コードギアス 白蛇は勘違い   作:砂岩改(やや復活)

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サンクトペテルブルク奇襲作戦

 

「この地下通路を通れば出られるはずです。出口は爆破しないといけませんがナイトメアがあるなら大丈夫でしょう」

 

「すまないな、本当に世話になる」

 

「いえ、奇襲部隊以外の部隊がこちらの戦力になるだけでも大助かりですよ」

 

 サンクトペテルブルク奇襲作戦。その作戦前夜、白夜たちが立ち並ぶ地下通路ではレイラと薫が立っていた。

 

「すまない。本当は最後まで戦いたかったが…」

 

「いえ、そちらこそ気を付けてください」

 

 シン・ヒュウガ・シャイングが死ぬ前にサンクトペテルブルクを襲撃しなければならない。奴が生きているからこそのチャンスを無駄にしたくないのだ。

 

「再会できることを祈ります」

 

「あぁ、すまん」

 

 二人は静かに握手を交わすのだった。

 

ーーーー

 

「失態だね。これほどの事態となれば流石に隠しきれないよ」

 

「すべては私の不徳がなすところ。申し訳ありません宰相閣下」

 

 ユーロ・ブリタニア首都、サンクトペテルブルクの中枢。そこにはユーロ・ブリタニア宗主オーガスタ・ヘンリ・ハイランド、通称ヴェランス大公が目の前に座るシュナイゼルに対して頭を下げていた。

 

「責任は取って貰う。でもそれはこのユーロ・ブリタニアを建て直してからだよ」

 

「は?」

 

 本国による強制介入。それによってヴェランス大公も幽閉され本国に身を移されると思っていたが。

 

「ここを建て直すには君がいないと成立しないからね。ここはヴェランス大公…貴方の国なのだから」

 

「シュナイゼル殿下…分かりました。建て直しに全力で取り掛からせて頂きます」

 

「シュナイゼル殿下!」

 

 改めて深く頭を下げるヴェランス。それと同時に部屋に兵が慌てて入ってくる。

 

「何事です!」

 

「申し訳ありません!敵の奇襲です!」

 

「なに!?」

 

 シュナイゼルのそばに控えていたカノンはその言葉を危機思わず狼狽する。サンクトペテルブルク、ユーロ・ブリタニアの中枢に攻撃を仕掛けてくるとは思いもしなかったからだ。

 

ーー

 

「本国の艦隊に全部持っていかれるぞ」

 

「仕方ないだろ…こっちの騎士団はミカエル騎士団以外は壊滅。騎士団長のナイトメアは本国送りさ…」

 

 聖ガブリエル騎士団長のゴドフロア・ド・ヴィヨンと聖ウリエル騎士団長レーモンド・ド・サン・ジルはシンの聖ミカエル騎士団によって壊滅。その専用ナイトメアとして配属されていたナイトメアは本国に回収の運びとなっていた。

 

「まさかブリタニアの一角を担うサンクトペテルブルクがクーデターでここまでに堕ちるとは…」

 

「マリーベル様、10時方向より飛来する無数の物体あり!」

 

「っ!ブレイズルミナスを緊急展開!」

 

「イエス・ユア・ハイネス!」

 

 マリーベルが黄昏ていたその時、空港に停泊していたグランベリーたちにミサイルの雨が降り注ぐ。対応しきれなかったカールレオン級二隻が爆炎を上げながら滑走路に横転する。

 

「《クラウム》《ベイカー》大破横転。炎上中!」

 

「《ラディウム》中破。しかしエンジンをやられました!」

 

「警戒中の部隊が《ベイカー》の下敷きに!」

 

 被害報告を上げるオペレーターたちを見て歯噛みするマリーベル。

 

「姫様!」

 

「すぐにオズたちを出して!」

 

ーー

 

「敵の奇襲です。まさかこんなところで…」

 

「ランスロットはまだ来ないの?」

 

「現在、拘束を解除中。まだ時間がかかります」

 

 突然の奇襲に混乱しているのはアヴァロンも同じであった。最低限の物しか積み込んでいなかったアヴァロンは敵に攻撃されれば成す術もなくやられてしまう。

 

「ここはマリーベル殿下に任せるしかないようだね…セシル君?」

 

「私も出ます。ナイトメアは積み込んでありますから!」

 

「セシル君、無茶はしないようにね」

 

「分かっています」

 

ーー

 

「くそっ、半分しか潰せなかった!」

 

「アヴァロンと赤い船が残ってる。あれは本国の部隊だ」

 

 奇襲部隊の第一派。零子をリーダーとする白夜5機は両肩に積まれていた空のミサイルポッドを破棄すると爆煙で混乱する空港を通りすぎる。

 

「私と2機の3機でここのナイトメアを抑える。二人は市街地の陽動を!」

 

「「了解!」」

 

「フロートシステムが無い敵なんて鴨撃ちだけどね!」

 

 緊急出動するサザーランドたちだが遥か上空にから狙撃してくる白夜たちに対して一方的にやられてしまう。そんなサザーランドの爆発を目隠しにしてこちらに高速で迫ってくるナイトメア。

 

「これ以上はやらせない!」

 

「赤いナイトメア、フロートシステムを!?」

 

 迫ってくるブラッドフォードのデュアルアームズを背部武装ラックに納めていた刀を抜刀しながら応戦。白夜の刀とブラッドフォードのタングステン鋼ブレードがぶつかり合う。

 

「厄介な!」

 

「まさかテロリストがフロートシステムを持っているなんて!」

 

「零子!…っ!」

 

「いかせないよ」

 

 援護に向かおうとした白夜を遮ったのはゼットランドのハドロンランチャー。

 

「くそっ!」

 

「二人は砲撃機を!こいつは私が仕止める!」

 

「わかった!」

 

 二手に別れる三人。零子はブラッドフォードに他の2機はゼットランドに迫る。

 

「ハドロン砲を知っている?」

 

 ゼットランドのパイロットのティンクはハドロン砲を悠々と避ける2機に対して焦りを感じていた。

 

「懐に入れば!」

 

「させないわよ!」

 

「ら、ランスロット!?」

 

 ゼットランドに迫る白夜を抑えるのは赤いランスロット。ランスロット・グレイルはソードブレイザーで斬りかかり一機を押し止める。

 

「奇襲を防がれた!?こいつが隊長クラスか!」

 

ーーーー

 

「サンクトペテルブルクの防衛基地に襲撃です」

 

「グリンダ騎士団も迎撃に出ています」

 

「一部地域では強力なジャミングも確認されています」

 

 カエサル大宮殿の作戦司令室。そこには各所からの報告が上がりそれをシュナイゼルは静かに吟味していた。

 

「不自然だね」

 

「はい、このサンクトペテルブルクを襲うには数が少なすぎます」

 

「効率よく少数で要所を抑えてるが…なにが目的かな?」

 

 それが既に陽動だと分かっていたが理解しがたい。向こうの目的が皆目、検討がつかないのだ。

 

「騎士団長のナイトメアかと思ったのですがそんな気配はありません」

 

「だとすると…私の命かな?」

 

「可能性は十分かと」

 

 そんな会話をしている足元。サンクトペテルブルク郊外にある聖ミカエル騎士団の基地に薫たちは忍び込んでいた。

 

「本当にここでしょうか?」

 

「分からない。俺がシンならまず行動を移す前に…ゼロを潰す。ならこの基地に捕まっている可能性は高い」

 

 真っ先にこの基地の通信設備を潰してサンクトペテルブルク都市部を無線で溢れさせる。そうなればこちらから目を離しやすいと思ったのだが。

 

「思ったより人が多い!」

 

「ですね!」

 

 予想以上に基地内に人が多いのだ。しかも本国の制服を着た人間が。

 

(なにかあるな…)

 

「白蛇さま!」

 

「なんだ…っ!」

 

 先行していたエストの言葉に閉ざされた格納庫を見るとそこには拘束されたランスロットの姿があった。

 

(本物じゃねぇか!)

 

 正真正銘。本物のランスロット、スザクが乗っていた白と金色のナイトメア。

 

(これは早くしないとえらいことになるな…)

 

「薫!」

 

「っ!?」

 

 暗い格納庫。そこに響き渡る声、それと同時に回転しながら蹴りを放ってくるスザクがいた。その蹴りは見事に当たり薫を蹴り飛ばす。

 

「スザク!?」

 

「なぜここにいる!?」

 

「お前こそ、ルルーシュになにをしたんだ!ナナリーにも!」

 

 ナナリー。その言葉を聞いたスザクが動揺する、その隙を見て薫は思いっきり彼の顔を殴り飛ばす。

 

「白蛇さま!?」

 

「ルルーシュを売って、ナナリーを傀儡にして楽しいか!」

 

「アイツはユフィを殺した!」

 

「アイツは日本人を虐殺した!」

 

 もみくちゃになって殴りあう二人を見て慌てるジェシカやエストたち。それでも二人は殴りあいをやめない。というより一方的に薫がスザクを殴っていた。

 

「薫だって分かっている筈だ。あの事件の真実を!」

 

「だからなんだ!そんな権限があのピンクにあったのか!」

 

「きっかけを作ったのはルルーシュだ!」

 

「殺ったのはブリタニアそのものだ!あいつらは俺たちを人間なんて思ってないんだ!だからあんなことが出来るんだ!」

 

「それは…」

 

「お前がナイトオブワンになれるわけないだろ!」

 

 大かぶりの一撃、それをスザクはまともに顔面に受けて倒れる。途中から殴らなくなったのは分かっていたがそう言うところが逆に腹が立つ。

 

(お前ならなれる実力があるさ…)

 

 でもナイトオブワンはそんなものじゃない。今のブリタニアの体制を変えない限りスザクは永遠にナイトオブワンになることはない。

 

「行くぞ…」

 

「は、はい!」

 

 地面に伏せているスザクを横目にさらに奥へと進む。

 

「居た…」

 

 近未来のような真っ暗な空間に納められた人物。その素顔は間違いなくルルーシュであった。

 

「ルルーシュ…」

 

 よく分からない感情が押し寄せ薫は静かに手を伸ばすのだった。

 

 

 


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