが使っているうちに分かるだろう。だが目の周りには痛々しい傷がチラリと見える。それを見るたびに桐原は少しだけ悲しそうな顔をする。
「うぇ…」
静寂な薫の執務室に似合わない鳴き声。拾ってきた赤子。名前が分からなかったので《
「どうした純白?」
「うぅ…」
まだ年齢的には高校生なのに子供を持つなんて…。可愛いから良いのだがこんな反政府的な立場なのに子供を保護するのはあまりよろしくなかったかもしれない。
「怖い夢でも見たのかな?大丈夫だよ、俺が居るからな」
「あう、あぅ…」
「うむ、ひ孫が産まれた気分だ…」
「あながち間違っていないのが考えどころですね」
その様子を微笑ましく見ていた桐原とジェシカはお互いの顔を見る。こんな光景を守りたいと二人は強く願うのだった。
ーーーー
その頃、サンミゲル。そこにて指揮を執っていたモニカは戦線の状況を見て表情を曇らせる。
「戦況は芳しくないようね」
「はい、天候悪化によりナイトメア隊の動きかかなり鈍くなっています」
「砂漠のスコールは水じゃない。砂が降る、地面に染み込むより早く低地へ低地へと砂が滑り落ちてくる。通常装備のサザーランドでは砂に埋まってしまうだろうさ」
「シュン…」
黒の騎士団の大抗争は他のエリアやEU、中華連邦の反抗行動の切っ掛けとなった。ブリタニアの圧倒的な武力で押さえつけているがそれでもこちらの仕事が増えたのは明らかだ。
「付近に援軍を頼める部隊は居ないのか?」
「グランベリーに援軍の要請はしたわ」
「グランベリー?」
現在、手を焼いているのはアルジェリアを中心に抵抗活動を行っている「サハラの牙」ベジャイヤ基地の襲撃を察知して事前に潰そうとした所の悪天候。運がないと言えば良いのだが。
「ほら、マリーベル殿下の」
「あぁ、グリンダ騎士団か。対テロ遊撃機甲部隊の…」
「不満そうね…」
「俺のライオネルを早く使いたいんだけどなぁ」
ランスロット・クラブことライオネルはスザクがナイトオブラウンズ加入するにあたり。ランスロットが2機あるのはややこしいからと改名した名前だ。
「この戦闘狂…」
「ナイトメアが好きなだけなんだけどなぁ」
シュン用のカスタマイズが行われ完全に別機体化していたのでちょうど良かったのもあり、改名したのだが。まだ改良してから実践で使ってないのだ。
「諦めなさいよ、このサンミゲルからベジャイヤまで貴方でも半日はかかる。無駄よ」
「へいへい…」
「じゃあ、私はマリーベル殿下に挨拶するから」
そう言って通信回線を開くモニカの邪魔をしないようにシュンは画面外へと逃げる。
(相変わらず、すごい格好だよなぁ…)
長い金髪は美しく良く手入れが行き届いている。スカートなのは分かる、だがスリット入りって舐めてんのか?誘ってんのか?
いくらマント常備してると言ってもそのスリットは入りすぎだろ!もう前掛けじゃないか!
「シュン、聞いてるの!」
「あぁ、すまん。聞いてなかった」
「もう、自分が出撃できないって分かるとやる気なくすの止めて貰える?」
(そんなつもりないんだけだなぁ…)
「グリンダ騎士団、接敵します! 」
ブリタニア市民の希望の星。戦場の狂犬と呼ばれたシュンは静かにグリンダ騎士団を見つめる。
「じゃあ、俺はこれで…」
「どこいくの?」
「ちょっと、野暮用…」
ーー
「どうしたのトト?」
「そんな、ベジャイヤ基地が陥落しました!」
始めての実践を終えたオルドリンたちグリンダ騎士団。だが護るべき基地だったベジャイヤ基地は陥落。直ぐに急行するのだった。
「ヴィヨネット卿はどこですか?姿を消してもう三時間ですが」
サハラの牙との戦闘を見終えたモニカは相変わらず居ないシュンは何処かと問いただす。
「それが…」
「ん?」
「まもなくベジャイヤ基地に到着します…」
「はぁ!!」
オペレーターのまさかの言葉にモニカは声を上げるのだった。
ーーーー
「おんなじ…」
「顔?」
二人のオズの会合。それと同時に狂犬が目を見開き、獲物を捉えていた。
「オズ、白炎に戻れ!上に敵だ!」
「っ!?」
空力理論をほとんど無視した巨大なロケットブースターを背負ったライオネルはブースターを分離。重力に逆らわずに高速で降下する。
「やはり、白炎。オズか!」
高速で降下するライオネル。それを迎撃しようとするオズだがゲフィオンのせいで反応に遅れる。
「ここは退け、二人のオズよ!」
そんな二人の間に割って入ったのは漆黒の機体《アグラヴェイン》。ブレイズルミナスでライオネルのMVSを弾くと間髪いれずに両腕部のハドロン砲を撃つ。
「ちっ!」
高高度からの落下直後を思わせない動きでハドロンを回避するライオネル。
「ちっ、ナイトオブラウンズは想定外だ!」
「いい機体だな。潰しがいがある!」
シュンは改めて原作介入というフレーズに興奮して笑みを浮かべる。まさか生で動いているコイツらを見ることになるとは。
漫画という静止画でしか見られなかった者たちが動いているのを見ると興奮してきた。
「シュン!なにしてるの!?」
「皇帝陛下の命令は敵の殲滅。一番成功率の高い方法を選んだまで」
「いつのまにロケットブースターなんて用意してたの。あれは人間が乗れる者じゃないのよ!」
「悪い、説教はあとで頼むわ!」
アグラヴェインとライオネルの激突を見つめる二人のオズ。圧倒的なレベルの差を見せつけられ二人は黙り込むしかなかった。
箸休め話のアンケート。幻のストーリーを見せちゃいます!皆さまのおかげでここまで来れた訳ですがこれまでの話でボツになった話をお見せします!ちなみに本編のお相手はミレイですが他のキャラのルートもしっかりありました。そのままお蔵にするのは勿体ないので公開するためのアンケートを取ります!
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王道のルルーシュ√
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手堅くスザク√
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みんな大好きライ√
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え!?まさかのC.C√
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いや!全部見せろ!