〇〇しい世界   作:てておん

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渚君がタケノコ派であることが判明。


殺し屋の時間

 

 

----渚----

 

 

ある日のこと、クラスの地味な眼鏡の女の子。えっと…そう、奥田さんが先生に毒を作ったので飲んでくださいと、ダイレクトにお願いしていた。

 

(いったい…そんな渡し方で誰がのむんだよ…)

 

クラス一同唖然としていた。僕が苦笑いしながら見ていると先生は3種類の毒を受け取った。

 

(飲むんだ!毒だって言われてるのに飲むんだ!)

 

つい心の中で突っ込んでしまった。ちなみに今はお菓子から着色料を取り出す授業だが、僕はタケノコの〇を持ってきていた。着色料なんて無さそうだけど、気にしてはいけない。

はっきり言おう、僕はタケノコ派だ!キノコも捨てがたいけどね。先にチョコの部分だけ食べちゃうんだよねー…

 

おっと、話がそれてしまった。先生は渡された毒を飲んでいく。

 

(完全触手生物に普通の毒なんて効くのかな?そもそも中学生がどうやって作ったのさ…)

 

1つ目を飲むと先生の頭に角が生えた。どうやら水酸化ナトリウムだったらしい。

2つ目は酢酸タリウムで羽が生える。最後は王水らしくて真顔になった。

 

「先生のことは嫌いでも、暗殺のことは嫌いにならないでください。」

 

某アイドルみたいなことを言っている。

 

(変化の法則性がわからないよ!てか触手にそんな機能あったの?え?僕ももしかしら、ああなっちゃうわけ?)

 

ツッコミながら嫌な汗をかいてしまう。

 

 

----

 

 

そして次の日、どうやら殺せんせーと奥田さんは昨日一緒に毒を作っていたらしい。

暗殺対象が自分を殺す毒を作るって意味がわからないんだけど…。

そして奥田さんから渡された毒を飲むと殺せんせーの容態は変化。なんとはぐれメタルみたいになってしまった。

どうやら殺せんせーは奥田さんを騙していたみたい。

 

どんなに優れた毒を作れても正直に渡しては意味がない。上手な毒の盛り方には国語力が必要不可欠だと先生は言う。

 

(結局今回も、先生に授業されちゃったわけかー…生徒の才能を伸ばしながら欠点を補おうとする、さすがだね。)

 

先生の手腕に内心拍手をおくりながら僕はあることに気づく。もしかして僕もあれをのんだらはぐれ渚になるんじゃないかって…

 

(いやいや…まさかね…?)

 

 

----

 

 

そしてさらに日は過ぎて5月。なんだかんだE組が始まって1か月が過ぎてしまった。

 

(あと11か月しかないのか…はやいなー…で、あれ誰よ?)

 

教室の前では殺せんせーに抱き着くスタイルのいい外人のお姉さん。

殺せんせーは鼻の下を伸ばしてまんざらでもない様子。

どうやら今日から外国語の先生になるらしい。なるらしいが…明らかに

 

(まぁ、暗殺者だろうね。この時期にくるって怪しいし…僕も人のこと言えないけど。)

 

クラスのみんなもわかっていた、彼女が殺し屋であるということが。

しかし、殺せんせーは人間もありなんだ。谷間みてデレデレしてるし…

 

(あ、そっか…元が人間だからか…)

 

そんなことを考えているとHRは終わっていた。

 

(あの先生嫌いだなー…)

 

僕の最初の先生への感想である。英語の時間、初の女先生の授業だが内容はひどいもの。まともに授業する気はないみたいだったので僕はトイレにいくと教室を抜け出してそのままさぼりへ…

ちなみに先生の呼び方はビッチ先生にきまった。お似合いだと思う。

 

外の森でさぼっていると、体育倉庫に怪しい男3人組が入っていくのが見えた。全員大きな荷物を抱えている、おそらく武器だろう。

 

(ビッチ先生が手配した人達かな?用意周到なのはさすがプロってところだね…ん…?)

 

そこで僕は近くに人が居ることに気が付く。僕がさぼっていた茂みの近くに身を隠すようにして、僕と同じく体育倉庫を見ていたのだ。

 

(気配を感じなかった。この人もビッチ先生関連の暗殺者かな?)

 

僕は気になって背後に近づいていく。

 

「イリーナのやつ…準備は上手くいっているみたいだな。まさか超生物に色仕掛けが効くとは思わなかったが…」

 

ビッチ先生の名前を知っている。ビンゴだ…僕は試しに

 

「ねぇおじさん。そこで何をしているのさ…」

 

「っ…!少年、いったいいつのまに…」

 

僕が声をかけるとおじさんは驚いたような顔をしていた。

 

 

----ロヴロ----

 

 

私の名前はロヴロ・ブロフスキ。元凄腕の殺し屋であり、今は殺し屋の育成と斡旋を行っている。

日本政府の依頼で、超生物に暗殺者を仕向けることになったのだが…

 

(まさか、あのような生物がこの地球上に存在するとはな…)

 

日本政府から聞かされた話は、とてもじゃないが信じられるものではなかった。マッハ20で移動できる生物など存在していいはずがない。

だが見せられた映像や、研究資料。そして今日1日観察していると信じるしかなかった。

今はイリーナの暗殺を見届けている。やつに色仕掛けが通用するかどうかはイチかバチかだったが賭けに買った。

こうなったらイリーナを超える暗殺者は地球上にいないだろう…。

そして、仮にイリーナの暗殺が失敗したとしても、次の暗殺者を手配できるようにこうして直接見に来ているわけである。

 

(ふむ…男たちを先に倉庫で待機させておくのか…さすがはプロ、準備は完璧だな。)

 

この暗殺の成功確率が高いと確信した私は握っていた拳に力が入ってしまう。

 

「ねぇおじさん。そこで何をしているのさ…」

 

一瞬で心臓が鷲掴みにされるような感覚に襲われる。つい私は背後に立つ何者かに向かってナイフを突き出すと、そこにはリストにのっていた生徒がいて

 

「っ…!少年、いったいいつのまに…」

 

寸前でナイフを止めることができた。引退しとはいえ、この私に気づかれることなく背後まで近寄るとは…

それにナイフを突き刺そうとしても物怖じしない…何者だ?この少年は…

 

(そういえば…渡された資料の中に、転校生のものがあったな…)

 

最近新しく渡された情報には、かれは転校生であり暗殺対象の触手を切り落とすことに成功しているらしい。

今の私の背後へと近づいてくるスキルといい…きっと彼は

 

(凄腕の暗殺者だろう…ぜひ私の弟子に欲しいものだ…)

 

彼をプロの暗殺者だと決めつけてしまった。

 

「これは失礼した。私はイリーナを斡旋したもの。殺し屋屋のロヴロだ少年。」

 

「ロヴロさんね…へぇ…僕の名前は渚だよ。で、何してたのさ。」

 

私の名前を聞くと眉が一瞬ピクリと動いた。私のことを知っているな…

 

「なに、たいしたことではないさ。イリーナの暗殺を見届けていただけだ。」

 

「ふーん…たぶん、ビッチ先生の暗殺失敗するよ?」

 

「ほぉ、なぜそう思うのかね?」

 

(これはなかなか面白い話が聞けそうだ。あと、あいつ…ビッチと呼ばれているのか…)

 

内心ため息をつきながら、私は彼に続きを促す。

 

「まず臭いでばれてると思う。あの超生物さ、すごい鼻がいいんだよね。だから倉庫に男3人がいることにすぐに気づくと思う、もしかしたら森の中にロヴロさんと僕がいることもばれてるかもしれない。」

 

「では、あの先生はイリーナ美に呼び出されても倉庫には近づかないかね?」

 

まさか、そこまで鼻がいいとは誤算だった。そもそも写真を見る限りでは目以外の器官がないように思えたが…

 

「いや、倉庫には行くと思う。至近距離で撃たれてもマッハ20なら避けれると思うし。相手の暗殺を全て受けてから、失敗させるのがあの人のスタイル。事前にイベントを回避するようなことは基本的にしないよ。」

 

「ふむ…不意打ちで3人がかりの銃弾の雨でもだめなのかね…」

 

「そもそも、あの男の人達が持ち込んだのって実弾だよね?殺せんせーに実弾は一切効かないよ?体内で全部溶けてしまうらしいから。」

 

「なんだと…」

 

私は絶句していた。まさかここまでとは…私も、イリーナもあの超生物を舐めていた。

 

「ほら見てよ。」

 

彼の言葉に体育倉庫に視線を移す。そこには暗殺を失敗して手入れされたイリーナと手下3人組の姿があった。

 

「ふむ…どうやら君の言っていたことは全て本当のようだな。できれば君とはもっと早く出会いたかったものだ…」

 

イリーナの暗殺が失敗したとわかれば、もうこの場にいる意味もない。私は去り際に渚という少年に名刺を渡す。

 

「もし興味があれば…私に連絡をしてくれ。他のやつらよりもいい仕事を手配しよう。訓練にも付き合うぞ。」

 

彼へのアプローチも忘れない。まだ中学生なのにこのレベル。この金の卵を逃すわけにはいかないからな。

 

 




最近タグに勘違いを付けるべきだと思ってきました。
ただそれだけ…

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