かなり遅くなりました。申し訳ありません
「ジルクスタン王国か」
「えぇ、何度も傭兵として我が軍と衝突を繰り返しながらも異常な生還率を誇る傭兵国家」
「だが国土は砂漠と荒野に包まれた死の国。それに加えエリア11とは違って資源にも乏しい国家だ。大軍勢を使って落とすような国じゃないけどな」
ジルクスタン王国の国境線付近。そこに展開していたジルクスタン王国進行軍。その旗艦である青いカールレオン級浮遊航空艦《グレイヴ》。それはナイトオブ13であるシュンに与えられた船であった。
「でもあの軍事力は驚異よ。増長する前に叩き潰さなければならないわ」
「相変わらず生真面目でよろしいこと」
「バカにしてるの!?」
「いや、そんなことはないけどな」
プリプリするモニカの言葉を流しながらシュンは以前の事を思い出す。
ーー
「バトレーから聞いた話なんだけどね。我が国の侵攻計画が遺跡に沿って行われているのではないかと言う話だ」
「失礼ながらそれを俺にしてどうするんです?シュナイゼル殿下?」
ペンドラゴン、そのシュナイゼルの執務室で紅茶を嗜んでいたシュンに話を振ったのはその部屋の主であった。
「いや、父君は最近になって内政や軍事はほとんど任せて籠りがちになっているから心配でね」
「皇帝陛下にはもう政治を行えるような状態ではないと?」
声のトーンを落として質問を投げ掛けるシュン。それを聞いたカノンは冷や汗を流すがシュナイゼル本人は特に気にした様子もなく微笑みを浮かべる。
「そんな事はないさ、ただ心配しているだけだよ。息子としてね」
「えぇ、いかにナイトオブラウンズでも親子関係までは口出しできませんからね、その世間話はお答えしきれません」
「そうだね」
シュナイゼルの逆心を唆せるような言葉を受け流したシュンは紅茶を飲み干して立ち上がると扉のノブに手を掛ける。
「シュナイゼル殿下」
「なんだい?」
「自分は個人に忠誠は誓っておりませんので…」
そう言ってその場を後にするシュン。それを見届けたシュナイゼルは静かに微笑むだけだった。
ーー
(もしこの国にもギアスに関わる物があるとしたら…俺の原作知識が機能しない可能性もあるな)
シュンの目的はあくまでも穏便だ。原作に携わりながらも原作の流れを変えさせないと言うのが彼の目的である。
(あれがベストの筈だしな…)
残念ながらシュンの頭には死にそうな人間を助けながら原作の流れを変えさせない名案などは浮かばない。彼は意図せずに転生してしまったのだ。なにか目的があって来たわけではない。
「とにかく、これだけの大規模作戦の指揮を執るんだからしっかりしてよ!」
「分かったよ」
モニカの声に意識を戻したシュンは目の前に広がる砂漠を眺めながら静かにするのだった。
ーー
《各隊、配置に着きました》
《よし、作戦開始!》
モニカの号令と共に進撃するナイトメア隊。サンドボードを装備したサザーランドたちが国境線を越えて進撃を開始する。すでに宣戦布告を行っており迎撃のためのジルクスタン軍と早速戦闘を開始する。
「敵KMFのゲド・バッカを確認しました!」
「射程ではこちらが劣る。丘陵を利用して接近しなさい!」
ジルクスタン王国のKMF《ゲド・バッカ》は砲撃に特化したタイプのKWFだ。故に射程ではサザーランドに勝るが総合的な性能ではサザーランドの方がやや有利であった。
「数ではこちらが勝る。確実に接近するんだ!」
砂漠は遮蔽物がないが地の高低差が激しい自然環境だ。それは天然の塹壕と化し砲撃を妨げる。砂漠という自然環境において戦闘は中距離から近距離の接近戦にもつれ込むのだ。
「敵地点、確認!」
「詳細なデータを送れ!」
頭部が肥大化した電子戦仕様のサザーランドアイが敵部隊を探知。後方部隊に座標を転送する。
「着弾………いま!」
サザーランドアイの報告と同時に前面に展開していたゲド・バッカたちが巨大な爆発に巻き込まれ空を舞う。中心部にいた部隊は木っ端微塵になっただろう。
「弾着!」
協力な支援砲撃で蹂躙した後にナイトメア隊で残存戦力を殲滅するのがブリタニアの基本戦法だ。ここからかなり後方には超長距離射程の列車砲が数両鎮座しており前線からの指示で砲撃を行っていた。
「各隊前進しろ!」
「「イエス・マイ・ロード!」」
陣形を破壊されたゲド・バッカ隊は襲いかかるサザーランドたちになす術もなく破壊されていく。
「まず第一戦は完勝ね」
「あぁ…」
流石に超長距離射程を誇る列車砲による攻撃は手の着けようがない。敵は一方的に蹂躙されるだろう。
「列車砲の最大射程はジルクスタン都市部のすぐ手前まである。都市部制圧まではどれだけ戦力を温存できるかが肝だな」
「そうね」
前面に展開していた部隊を殲滅したブリタニア軍は戦線を押し上げさらに深く侵攻する。モニカはシャルル皇帝の親衛隊を預かるほどの実力者だ。指揮能力はビスマルクを除けば他のナイトオブラウンズにくらべ頭一つ飛び抜けていた。
ーー
そしてブリタニア侵攻軍は順調に進軍を進めジルクシスタンの最終防衛ラインまで到達していた。
「嫌ね…戦力差を考えれば妥当な過程…でも怖いわ」
「あぁ、同感だ」
ブリタニア軍の侵攻作戦は多少の苦戦はあったものの全て成し遂げてきた。もしものためにナイトオブラウンズが後方で控えている。何が起きても万全の態勢、それは誰が見ても明らかだった。
「最終弾着……いま!」
観測機であるサザーランド・アイの言葉と共にジルクスタンの最終防衛線を粉砕するための超長距離砲撃が着弾する。
「な、なんだ!?」
「うわぁぁぁ!?」
敵の最終防衛ラインを吹き飛ばすはずだった攻撃はブリタニア軍の本隊に襲いかかり密集していた部隊が根こそぎ吹き飛ばされた。
「なにが起きているの!?」
「分かりません、長距離砲撃部隊がこちらを攻撃して!?」
モニカの怒号に慌てるオペレーター。
「グレイヴ上方にシールド展開。砲撃の直撃を避けろ!」
「砲弾、艦に向けて飛来しています!」
「展開急げ!」
シュンの言葉と共にグレイヴに長距離砲弾が直撃するのだった。