「シン・ヒュウガ・シャイングは捕捉した。それにスマイラスもこちらの手の内だ」
《流石は仕事が早いな…やはりギアスの縁を持つものは違うと言うことか…》
「スマイラスの処置はレイラに任せているがお前としては殺しておいた方が良いのか…時空の管理者?」
《我々を謀った男の末路は決まっている…》
「そうか…」
時空の管理者と名乗る謎の女性。その存在と再びの会合を果たした薫は報告を済ませるとその場を後にする。時間が止まったかのような不思議な空間から抜け出すとホッと息をついた。
「結果的にだけど…これで俺の過去が知れる…」
完全にひょうたんから駒状態だったが結果オーライとしておこう。
ーー
「れ、レイラ…」
完全に拘束されたスマイラスは司令室で座っていたレイラの前に引きずり出された。
「スマイラス将軍…残念です。このような形で再会することになるなんて…」
「………」
薫と二名の侍従隊の護衛の元。レイラはその表情にどの感情も乗せることなく言葉を放つ。
「ですが私は貴方を裁くつもりも断罪するつもりもありません。残念ながら父も母も過去であり。今、復讐しても帰ってこない」
「レイラ…」
「ただ全てが有耶無耶になる前にこうして会えたのは良かった」
「……」
どんな罵声や拳が飛んでくるのではと警戒していたスマイラスはレイラのことを直視できずに目を背ける。彼女に対しての言い訳も償いの言葉ももはや意味を成さない。
「成長したなレイラ」
「えぇ、そうあれと貴方に育てられました」
「私は今でも私の理想を間違いとは思っていない。ユーロピアは変わらねば滅びる。かつての日本のようにユーロピア国民たちも番号で呼ばれてしまう時が来る」
そう言うとスマイラスは薫を睨み付ける。
「私は単に地位が欲しかったわけではない!」
「悪いがユーロピアの事なんて俺たちはどうでもいい。体制が変わろうが滅びようがな…」
「ならなぜ邪魔をした!」
「喧嘩を売ったのはそっちだ」
子供の理屈だと理解はしているつもりだ。一時の感情に突き動かされたのも否定できない。だがそれでは周囲が許してくれなかった。
(俺だってこんなに派手に動きたくなかったさ…)
子供を奪われ部下を撃たれて黙っているのは白蛇ではない。そんな白蛇ではいけないのだ。ゼロを失った今、ゼロに変わる求心力が必要とされる。残念ながらそれが現時点ではその存在が自分しかいないという事実を知らないわけじゃない。
(例え…中身が伴っていなかろうと。お飾りの象徴でもルルーシュが積み上げてきた物を壊すわけにはいかない)
薫としての感情や面子はいらない。白蛇としての教示とプライドを少しでも保たなければ組織が崩壊する。
白蛇隊の主要戦力である侍従隊は薫にも忠誠を誓っている。だがその他は白蛇という名で繋がっている。それは白蛇隊でも全体の八割強に相当する。
「そちらの顔は立てた。だが俺の面子を潰されたのだ、当然の報いだ」(まぁ、ジェシカたちが、怒ったのはそっちの責任でもあるから…)
「貴様…ユーロピアが滅べばどうなるか分かっているのか!」
「知ったことかと言った!大丈夫だよ、ブリタニアは俺たちが滅ぼしてやる…それで文句ないだろ?」(い、いいよね?)
笑みを浮かべながらそう言葉を発した彼女。それを見たスマイラスとレイラは息を飲む。まぁ、薫からしてみれば愛想笑い程度で考えていたのだが。彼女の表情筋は基本的に正常ではない。
「す、スマイラス将軍…取り合えず部屋を用意します。ミカエル騎士団との戦闘が終わるまでそこで待っていてください」
「あぁ…」
「では白蛇。行きましょう」
「そうだな」
こほんと仕切り直したレイラはそう言うと部屋を後にする。
「本当に良かったのか?」
「えぇ、スマイラス将軍の理想は私も共感していました。それに人は変われますから…」
「そうか…」
ーー
スマイラスとレイラの会合を済ませた薫は白蛇隊が集結している部屋に向かい部屋に入る。すると白蛇隊の主要メンバーたちが揃い彼女の到着を待っていた。
「遅くなった。すまない」
「いえ…大丈夫です」
白蛇隊のみの作戦会議室、レイラたちと共同で行わなかった理由。それは行われる作戦内容が全く違い、そしてレイラたちとは関係ないからであった。
「ユーロ・ブリタニアの全権は敵の総大将であるシン・ヒュウガ・シャイングが握っているらしい。つまり現在ユーロ・ブリタニアは内政、軍事的にシン・ヒュウガ・シャイングに依存しているということだ」
ユーロピアもそうだが現時点においてはユーロ・ブリタニアも内政を含め混乱。つまりどちらの国もすでに国としての力を著しく失っている状態である。
「シン・ヒュウガ・シャイングがこちらにいることはレイラたちにより確認された。つまり現在、ユーロ・ブリタニアは指導者不在状態だ。ならばその混乱している隙をつき我々、白蛇隊は作戦に移行する」
もちろん、レイラたちを助けたい気持ちはある。だが本音はもっと先、自分達にはやらねばならないことがある。
「我々はブリタニアに囚われたゼロの奪還作戦を敢行する!」
「ゼロ?」
「まさかユーロ・ブリタニアに?」
薫の言葉に騒然とするバレットたち。ブリタニアのスパイとして働いていたクラウスによるとブリタニア本国から来た軍師がユーロピアに対してあの作戦を展開したらしい。
(アイツは間違いなくルルーシュだ…)
あの作戦の内容に加えて顔も出されれば嫌でも分かる。それにあの眼帯はギアスの暴走を抑えるために使っているのだとしたら100%確定だ。
(なんであいつがブリタニアに加担してるかしらんけど…)
「目標はユーロ・ブリタニアの首都サンクトペテルブルクだ!」
アポロンの馬車の爆破作業は完了している。現在はシャトルの発射ボタンが起爆ボタンが連動するようにプログラミングされているために安全だ。
(ユーロ・ブリタニアの混乱で本国が介入してくるのは目に見えてる…その前に迅速に遂行しなければ…)
「ユーロピア軍は内政の混乱を突かれないためににユーロ・ブリタニアとの国境付近に大部隊を派遣している。それに応じてユーロ・ブリタニアも大部隊を国境に展開中だ」
お互いが戦闘が始まるのを恐れて牽制のために大部隊を展開している。つまりそれさえ越えれば中はがら空きと言うことになる。
つまりフロートユニット装備のナイトメア部隊による強襲作戦は可能だ。
「ユーロピア全てを囮にして我々はゼロ奪還に向かう。総員、こころしてかかれ!」
「「了解!」」
ーーーー
「殿下、枢木卿との定時連絡が来ません。おそらくユーロ・ブリタニアに拘束されたのではないかと」
「うむ、彼の護衛対象はインペリアルセクターを持っているんだったかな、カノン?」
「はい、間違いありません」
ハワイ、ブリタニアの太平洋艦隊が駐屯している基地には航空浮遊艦である《アヴァロン》とグリンダ騎士団旗艦《グランベリー》を含むカールレオン級浮遊航空艦4隻が発進体勢で待機していた。
「悪いねロイド。また連れ出してしまって」
「良いんですよ殿下~。ランスロットのことも気になるしね!」
インペリアルセクターは皇帝であるシャルルの代理という証。その護衛であるナイトオブラウンジとの連絡途絶。これは明確な本国への反逆行為だ。
「うん、頃合いだね。これよりユーロ・ブリタニア首都のサンクトペテルブルクに対して強制査察を行う。全艦発進」
アヴァロンに座乗していたシュナイゼルの号令と共に航空浮遊艦隊が飛び立つのだった。