ユーロピア最前線、wZERO部隊を中心とする事件後、穏健的であったユーロブリタニアに代わり進駐してきた本国ブリタニア軍は攻勢を強めていたが以前、膠着状態が続いていた。
ルルーシュことジュリアスが行った洋上発電所爆破騒ぎをきっかけに、ユーロピア市民たちの戦争に対する意識改革がなされたこと、そしてもっとも大きな理由は運用兵器の更新であった。
「これがユーロピアの新型の!?」
ナイフを突き立てられたサザーランドは爆発する。突き立てたナイフを収納しマシンガンで牽制しつつ突撃しているのはEU製ナイトメア《トーネード》であった。
従来のナイトメアフレームもどきとも言えるパンツァーフンメルが後方援護、トーネードが中、近距離戦を担うと言う戦術でブリタニア軍を押さえ込んでいたのだ。
「白蛇から提供された試作機、順調ですな」
「あぁ、本国でも量産が決定し続々と戦場に投入されることになるだろう。ヴァイスヴォルフ城と廃棄予定の船一隻程度では釣りが多すぎるな」
「直上より未確認、1」
「なに!?」
後方支援を行っていたパンツァーフンメル隊の真ん中に降り立ったのはランスロット。
「降伏してください、勝敗は決しました。武器を捨てた者を自分は撃ちません」
「ふざけるな!」
「討ち取れ!敵はたったの1機だぞ!」
「残念です」
パンツァーフンメルを次々と撃破していくランスロットに迫るトーネード。
トーネードはランドスピナーで駆けながらランスロットに肉薄するもMVSで切り裂かれる。
虎の子のトーネード隊もランスロットの前では等しく無意味であった。
ーー
「駄目か…」
中華連邦総領事館、そこに設置された無線機たちの前で肩を落としていたのは佐脇ライであった。
彼はゼロの宣言から三日間、定期的に白蛇グループが昔使っていた周波数で呼び掛けているがいずれも反応はなかった。
薫の事だ、なにもせずに手をこまねいているわけではないと思うが。
(やはりEUに居ると言うのが有力な情報なのだろうか)
薫はEUでの事件で大々的にその姿を見せたのももう数ヵ月前、EU政府との強い繋がりがあればそのまま身を潜めていた方が安全だ。
だがこのゼロの宣言を無視するほど彼女も臆病者ではない。
「会いたいよ、薫」
「ライ、大変だ!藤堂さんたちが!」
家族に等しい彼女との再会を夢見るライだったがそれは血相を変えて部屋にやってきた卜部によって現実に引き寄せられた。
ーー
ギルフォードによる黒の騎士団メンバーの公開処刑。その映像はユーロピアに居る薫たちにも届いていた。
「やってくれるな。ギルフォード卿にしては性急な気がするが」
「これでゼロは動かざる得ない…ですか?」
「そうだな。奇跡を起こしてこそのゼロだからな」
レイラたちが去った空き家と化したヴァイスヴォルフ城に戻っていた薫はジェシカの淹れてくれた紅茶を飲むと腕の中で寝ている純白を優しく撫でる。
「行かなくて良いのですか?日本へ」
「すぐに駆けつけたい気持ちはあるよ。だがな」
ゼロの登場、おそらくディートハルトが仕掛けたラインオメガを使ったと言うことは本物だろう。だがここでなにも考えずに日本に行くことは容易にできないのも事実であった。
日本から亡命してきた際に比べ、こちらの人数は数倍に膨れ上がり、ナイトメアもかなりの数を用意している。
こちらもゼロと同じで白蛇の膨れ上がったカリスマで支えている面がある以上、自分だけが日本に向かうことは出来なかった。
「ツァーリと零子たちにとりあえずは任せよう」
一般航空で移動しているはずのツァーリたちの情報次第だ。念のため、即座に動けるように準備はさせているがなにぶん大所帯なので時間がかかる。
(無計画に人を増やしすぎたな)
失った戦力を取り戻そうとしただけなのだがこっちの人数だけでブラックリベリオンの時の黒の騎士団並みに戦力がある。
自身の無計画さに呆れながらも静かに静観するのだった。
(ライとミレイ、元気にしてるかなぁ…)
ーー
処刑が発表された日の暮れ、中華連邦総領事館において爆発が発生、それと同時に一部の中華連邦兵たちが黒の騎士団に対して敵対行動を取り始める。
「ゼロ!大変です中華連邦が!」
騎士団員が慌てて無線を着けるが星刻は目にも止まらぬ早さで団員に近づくと投げ飛ばし、剣を抜く。
「黒の騎士団はここで滅びよ!」
「させん!」
「っ!?」
星刻の横合いから抜刀して斬りかかるライの一撃を受け、身を翻す星刻。
「ほう、黒の騎士団にも体術に優れた者が居るとはな」
「師匠には遠く及ばないけどね」
普段は使わないがライが持つ刀は薫がプレゼントしてくれた数少ない物の1つだ。
出会ってからまだ二年程しか経っていないことを考えたら多い気がするが剣の扱いに多少の心得があるらしい自分にとっては嬉しいものだった。
(これ程の手練れとは…)
星刻としても対峙するライの隙のない構えに動けずにいた。
「星刻さま!」
「よせ!」
随伴していた仲間が剣を構えて斬りかかるが弾かれ吹き飛ばされる。
一見したが見たことない剣術に星刻も慎重にならざる得なかった。
(薫の抜刀はもっと速かった!)
ライは納刀し身を低くして静かに構える。
刀の基本は藤堂や卜部に教えて貰ったがライの扱う剣術の一部は薫がやっていた練習を見て、自分なりに応用したものも含まれる。
正直、薫がやっていた練習は前世に読んでいた漫画の真似に過ぎないのだがそれを実践レベルまで持ってきたのはライの卓越した才能と身体能力あってこそだろう。
「……」
「……」
「待て」
二人の衝突が秒読みといったところでCCが二人の間に立ち、止めた。
「目的は戦闘ではないだろう?さっさと用件を伝えたらどうだ」
「…さすがはゼロの腹心と言ったところか」
「…」
星刻が構えを解くのを見て、ライもゆっくりと体勢を戻す。少し離れた所にはカレンも銃を持って立っており、警戒を解かない。
「中華連邦の総領事は合衆国日本を承認したはずだけど?」
「その方は亡くなられる予定だ」
「大宦官は実質的なトップだろう。それを殺すと言うのか?」
「……」
「分かった。大宦官は私たちと戦って死んだことにすれば良い」
「CC!」
「ゼロは思わぬ引き金を引いたな。高邁な理想か、俗なる野心か」
機体解説
名称 トーネード
白夜のプロトタイプとして計画されていた機体に最低限の装甲と武装を持たせた機体。
白蛇がEUとの交渉材料として提供した。
世代としては第5世代相当、フロートユニットの装備は想定しておらず陸戦向けのナイトメア。