「一応、白夜叉には取り込んでみたけどそれだけよ。ほとんどの資材は新型機の製造に回してるから」
ブレインレイドシステムを組み込まれた白夜叉だが機体自体の修復は最低限に留められていた。
「それでいい。白夜叉もこれでも十分な戦闘能力を持っているからな」
白夜叉の基本武装の九割は使い物にならず本来の性能よりかなりの低下が見込まれているがそれでも仕方がない。使える武装は十字剣と手持ちのライフル、MVSのみ。内蔵されていた武装などはダールトン達との戦いで使い物にならなくなってしまった。
「それよりもお前は新型機を…。ここだっていつまでも使える訳じゃない」
「はい、機体自体は7割方完成してるわ。外見は見ての通り完成しているように見えるでしょうけど」
桐原公が色々と手を回してくれているがここに居ることはあまり望ましい状況じゃない。いつスマイラスが裏切るかも分からない以上、のんびりしている時間はない。
「白蛇さま」
「ご苦労、どうだ?」
「やはり動きが…」
「やっぱりな…」
ヴァイスヴォルフ城に居候している薫たちはレイラが連れてきた三人組を密かに監視していた。
「ツァーリの報告は間違いなかったか…」
「そのようです。やはりマフィアを潰した子供たち、ただでは終わらないと踏んでいましたが」
「やはりあの少年の情報操作能力は得難いものがあるな」
ツァーリの情報収集能力は大したものだ。
「白夜叉、無頼、サザーランドはシャトルに積込準備をさせろ。それと、奴等は泳がせておけ」
「承知しました。ですがもし貴方に危害を加えるようであれば…」
「好きにして良い」
「はい」
ーーーー
「作戦は参加する。だが我々は君の傘下には加わらない」
「それは承知しています」
wZERO部隊の次の作戦が決定すると薫はそれを了承する。ブレインレイドシステムの試験も兼ねたものだが。
「前の作戦のデータを見せてもらった。紙一重の作戦だな」
「はい…その作戦で多くの部下を失ってしまいました…」
「結果的にはこの作戦が功をそうした訳だが…」
アレクサンダの自爆作戦はブリタニア軍を混乱に陥れ、多くの機体を巻き添えにした。兵の練度を考えれば良い作戦だ、結果的にはだが。
(そうやって考えてしまうんだよなぁ…)
そんな事を思って言ってしまうのは嫌な気分だ。この世界に来る前と何も変わってないつもりなんだが。他人の死に慣れてしまっているのが堪らなく嫌だった。
「ですが…私のせいで……」
「それと折り合いをつけていくのも指揮官に必要な要素だ。馴れてはいけない」
俺のように慣れてしまうのか、それともその感情を貫き通すのか。
(まぁ、俺には無理だった話だが…)
「肝に命じておきます。そしてお話ししなければならない事があります」
レイラの空気が変わったのを感じた薫は作戦が決まったのだと確信した。
「ワイバァン隊は現有戦力でワルシャワ方面軍の反攻に同調し、ベラルーシ方面に降下する。つまり、味方の拠点から150㎞も離れた場所の敵中降下作戦です」
「無謀だ」
「………」
分かりきったことだが言っておく必要がある。だがここで断るという選択肢はない。それほどの立場ではないのだ。
「分かった。参加する、だがこちらの戦力はよいとは言えないぞ」
「すいません、ありがとうございます」
深々と頭を下げるレイラを見て罪悪感を覚える。しかしここは仕方ないと言わんばかりの雰囲気を出しておく。
「それより…」
「はい?」
「やつらは大丈夫なのか?」
この前、レイラが連れてきた三人組。その三人についてのことだとすぐに分かった彼女はすぐに悟る。
「はい、監視はハメル少佐を始め完璧に…」
「出来てない。映像越しだと見逃すこともある」
「え?」
「現に奴らは動き出してるぞ」
「失礼します!」
薫の言葉にレイラは弾かれるように動きだし部屋から退出する。それを見送ると自分も動き出す。
「やれやれ…」
ーー
レイラが連れてきていた三人組は侍従隊を中心に監視を行っていた。三人が居た部屋を狙っているのは柏木。彼女は部屋で爆弾を巻き付けている成瀬ユキヤの脳天をしっかりと狙っていた。
「窓に近づかないのは戦いの基本なのにねぇ…」
腕も技術もある三人組と聞いていた柏木だったが彼の迂闊さにはため息が出る。柏木は彼の頭を狙える位置の塔を陣取り、狙撃銃を構えていた。
「自分語りは楽しいかい?」
部屋の壁に埋め込んであった盗聴機を聞きながら柏木は引き金に指を添えるのだった。
ーー
「よう、来てやったぜ…」
「おう、遅かったな」
レイラと入れ替わるように入ってきたのは佐山リョウ。彼は拳銃を構えながら薫の部屋に押し入ってきたのだ。それを待っていたように薫とジェシカは平然としていた。
「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
「え…あぁ…」
完全にペースを崩されたリョウは薫の前の高そうなソファーに座らされる。すると薫の飲んでいた同じ紅茶を差し出される。
「安心しろ、毒なんて入っていない。毒が勿体ないからな」
「……」
これ見よがしに紅茶を飲む薫に対してリョウも対抗するように注がれた紅茶を飲み干す。
「俺を足止めさせても無駄だよ。お前たちが行動を起こすのは知っていた。全員に監視がついてる」
「ちっ…やっぱりな。最初からそんな気はしてたけどよ」
リョウは最初に見かけたときから白蛇のことはヤバイやつだと察知していた。アンダーグラウンドで培った勘だが見事に当たりだったようだ。
「心配しないのか?」
「アンタがマフィアみたいな奴だったら俺たちはとっくに死んでるさ。まだ俺たちに資産価値があるうちに話ができてよかったぜ」
「そうか…」
「なぁ、聞いて良いか?」
「良いぞ…紅茶が冷めないうちにな」
本来ならリョウはヴァイスヴォルフ城のナイトメアを盗み出す算段だった…だが彼はここにいる。それは彼の独断であり、話さなければならないという勘に従った結果だ。
「アンタは黒の騎士団のナンバー2なんだろ?戦争を起こすなんて随分と物好きだよな」
「始まりは君たちと変わらんと思うよ」
リョウが聞きたかったこと。それはなぜ彼女があの黒の騎士団に参加し戦争を起こしたのか。バイザー越しだが彼女は見た目的に自分とあまり変わらない。
「ユーロピアに存在する日本人エリア。家畜のように納められたあの檻。あれは日本の縮図だ、あそこから抜け出したいと考えるのはそんなにおかしな事かな?」
「そうだな、俺だってあそこから抜け出した身だ。分かりやすくて助かるぜ。でもアンタは日本人じゃないだろ?」
「いや、純日本人だよ…俺はアルビノでね。色素が薄いのさ」
思い出したかのようにバイザーを外す薫。するとそこからは美しい顔が姿を表す。その顔にリョウは思わず息を飲むのだった。
ーー
「あんた…誰よ…」
「………」
ヴァイスヴォルフ城の城壁外。通信ケーブルの破壊の役割を貰った香坂アヤノは城の古道を使って出た先、そこには人が立っていた。
黒髪の日本人。恐らくアヤノと同じ年ぐらいの少女が眠たそうな目をゆっくりと開いて彼女を見つめる。
「…ヴァイスヴォルフ基地は古城を改良したせいで非正規の道が無数に存在する。城に抜け穴はつき物…残念ながらすべての古道はすでに調査済み……」
「あんた…黒の騎士団の……」
「否」
「え?」
「我々は白蛇さまの直属部隊。決してゼロの部下ではない」
服の袖か静かにナイフを取り出す少女。それを見たアヤノは自分が命の危機に陥っているのを感じた。
「止めてください!」
「っ!?」
「………」
突然の声に驚くアヤノの彼女の出てきた道から出てきたのはレイラ。彼女は薫の部屋の外に待機していた侍従隊のバレットに案内されてここまで来たのだ。
「まさかこんな道があるとは思いませんでしたが間に合ってよかったです。すいません、ここは私に任せて貰ってよろしいでしょうか…えっと…」
「弥生…」
「弥生さん。お願いします」
一拍置くと静かに頷いた弥生はナイフをしまって無言で二人の間を通り、地下の古道に入っていく。
ーー
「すまない、いつも着けているから外すのを忘れていた」
「白蛇さま!?」
「いい、顔を隠していたのは学園に居たからだ。今はあまり意味がない」
仮面を外したのに一番の驚きを表したのはジェシカだが薫の言葉に落ち着きを取り戻す。
「佐山リョウ。俺の元に来る気はないか?」
「な!?」
ストレートな勧誘。思わず動揺したリョウは驚きを隠せないでいた。
「今までの訓練データを含めて全て見させてもらった。君たちは優秀な人材だ。スカウトは当然だと思うが?」
「アンタらはユーロピアから匿って貰ってるんだろ?良いのかよ裏切る真似して」
「いつ俺たちがユーロピアの手先になったのかな?」
「は?」
「なぁ、ジェシカ」
「はい、問題は…いつ捨てるかですね」
さも当然のように発せられた言葉に嘘はないだろう。つまり彼女たちはユーロピアなど取るに足らない存在だと思っているのだ。
「は…ははははは!」
これは笑うしかないだろう、だれもそんな事を思っていない。想像すらしていないだろう。彼女たちは蛇だ、美しい見た目とは裏腹にその鋭い毒牙を突き立てんと大口を開いているのだ。
「アンタは本当にスゲエやつだよ。でもよ、部下なんて嫌だね」
「そうか…それは残念だな。理由を聞いても?」
「アンタの下で何人死んだんだ?俺は駒の補充なんてまっぴらゴメンだ。面白れぇ奴だけどよ…どうせお前も書類の上の数字でしか勘定できねぇ人間だろ?部下を何人見捨ててここに来たんだ?」
エリア11の実情なんて知らない。だが多くの人間が散っていったのは分かる。こんな年でそれをやっているのは感心するが指揮官や親玉なんてもんは部下の死を勘定しか出来ない。
「俺たちは数字の肥やしになんかなら…」
「浅井、岡部、森下、神田、中井、植田、河村、宮川、前川、稲垣、大川、松崎、長田、若林、飯島、谷、大沢」
「急になんだよ…」
突然、始まった薫の呪詛のような言葉の羅列にやってやったと息巻いていたリョウが再び気圧される。圧される彼を見ながらも薫は言葉を続ける。
「石塚、堀内、田代、中嶋、江口、岸本、荒川、本多、西尾、細川、岡野、金井、戸田、安達、稲葉、津田、森川、伊坂、伊丹……」
「白蛇さま…まさか……」
「これはあの決戦で死んだ俺の部下の名前だ…36人も死んでしまった…」
「なっ!?」
呪詛の意味を理解したリョウは驚愕する。
「そしてその戦いの前に死んだ奴等は147人…俺はこれまで183人もの部下を殺してここにいる…俺はあいつらの屍の上で手を伸ばす!あいつらが夢見た世界を…日本を取り戻す!」
広い空間でも響くような怒声、それにハッとしたのは薫もだった。
「すまない…頭に血が上ったな……」
倒した椅子を慌てて直す薫。すると奥の部屋から赤子の鳴き声が響く。
「あぁ…ごめんな純白。急に大声だして」
「子供?」
「白蛇さまが行政特区日本で助けた子です。成り行きでここまで連れてきてしまいました」
必死に赤子をあやす薫を黙って見つめるリョウ。それを横目で確認しながらも他の侍従隊から報告を受けたジェシカは彼の肩を叩く。
「残念ながらタイムリミットです。お二方はともに武装解除、ユーロピアの特務も気づき始めています」
「あぁ」
二人とも大人しく降参したということは二人とも大きな怪我をしていないだろう。そこに少し安堵を覚えつつも白蛇を見つめる。
「勧誘の件だけどよ。少し考えさせてくれ…紅茶。美味かったぜ」
「そうか、返事はいつでもいいからな」
「あぁ、助かるぜ」
来たときよりかは良い表情を見せたリョウを見て僅かに笑みを溢す薫。それにドキッとしながらも彼はその部屋から退出するのだった。
「白蛇さま…」
「難民キャンプからも志願兵を集めておけ。次の作戦は近いぞ」
「はっ!」
(はぁ…つかれたぁ……)
ルルーシュみたいに冷静に説き伏せたかったのだが伊丹たちの事を思い出してしまいついカッとなってしまった。
(俺もまだまだだなぁ…)
箸休め話のアンケート。幻のストーリーを見せちゃいます!皆さまのおかげでここまで来れた訳ですがこれまでの話でボツになった話をお見せします!ちなみに本編のお相手はミレイですが他のキャラのルートもしっかりありました。そのままお蔵にするのは勿体ないので公開するためのアンケートを取ります!
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王道のルルーシュ√
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手堅くスザク√
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みんな大好きライ√
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え!?まさかのC.C√
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いや!全部見せろ!