「これより部隊を三つに分ける!」
1、ヴァイスボルフ城に残してきた避難民の救出とレイラたちへの増援部隊。
2、イレブン隔離地域への救出隊
3、純白及び清白、白夜の奪還部隊
この三隊に分けて行動を開始する。
「純白の奪還部隊は俺とバレット、弥生、零子の四人で行う。ジェシカは他部隊の指揮統括にあたれ!」
「「了解!」」
レイラたちは独自で方舟突入作戦を敢行すると言う連絡が届いていた。動くならユーロピアが混乱している今しかない。
「各員、奮闘を期待する!」
「白蛇さま、こちらを…」
「これは…」
ジェシカが差し出したのは白蛇の衣装と仮面。完全に元通りとなったものを見て驚く。
「時間がありましたのでバレットたちが直しておりました」
「やっぱり、白蛇さまはその格好じゃないと!」
「すまん」
半年ぶりに袖を通す衣装は驚くぐらいに違和感なく着れた。やっぱりこの仮面と衣装を着ると落ち着く。悲しいな…これに落ち着きを覚えてしまうとは。
「さぁ、白蛇の出陣だ!」
「「「おおぉぉぉ!」」」
ーーーー
「と言って出てきた割りにはすぐに着替えたのは恥ずかしい…」
「仕方ないっすよ。場のノリってのも大切ですからね」
ユーロピア正規軍の軍服に身を包んだ白蛇を含む四人は公用車に乗って本部施設の敷地に侵入していた。
「本当はもっと上のを取りたかった…」
「あぁ、階級ね。大尉でも十分ではないか?」
「せめて佐官クラス…」
「うむ…気持ちはわからんでないが」
何やら弥生が不満そうだがそこらへんまでこっちを持ち上げなくても良い気がするんだが。それだけ慕ってくれるのは嬉しい。
(大尉で潜入ミッションなんてガトーみたいでいいけどな!)
そんな呑気な話をしているが全員が全身に武装を隠し持っている臨戦態勢だ。
「弥生は俺と純白の捜索だ。バレットと零子は機体を探してくれ、余裕があればスマイラスの場所もだ。定時連絡を忘れるなよ」
「「「了解です」」」
燃えるパリを背景にそれぞれの任務を確認すると社外に出る。
「なんだ貴様ら。ここから先は現在…」
「黙れ…」
「うっ!」
スマイラスの命令でクーデター以外の人員を締め出していたようだが、弥生のナイフ投擲で喉を貫かれた若い兵士は言葉を発せずに絶命する。
「あまり殺すなよ。騒ぎになると困る」
「了解…」
ーーーー
「急げ!いつ気づかれるか分からないぞ!」
「誘導に従って順番に降りてください!」
地下の下水道をルートに隔離地区から賛同する日本人たちを救出する部隊。救出と言っても賛同者の多い地区に限定している。流石に全ての日本人を脱出させるほどの手駒もないし時間もない。
その選定をユーロピア入国からずっとツァーリたちの情報担当侍従隊が行っていたのだ。
「でかい顔しやがって何様のつもりだ!」
「てめぇらの指図は受けねぇぞ!」
「随分と荒んでいるな」
「本当に白蛇さまと同じ日本人なんですかね?」
隔離地区の主に若者は随分とガラが悪く、命令口調の侍従隊などに噛みつき、絡んできていた。
「気に入らないなら勝手に残ってろ!」
「なんだとてめぇ!」
ついに白蛇隊の一般兵たちと衝突が発生。一般兵といっても元は小さなレジスタンス所属の者たちだ。これでも我慢した方だろう。
「おい、エスト!」
すると侍従隊のエストが拳銃を持って反発組の一人を撃ち殺す。
「てめぇ!」
「避難の邪魔だよ!」
「殺しやがったな!」
「僕たちは助けてやってるんだ!ボランティアじゃない!歯向かったら殺す!」
金属バットを持って襲いかかる若者の首を掴んで引き倒すとコンバットナイフを喉に突き立てる。
「ガキのワガママに付き合ってる時間はない!」
エストの動きに習ってそれぞれが拳銃などの武器を取り出す。そんな出来事もあってなんとか迅速に避難活動が行われたのだった。
ーー
「ジェシカ、待ってたわよ!」
「お待たせしました。白夜はどうなりましたか?」
「それは安心よ!」
ヴァイスボルフ城の地下工廠。そこにジェシカを筆頭とする侍従隊の実働部隊員たちが乗り込むとそこにはすでにロールアウトされた白夜たちの姿があった。
「総勢10機、盗まれた機体合わせて13機の白夜は揃ってるわ。弾薬も武装も全部、注文通りに揃えた。あとは貴方たち次第よ」
「助かります。マルカル司令は?」
「今、指令室で演説中よ」
クリミアの言葉と同時に工廠に備え付けられたテレビが起動する。するとレイラがユーロピアの民衆に語りかけている姿が映し出された。
《なぜ傷つけあうのでしょうか。人間とはこんなにも悲しい者なのでしょうか?憎しみに支配されてはいけません!私たちは何者からも自由であるべきなのです》
「人々を導く乙女…まさにジャンヌ・ダルクですね」
「エンジンに火を入れて!全機起動するのよ!」
演説を耳にするジェシカの後ろでは白蛇グループが集まり戦闘準備を始めていた。
ーー
《しかし、自由には責任が伴うものなのです。この世界をより良きものにするため。それがユーロピアの掲げる自由だと私の父、ブラドー・フォン・ブライスガウは信じていました》
「アイツ…本当にお人好しだな…」
無線をラジオに繋げて演説を聞いていた薫はレイラの声を聞いて顔をしかめる。自分が利用されていると分かっている。それを承知でユーロピアの混乱が収まればと言葉を発している。
「人に奉仕しすぎる…」
「だめみたいです。スマイラスはもう行政府の席に着いているようですね」
「ここにはいない…」
「機体も運び出されているようですね」
軍本部に乗り込んでみたものの機体も純白も姿がない。動き出すのが遅かった。だが向こうも暴動を予測して人質も機体も運び出されるとは思わなかった。
「一歩遅かったか…」
「どうしますか?」
「俺たちはこのまま潜入を続ける。戦闘指揮はジェシカに一任、アイツらを死なすんじゃないぞ」
「連絡します」
ー ーー
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ーー ー ーー ー
ー ーー ー ーー ー
「どうやら、見つけられなかったようですね」
「純白ちゃんが向こうに居る以上。我々は手出しが出来ません」
薫たちからの通信を受け取ったジェシカたちは少し不安そうにするがすぐに切り替える。
「白蛇さまたち居なくとも我々の成すべき事は変わりません」
するとヴァイスボルフ城のいたるところから警報が鳴り響く。
「これは敵襲?」
「司令室にお繋ぎを…」
「はい!」
ーー
「立て…敵が来た。指示を出せ」
「私は…私には出来ません…」
「甘ったれるな!早く立て…あんたにはここでの役割があるはずだ」
心を通わせていたアキトたちのMIAに放心状態となったレイラにクラウスはそのキャラに似合わないキツい怒声を彼女に浴びせる。
「ここの連中の命はアンタが守る必要がある。司令官としての責任がな。アンタが守れ…」
「そうか…薫。貴女はこんな苦しみにずっと耐えてきたんですね…」
ある時、リョウから聞いた出撃前の話。レイラは彼女の背負っているものをこの瞬間、少しだけ理解できた気がした。
「敵の位置を報告!」
「敵の位置。北東、距離25」
「時速140㎞で近づいてきます!」
「140㎞、森の中を!?」
時速140㎞と言う速度は端的に言えば陸戦ナイトメアが出せる速度ではない。フロートユニット装備のナイトメアならあり得なくはないが、それも瞬発的な速度に過ぎず、長距離を断続的にと言うのはエネルギー的にも負荷のかかる行動だ。
「クレマン大尉の考察は?」
それを陸戦ナイトメア。しかも森の中という悪路を突き進むのは異端と言えるだろう。だがナイトメアの本来の用途は戦車も装甲車も通れないような悪路を突き進み、高い火力で敵地を制圧すると言うのが本来の用途だ。
「動物のような四脚歩行が出来るナイトメアなら悪路でもスピードを出せるわ」
その点から見ればアレクサンダやヴェルキンゲトリクスと言った路面環境、状況を問わずフル稼働出来る機体はナイトメア本来の目的の究極型とも言える。
「四脚のナイトメア…っ!」
「レイラさん…」
「ジェシカさん!」
心当たりのあるナイトメアに戦慄していると工廠から通信が入る。
「新型ナイトメア《白夜》10機はいつでも行けます」
「ありがとうございます!白蛇隊はただちに迎撃!全ての防衛システム起動までの時間を稼いでください!」
ーー
「全機、指定ポイントまで移動、敵を迎え撃ちます」
地下格納庫から出撃する白夜たち。あくまでフロートシステムは使わずに陸路で迎撃に向かう。
「地雷原反応確認」
「敵機、速度落ちません!」
「地雷が爆発するより前に走ってるのかよ」
「まもなく白蛇隊と接敵します!」
グラックスの援護射撃を掻い潜り、ヴェルキンゲトリクスに近づいたジェシカは森の死角から改転刃刀を振り抜く。
「なに?」
それを察知したシンは戦斧で受け止めると四脚の前足でジェシカを蹴り飛ばす。だがそれも分厚い盾に阻まれダメージを与えられなかった。
「まさか…まだ新型のナイトメアを隠し持っていたとはな」
「座標指定。援護射撃開始してください」
「了解!」
すると城内から白夜の一機がキャノン砲を撃つ。ちょうどカウンター砲撃となり、その砲撃はジャンのグラックス周辺に着弾、彼女の援護を引き剥がす。
「バカな、もう弾道計算されたのか!?ヒュウガさま!」
その頃、シンはジェシカとはげしくぶつかり合い。交戦を続けるすると他の白夜も援護に回り一斉放火が彼に襲いかかる。
「各機、援護射撃20秒…撃て!」
総勢8門、高威力のリニアロングライフルの猛射がヴェルキンゲトリクスに襲いかかる。
「ちっ、流石に分が悪いか」
シンが他ルートからの侵入を思案していた時、地面から巨大な壁が出現。ジェシカたちは急いでその中に入ると壁によって姿が隠れる。
「防御壁、展開確認!」