初投稿です。いろんな感想などをいただけると嬉しいです。文章がうまくなるために、もみくちゃにしていただけると幸いです! ※pixivにも投稿しました。
「初めまして。航空母艦、加賀です。あなたが私の提督なの?それなりに期待はしているわ。」
私が着任してからひと月ほど後、同じ一航戦の加賀がやってきた。久方ぶりに会う彼女はやっぱり澄ましていて、私以外の人間にはあまり口を利かなかった。彼女は真面目だ。真面目さが生を授かったような少女だ。無駄のない戦闘行動には加賀の全てが表れていて、漏らすことなく敵を叩き潰した。後任の者たちには尊敬のまなざしを向けられていたが、それと同時に近寄りがたい存在になっていた。彼女が持つ「誇り」は、周囲の目などを気にする様子はなかった。
「一航戦の誇り」というやつに、私もだいぶ苦労している。空母として生まれた頃から重くのしかかる期待に耐え、些細なミスをしないように神経をとがらせ、ひたすら海へ出て戦果を挙げ褒誉される。それは私たちの宿命だし、戦果を挙げる自分は誇らしく思っている。だがそれと一緒に付いてきた「一航戦の誇り」というやつが、どうも私を高慢に仕立てあげ、身の丈に合わぬ尊敬を向けられるようになってしまった。
加賀もきっと同じことを考えているだろう。彼女をよく知らぬ艦娘はあの子に尊敬や羨望の目を向ける。しかし当然のように、加賀さんが笑うところを見たことがないという噂が流れ、私はその度にこう言うのだった。
あの子は感情が欠落しているんじゃなくて、少し真面目なだけなんです。
私は長らく加賀は馴れ合いを疎ましく感じているものだと思っていた。私にはいろんな表情を見せるけど、それは私が一番長い付き合いだからだと思っていた。
しばらくすると、加賀が夜の海を見つめて悲哀の混じった顔をすることに気付いた。単純に何かを悲嘆しているようだったし、物足りないとでもいうような顔でもあった。
私はあることに気付いたのだった。いや、正確には自分でもあまり考えないようにしていた。私と加賀には姉妹がいない。家族がいないのだ。ここまでやってきて今更どうしようもないと思っていたが、やはり私も加賀も一人の少女であることには変わりないし、周りの艦娘たちはみな私たちの親友だが、家族というものを一度意識してしまうと頭から離れなくなってしまっていた。
たいそう偉そうに腰かける「一航戦の誇り」は家族の代わりになどなれない。私は思い切って加賀に言ったのだった。
「ねぇ、加賀さん。私たち家族になりましょう。」
自分の心のうちをなぜわかったのか、と驚く加賀。
「加賀さんとはいつも一緒にいるし、寝食も共にするけど、私たち家族がいないじゃない。だから、私と家族になってください。」
加賀はうれしそうにありがとうを繰り返し、私も幸せだった。その時から加賀は少しずつやわらかくなっていった。
演習を終えた頃、空はだんだん暖かくにじみ、まるで元からそうであったかのように雲が真っ赤に染まっている夕暮れ。私は加賀と共に海を眺めている。隣に座る少女は水平線を望みながら、優しい表情で感傷に浸っている。栗色の髪は夕日を受けてきれいに輝き、その雰囲気に急に愛おしく感じた。
「どうしたんですか、赤城さん」
私ね、加賀のこと大好き。
加賀は柔らかく微笑んだ。
「私も大好きよ、赤城さん」
加賀はなーんもわかってないわ。加賀のこと、大好き。もちろん家族としても大好きだけど、ほんとは───
その瞬間、加賀は綺麗な瞳を大きくして、ほんのり桃色を帯びていた頬を熟れたように真っ赤にした。
加賀も、そんな表情をするのね。これからも、もちろん百年後も、ずっと一緒にいてね。
夕日に照らされて真っ赤に燃えるあきあかねが二匹、静かに寄り添っていた。