「桐原公!」
「薫か…無事で何よりだ!」
ヴァイスボルフ城から避難していた桐原は駆け付けてきた薫を見て笑みを浮かべる。
二人が再会したのはユーロピア領内の崩壊した遺跡跡地であった。そこには侍従隊のメンバーが揃い、彼女の帰りを待っていた。
「バレット、状況は?」
「はい…重症4名、軽症12名。重傷者も命の危険はありません」
「よし!」
あの時、侍従隊は確かに襲撃を受けて怪我を負った。純白が人質にあったと言うこともあり反撃できずにいた彼女たちは死んだフリを決行するしかなかったのだ。
「我々の服は全て防弾、防刃仕様ですからね」
「あぁ、備えあれば患いなしだな」
侍従隊のメイド服は防弾、防刃仕様てあり中に着込んでいるのは対衝撃繊維を織り込んだ特注品だ。ついでに薫の服にも施されていたのだが特区の時は無防備な頭を狙われ意味を成さなかった。
「ツァーリは?」
「ここに」
「報告しろ」
「はっ!ヴァイスボルフ城の関係者とスマイラス周辺を精査しました。どうやら副司令のクラウス・ウォルリックを通して情報をブリタニアに売っていたようです」
あの時の超長距離からの砲撃、やはり情報が漏れていたのだ。そして送り先はシン・ヒュウガ・シャイング。
「繋がってきたな!」
どうやら時空の管理者との約束は果たせそうだ。
「純白の居場所は?」
「申し訳ありません。今だに掴めず…」
「あいつは周到な男だ。かならずアイツの近くにいるはずだ!探し出せ!最優先だ!」
「はっ!」
薫が侍従隊の無事を知ったのはついさっき。ドダイに乗り込んだ時だ。それと同時に純白の誘拐を知った彼女はまさに怒髪衝天とばかりに怒り狂ったのだった。
ーー
薫たちが潜伏を始めてしばらく経った頃。レイラとは極秘に定期的に連絡を取り合っていた。
「本当にいいのか、確実に黒だぞ?」
「えぇ、娘さんの為でしょう。仕方ありません」
「相手はスパイだ。やつはクズ以下だぞ…」
「それでも人は変われます。私はそう信じています…」
通信越しだがレイラの言葉に息を詰まらせる薫。
「そうか…なら信じろ。困ったらいつでも呼んでくれ」
「分かりました、それとスマイラス将軍から連絡がありました。貴方の行方を探しているようです。それに関してはこちらも知らんふりをさせてもらいました」
「すまないな…今、俺が奴に見つかれば身動きが取れなくなる。すまないが暫くそうしてくれ」
「分かりました」
「白蛇さま、北海の海上発電所が!」
「なんだ?」
薫の部屋に飛び込んで来るバレット。それを見た彼女は緩ませていた表情を引き締めるのだった。
ーー
「我らは世界解放戦線《方舟の船団》だ。愚かしき為政者たちの圧政に苦しむ市民たちの真の解放を…」
「これは…」
「白蛇さま?」
ユーロピアでテロを起こした一団の犯行声明…この声ややり方は見に覚えがある。多少は加工されているが聞き覚えのある声だ、それにこのやり口は完全に…。
「る…ゼロか」
「え!?」
(ルルーシュが生きている…)
スザクに捕まり、殺されたと報道されていたがやはり生きていた。だがなぜまたテロリストなんかに…。
(いや、違う)
捕まったのは本当だろう、スザクの昇進がその証拠。ならこうして暴れているのがルルーシュだと仮定すると。ブリタニアの手先になっていると言う可能性が高い。
(でもあいつのプライドが許さない。ならギアスか…記憶操作系のギアスなら)
それだと厄介なギアス持ちがブリタニアの中枢部に存在することになる。
「ややこしくなってきたな…」
「はい、ですが好機です」
「あぁ…全員を集めろ」
ーー
全員を集めた薫はルルーシュの手口を解析して今後の展開を考える。あいつならどうするか、紙にまとめてそれを必死に考える。
1、混乱を作る
これはルルーシュの常套手段だ。これは統率の取れた部隊ほど効果を発揮する。ユーロピア軍は士気が低いが巨大な組織だ。混乱による前線の崩壊は致命的だ。
2、その混乱を突いての攻撃
混乱している軍など烏合の衆。それを利用した攻撃はルルーシュの常套手段だ。
「ユーロブリタニアに動きは?」
「確認されていません」
「確か、ユーロブリタニアのトップはベランスと言ったな?」
「はい、かなり人道的な立場の聖人であると」
「なるほど…」
この混乱でユーロブリタニアが攻め込めばユーロピアの住民まで被害が及ぶと考えて渋っているのかもしれない。ならこの進軍の遅さは納得だ。
「ルルーシュが付け込まない訳がないだろうに…」
そんな事をすれば…ルルーシュの事だ。ベランスとやらもただでは済まないだろう。あいつは作戦の邪魔になるなら徹底的に排除する奴だ。
(それで俺も死にかけたしな…)
ナリタの事を思い出すと身震いがする。アイツは本当に容赦がないから困る。
「ちっ、問題ばかり駆け込んできやがって!」
スマイラスの対応やシン・ヒュウガ・シャイングの事もよく分かってないのに。ルルーシュまで首を突っ込んでくるとは思わなかった。
「スザクまでユーロブリタニアに居るなんて…ありえないよな!」
そう、そうに違いない。こんなに俺を居ってくるようにスザクまで来ている訳がない。アイツはブリタニア本土にいるはずだ。
「しかしこの状況は有利だ。ツァーリに連絡しろ!オペレーションハーメルン発動だ!」
「了解!」
薫、そろそろ胃が痛くなってきた頃