白き鋼 ー Fog Fleet YAMATO ー 作:Arcelf
―――休憩室―――
此処は鎮守府内最大の休憩室である、ホテルの待合室をイメージしたような作りになっている。
休憩室とは名ばかりにちょっとした調理場があり間宮や鳳翔が良く利用し軽食や甘味等を出している場所である。
ここでは暇を持て余した艦娘達や、甘味を食べに来る等よく利用される場所である。
今、其処ではヤマトから帰ってきた艦娘が集まっていた。
「あー‥これより会議を開始する」
「会議ってなんや?ヤマトの事はわかるんよ?でもアレ考えるだけ無駄な気がするでぇ?」
「いや・・しかし何も対応しないのは不味いだろう。なので今分かる情報を共有しようと思う」
「せやな、今分かる事だけでも纏めるのは賛成やぁ。対応は・・提督に投げたらええわぁ」
「・・・そうだな」
休憩室に集まって早々にヤマトの今後の対応に切り出した長門に、何処と無く投げやりな龍驤である。
龍驤はヤマトに艦載機撃墜のお礼をするつもりであったが、これ文句言ったらヤバイんじゃないかと思い言い出せずに悩んだ挙げ句不貞腐れていたのだ。
「この中で最初に接触したのは夕立旗艦の第三遠征隊であったな?」
「「・・・」」
反応が無い。
第三遠征隊の皆は突っ伏していた。
ヤマトに搭乗し非常識な一日を送って疲れているのであろう。
「夕立・・?。寝るなら部屋に行こう?」
「ぽい~‥」
「起きて夕立行くよ。」
「ぽい~」
「ごめんね長門。夕立に聞くなら明日にしてね?」
「あ・・あぁ」
時雨は突っ伏している夕立を見かねたのか、部屋に連れて行くようだ。
長門は有無を言わせない謎の威圧感に戸惑っていると、時雨は夕立ちを連れて出ていってしまった。
「仕方ない・・他は・・」
やはり反応が無い。
「こりゃ、解散した方がええでぇ」
反応の無い面々を見て龍驤は後日にした方が良いと判断した。
「いや・・うーむ・・そうだな」
「話聞けそうにないし、遠征隊抜きで今分かることだけ纏めよか」
「卯月、睦月と阿武隈を誰か部屋に連れてってくれないか」
「ボクが連れてくよっ!」
「仕方ないわね!私も手伝ってあげるわ!」
「なのですっ」
「一人前のレディーに任せなさい!」
騒がしい4人が連れて行ってくれるようだ。
駆逐達は大体寝ている時間なので丁度良いと言った感じである。
そして1人無反応の子が居るのに疑問に思う長門。
「響は一緒に行かないのか?」
「そうだね、少し話を聞きたいね」
「そうか」
「いや、気が変わったよ。一緒に連れて行くよ」
「そうか・・頼む」
「ハラショー」
長門は響の考えていることが分からなかった。
普段から不思議な行動をしているが、一体何を考えているのか全く理解出来なかった。
いつもの事なのである。
そうして響含め駆逐達は皆休憩室から出ていった。
「・・・改めて、泊地で最初に接触したものは誰だ?」
「たぶん、隼鷹やでぇ。まぁ話は聞けへんと思うけど・・」
龍驤はそう言い隼鷹のいる方向へ顔を向けた、それに釣られ長門も視線の先を追うと、窓際のソファーで酒瓶抱えてだらしない姿勢で寝ていた。
「・・・・知ってる者は誰か居ないのか?」
「ウチは接舷するとこ見たでぇ?」
「ほう・・?」
「アホな速度で泊地に突入してドリフトしながら接舷決めよった」
「なに・・?」
「・・・そしてな?水しぶき上げてな?ウチの艦載機落としよったわ」
「水しぶき?」
「艦載機あっちこっちに落ちてな回収大変でなぁ?」
「そ、そうか、ご苦労だな・・龍驤も疲れているなら寝ると良い」
「倉庫の屋根に落ちた艦載機とかなぁ?」
「そうだな!皆も疲れてるようだし今日は解散しようか!」
龍驤から負のオーラのような物が見え始めた長門はこのままでは何かが起こると思い解散を提案するのであった。
そして同意を求めるような視線を周りに向けたが誰も居ない、先程までキャーキャー騒いでた鈴谷達に放心状態で固まっていた明石達まで居なくなっていた。爆睡している隼鷹を残して。
皆、龍驤の異変を察知して逃げたのか部屋に帰っていったのか長門には分からなかった、ただ分かるのは龍驤から逃れられない事だけだった。
長門は遅くまで龍驤の愚痴に付き合わされるのであった。
―――執務室―――
大淀が執務室でヤマトに関する情報を纏めているところへヤマトがやってきた。
――バンッ――
勢いよく扉が破壊され内側に倒れてきた。
開閉の勢いがあったようだ開き切ると同時に蝶番がへし折れた。
扉が破壊されると同時に大淀が構えた。
「随分と貧弱な扉ね」
「あの・・破壊は良くないと思います・・」
「破壊じゃないわ、壊れたのよ」
「どちらも変わらない気がします・・」
ヤマトに大鯨に妖精が入ってきた。
会話から察するにヤマトが扉を破壊したらい。
そんな扉の状況を見て提督は長門が勢い良く開けても壊れなかった扉が壊れた事に長門より力があるのか?と考えていた。
「扉の事は置いておくとして提督よ、食料を頂きたい。他に紅茶等嗜好品も欲しいわね」
扉を壊しておきながら突然の要求に失礼極まりないヤマトであった。
そんなヤマトを見て提督はどうした物かと考え、取り敢えず何時までも固まっていそうな大淀に声を掛けた。
「大淀は下がってくれ。取り敢えずヤマト君?そちらのソファーで落ち着いて話しません?」
提督はその様に言いソファーのある方に向いた。
其処には妙にアンティークなテーブルとソファーが置いてある。白を基調としていて何処かの紅茶姉妹が居座っていそうな雰囲気がある。
そんな一角を見てヤマトは紅茶姉妹が居るんじゃないか?と思っていた。
「金剛・・居るのかしら?」
「金剛?」
「あら?金剛型の金剛よ。あの子紅茶好きでね」
そんなヤマトの発言を聞いて提督の悩み事がまた増えた。
高速戦艦と呼ばれた金剛型の事は知っている、艦艇の知識は艦娘を運用する上で必要不可欠であるからだ。
それに金剛が紅茶好きと言う発言が問題であった、ヤマトの口ぶりからするに金剛を知っている様である一体何処でどの様に知ったのか。
ヤマトは戦艦本体に妖精と会話出来る事、大鯨の事と言い艦娘を何処まで知っているのか悩み事が増える一方であった。
そんなヤマトはソファーへと移動していき遠慮など微塵もなくどっしりと腰を下ろした、その横には大鯨が借りてきた猫のの様な状態で縮こまっている。
そこに巨大妖精は2人を挟んで真ん中に両腕を組みドヤ顔に見えるような顔で堂々と座っていた。
提督はそんなヤマトを見て気にするだけ無駄かと気を取り直しヤマトの対面に座った、大淀は執務机に付いてメモを取る様だ。
「さて、改めて言うわ。食料に茶葉などの嗜好品が欲しいわ」
ヤマトの一言目がそれであった。
「直球だねヤマト君・・。食料を提供と、出来るけどそんなに量は出せないよ?此処も結構キツくてね」
ヤマトとの今迄の会話で回りくどい話しをすると面倒くさい事が起きると理解した提督は同様に直球で返すことにした。
「そうねぇ?タダで寄越せとは言わない、それなりの見返りを出すわ」
「なら・・・霧の事が知りたい」
提督はヤマトという存在が気になっていた、自分と霧をそう言っていた。
本体のあの異様な武装、ビームにミサイルと現代では到底不可能な技術で出来ている事だけは理解できる。
今迄の会話からするにヤマトは気づいたら海上に居たという事からドロップ的な存在というのが分かる。
しかしドロップという存在にしては不可解な点が多すぎる、自身を霧と理解し何か目的がある様な行動を取っている事。
また妖精との会話に、艦娘の為に行動しているような様子。
艦娘の守護者か何かかと思い始めていた提督。
「あら、霧について知りたいの?。とても・・高く付くわよ?」
素直に教えてくれなさそうなヤマトにちょっとした期待は打ち砕かれたのである。
「・・ヤマトは何を提供出来る?」
「そうねぇ、これなんかどうかしら?」
そう言いヤマトは拳銃を一丁ナノマテリアルで作り上げた。
黒く艶消しのような光を反射しない色で、グリップを箱に組み込んだような四角い角ばったデザインだ。
「・・・拳銃?」
何もない所から物を作り出すヤマトに慣れてきた提督であった。
「荷電粒子射出装置よ」
「家電・・何だって?」
「荷電粒子射出装置。分りやすく言うならビームが出る銃ね」
「ビーム?・・え、これ・・ビームが出るの?」
提督は若干自分の耳を疑いつつもテーブルに置かれた銃をまじまじと見た、ヤマトを知らなければビームが出る銃なんて一蹴していたであろうそれを。
「そうね」
「参考までに性能は・・?」
「計算が正しければ射程は数キロに十センチ程の鋼鉄なら貫通する・・おらくね。実際撃ってみないと分からないわね」
「おそらく?いやそれ以前にオーバーテクノロジー過ぎる・・すまないが、これ以外に」
現在の価値として見たら幾らになることやら、それに世間に露見した場合に程面倒事の嵐が襲ってくるのは深く考えなくても理解出来る。
仮に受け取っても扱いに困るし、解析した所で何もわからない気がする。
ヤマトの常識はどうなっているんだと思っていた提督は艦娘に詳しい事を思い出し艦娘の情報を得られないか情報収集に変更した。。
「そうだな・・艦娘について教えてくれ」
「あら・・要らないの?」
「扱いに困る・・」
「そうねぇ?艦娘は艦娘運用しているあなた達が詳しくなくて?」
「金剛が紅茶好きな話をしていたな・・?その金剛は未だに確認されていないんだ」
「あら?・・理解したわ。少し質問よ、今確認されている艦娘は?」
「・・・・艦種で71だ」
「少ない・・三割近くは此処に居るのね?」
提督はヤマトの発言で艦娘の情報を此方以上に把握していると理解できた。
今以上の情報が得られるのであれば、食料や嗜好品の提供が安いものであり艦娘の情報を得る事にした。
「そういう事だ、艦娘の情報と引き換えでどうだ?」
「安くないわよ?」
「それで良い」
「そうね・・艦娘について何処まで知っているの?掻い摘んで教えてくれる?」
「深海棲艦が出現してから1年過ぎた辺りに海上で確認された、妖精も同時期だ。海上を自由に走り回り艤装という武装をすることで深海棲艦と渡り合える、また資材等を補給し艤装や身体を治すことが出来る。時折現れる妖精が工廠で資材と引き換えに艦娘を生み出すことがあり、また稀に海上で見かける事があるドロップと呼ばれている。個々によって能力が変わり艦娘の元となった艦種に依存していると思われる。また艦娘を指揮するには特別な素質が無いと艦娘は従わない」
「大雑把にだがこんな所だ」
ヤマトは現在の艦娘への理解度が分かり非常に満足していたと同時に、自身の記憶と照らし合わせると妙に噛み合わない部分が存在する。
妖精が時折艦娘を生み出す事に妖精と意思疎通が出来ないからか、なにか一定の周期が有るのか。それ以前に一体どうやって生み出しているのか気になっていた。
他に提督の素質だが現状の大鯨を見るにヤマトに素質が有ると理解出来た。
そしてヤマトの持つ知識が如何に有用か。
「そうねぇ、艦娘は200以上居るわね」
「そんなに・・見つかっているのは半分以下なのか」
「工廠の妖精が生み出すのは十分な備蓄と・・妖精のご機嫌取ると良いわ」
「えっ、妖精ってご機嫌取れるの?」
「艦娘と一緒よ」
「それは・・?」
「ふふふっ」
ニコニコしており質問に答えてくれない、それぐらい自分で探せという意味だろう。
実際ヤマトは知識の一部に妖精はお菓子好きと言う妙に曖昧な記憶が残っていた。
「それと・・」
ヤマトの雰囲気が変わり、提督は何を言い出すのかと無意味に姿勢を正していた。
「艦娘は有る一定の経験を積むと大幅な能力の向上や能力の変化、また新たなる力を手に入れたりするわ・・・まぁ言ってしまえば進化の様なものね」
「進化・・?。具体的には?」
「やはり知らないのねぇ・・。大まかに数倍~十数倍程は強くなるかしら?それと殆どの子は姿が変わるわね、艤装が変わったり成長したり?と色々ね」
「見た目変化に能力の上昇・・そこまで強くなるのか。それと変化するのは突然なのか・・?」
「それは妖精の気分しだいかしら?」
「妖精の気分?妖精が艦娘を生み出すこともあるが・・妖精とは一体何なのだ?」
「うーん・・、土地神や九十九神かしら?。どうなの?エラーちゃん」
―― 私にも良くわからないです。大体そんなもので良いと思うです ――
「そう、曖昧なのねぇ」
―― 艦娘もそんなものです ――
「へぇ・・」
入渠の時に会話していた内容に妖精は土地から力を得ていると言っていた事から、妖精は土地神や九十九神的な存在かと思いエラーに確認したがあまり詳しくは知らないようだ。
妖精に会話を振っているだろう様子をみてやはり何も聞こえないと思った提督。
「曖昧・・?」
「そうねぇ、九十九神に近い存在らしいわよ?」
「やはりそうか・・・・妖精の機嫌の取り方教えてくれない?」
「ふふふっ」
やはりヤマトはやはり教えてくれないようだ。
ヤマトの会話が真実であれば妖精の機嫌一つで鎮守府の戦力が大幅に上がることになる。
それと同時にこの情報の有用性に危険性と、これまた非常に扱いに困るものであった。
「妖精の機嫌は頑張りなさい。それと理解したかしら?進化のこと・・知ったら艦娘虐め抜いて無理やりにでも経験積ませようとする者が出てくるわね」
ヤマトはじっと提督を見ている。
提督もヤマトが何を意味しているか理解していた。
この情報が公開されれば確実に出てくるだろう。
しかし同時に任務に出る艦娘の危険性が減ることとなり、今以上に活動範囲が広がるだろう。
「まぁ、こんな所でどうかしら?あなた達にとって有益な情報だと思うわ?」
「仮にその様な者が出てきたら。ヤマトは「消す」・・」
「・・消すわ・・それに。あまりにも酷い様なら、私は霧として行動するわ」
情報を公開し強制的に経験を無理に積ませようものなら消すと言っている。
そしてこのタイミングで霧と言う発言がどうにも引っかかる提督は、つい口に出してしまった。
「霧・・」
聞こえてしまったと思った提督は既に遅かった。
顔が笑っているが目が笑っていないと言う表現が妥当だろうか、笑顔でジッと提督を見ている。
そんなヤマトに何か恐ろしいことを言い出すのでは無いかと鼓動が早くなっていた。
「 ―人類の駆逐― 」
聞きたくないことが聞こえてしまった。
「ッ!?・・・まさか深海せ「違うわ」・・・」
会話に被せてきたヤマトである。
「あんな生物と一緒にしないで頂戴。虫酸が走るわ」
深海棲艦と同類に思われるのが嫌いな様だ。
「人類の駆逐・・敵なのか?敵であるならヤマトは何故私達に味方する?」
「敵でも味方でも無いし人類なんてどうでも良いわ、その辺の蟻程度の感覚かしら?。それと艦娘は仲間よ」
何処と無くズレた発言に少し安心した提督である。
敵でも味方でも無いということからヤマトにとって有用であれば敵になることは無いということだ。
注意するべきは霧の目的が不明な以上迂闊な行動は出来ないことである。
「霧は目的があるのか・・?」
「ふふふっ・・何でしょうねぇ?」
先ほどとは打って変わって何時も通りのヤマトに戻っていた。
今の会話から提督は先程の事はしばらく公開しないことに決めた、そもそも実証してからでなければ公開出来ないのである。
仮に公開したとして艦娘を実験的に扱った場合、ほぼ確実にヤマトはその者を消しにくだろう。
そして霧の目的である人類駆逐が嘘であって欲しいと願っていた。
「あら・・大鯨は御眠かしら?」
ヤマトは横で微睡んでいる大鯨を見て今日の所はお開きにすることに決めた。
「そうねぇ?時間的にも遅いし細かい話は昼間にでもしましょう」
「たいげいは・・だいじょうぶです・・よ?」
「そうだな、大鯨は来たばかりだゆっくり休むと良い、ゆっくりな」
時間を稼ぎたい提督はゆっくりを妙に強調していた。
ヤマトの発言で纏める資料が更に増えてしまったからである。
あまりにも有益な情報の為後回しに出来ないのだ。
そして半分寝ながら言っている大鯨に説得力が無いと思った。
「また後日と言いたい所なのだけど・・そこで盗み聞きしているの出てきなさい」
ヤマトは壊れた扉の方向に話しかけた。
破壊して閉じることが出来ない扉に盗み聞きも何も無いのではと、そして聞かれていたら口止めしないと何が起こることやらと提督の苦労がまた増えたのであった。
「バレちゃってたか―、私一人だからバレない自信あったんだけどなー。気づいた理由聞いてもイイ?」
川内が頭をかきながら入ってきた。
「そうね、私には気配を消した所で関係ないわ。その空間に存在しているだけで把握できるの、私から隠れたいなら亜空間や余剰次元に隠れなさい」
「無理だよ!?」
無理難題に突っ込む川内であった。
そんな川内に提督は口止めどうしよう?と頭を抱えていた。
「あとは提督任せるわねぇ?。大鯨?いきましょ」
「はい~」
まだ寝ぼけているのかふわふわした雰囲気の大鯨が物凄くありだとヤマトのテンションは上がっていた。
「これは持って帰ってくれ、置いてかれても扱いに困る」
そう言って提督はテーブルの上に置いてある銃を指さした。
「あら・・どうしましょう?・・・大鯨?これあげるわ」
作ったが使い道の無かった銃を横でふわふわしている大鯨にあげることを決めた。
それに提督は耳を疑った、そんな物騒な物簡単にあげちゃうの?と。
「わ~。ありがとうございます~」
普通に受け取っていた。
手にしている物を理解しているのか、大鯨は受け取った銃を両手で胸元に抱えてニコニコしている。
喜んでいるようだ。
傍から見るとお菓子を貰い喜んでいる子に見えるが間違えても軽々しく受け取って喜ぶ物ではない。
それを見た提督は思った、まさか兵器として理解して受け取ったのではないかと、もし理解して受け取っているとすると大鯨と言う艦娘が非常に恐ろしく見えてくる。きっとヤマトの影響だと思いたいと。
「昼間都合空けておくようにね?」
ヤマトは妖精を抱きかかえ後ろ手に振りながら出て行き、それに続いて大鯨は振り向いて一礼するだけでヤマトの後を追っていった。
ヤマトが礼儀も何も無いのは気にしないとして、大鯨が無言で出ていった事に提督はヤマト以下と認識されているらしい。
そして2人と1匹?が出て行くと床に倒れていた扉がひとりでに浮かび上がりあるべき場所へと戻っていった。
直していったらしい。
ヤマトが出て行き静かになった執務室で提督はソファーに体重を預けリラックスしていた。
「提督、ヤマトって何者・・?」
「僕にも分からないよ・・それと川内は正面に座ってくれ」
ソファーに座るよう指示した。
「ヤマトとの会話、何処から聞いていた?」
「扉破壊するとこから」
「最初じゃないかっ!」
「いやー、建物内に入ってくヤマト見かけてこっそり尾行してたつもりなんだけどね?最初からバレてたみたいだね!」
笑いながら頭を掻いている川内に反省の文字は無かった。
「まぁ・・丁度良い、ヤマトの話聞いてどう思った?」
「う~ん・・良く分からないけど敵にはならないでしょ?」
「何故そう思う?」
「だって提督でしょ?ヤマトの話が本当なら提督は大丈夫だと思うよ?」
「そうか・・それと今聞いた話は他言無用だ、いいな?」
「えー?面白いネタなのにぃ」
「夜の戦闘減らすのと、昼間の戦闘増やすのどっちが良い?」
「・・・やっぱり提督はヤマトに襲われるんじゃないですか?」
「そうか、そんなに夜戦無しが良いのか」
「・・・」
「・・・」
ジト目で提督を睨み続ける川内に無言を貫く提督。
「仕方ないなー。でもヤマト隠すつもり無さそうだよ?」
「それは仕方ない」
「ぶーっ、分かりましたよーっ今回は何も聞きませんでしたー。それでいいよね?」
「くれぐれも口を滑らさないようにな」
「分かってるわかってる、それじゃー私は戻るよ」
「ああ、今日はもう休め」
川内は立ち上がりそのまま扉の方に向かっていく。
やけにあっさりと引く川内に何か違和感を感じ取った提督。
そのまま出て行かず扉を少し開けて止まった。
その様子に感じた違和感の正体を理解してしまった。
「それと、長門がヤマトに突撃しそうだよ?あの様子だとしつこく根掘り葉掘り問い詰める勢いで行きそうだよ~」
「えっ、ちょっと待って ―バタン― ・・・」
明らかに待ってと言う言葉が聞こえているはずだがそのまま川内は出ていった。
さらに悩みが増えるのであった。
「逝くなよ・・長門・・」
「お疲れ様です。提督」
「ねぇ大淀?・・長門止めてきて」
「分かりました」
「えっ」
「何か?」
「いや・・なんでもない」
あっさりと引き受けてくれる大淀に何か裏があるのでは無いかと不安がまた増えたのである。
こうして提督の苦悩は続く。
誤字あったらそのうち修正されます